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rubyの好きなこと日記

カテゴリ:小説- 人と竜の結婚 (1)( 24 )

父と母の物語。。NO14........邂逅.....


「さあ、急いで! セルヴァン。日が暮れかかっているわ」

 シュルシュは丘に上がると、もたもたしているセルヴァンに言いました。

「姫様。そういうわけにも。この船隠さないと、すぐに見つかってしまいますよ」

「馬鹿ね。セルヴァン!」

 おろおろと、隠し場所を探そうとするセルヴァンを鼻で笑って、シュルシュは獣の姿になり、炎を吐いて、その小さな船を黒コゲにしてしまいました。

「ほら、もう無いわ!」

「ひえ~~~っ! 姫様。びっくりしました!」

「いいから、あなたは私の背に捕まって、これからあの砦の近くを通らなきゃならないわ。なるべく人に見つからないように森の中をぬって行くから。この格好の方が動きが早いの。あなたは私の背中から人の気配が無いか見張っていてね。ほら、行くわよ。。。」

 海辺から、白い美しい大きな竜が、小さな人のような生き物を乗せて、すべるように森の中に入ったのを
誰一人見てはいませんでした。
 白い竜はその巨体に似合わず、猫のように柔らかで俊敏な動きで、森の木々をすり抜けてゆきます。

 飛ぶよりは遅いけれど、飛行したら、人間にも、竜たちにもすぐに見つかってしまうわ。このまま、あの砦をすり抜けて、エストック山に逃げ込むにはぎりぎりの時間。日が暮れたら、モーヴェに逃げ出したことが知られてしまう。早く! 早く! ああ、どうか間に合いますように...。
 シュルシュは祈りながら、ものすごいスピードで、木々を抜けていきました。

 一方、メテオールは、水鏡に再び違うものが映り出したのを見ていました。
 美しい、白い大竜が、木々に隠れ、こちらに近づいて来ます。首に小さな生き物が、落とされないようにしがみついているようです。
 襲撃では、ないらしい。何かに追われているのだろうか???
 とてもとても急いでいる...。
 急に、ウロコ島の風景に切り替わりました。ウロコ島上空に竜達の金切り声とともに、1頭の巨大な黒竜が飛び出して来ました。黒竜は何かを探しているようです。浜辺に何かを見つけ、そこに降り立ちました。

 あの白い竜は追われているのか???
 メテオールがそう思うと、水鏡は白竜を映し出しました。とても苦しげな表情です。どこか具合が悪いのだろうか???あ、倒れた!

 白い竜はみるみるうちに、若い女性の姿になりました。倒れている女性を助け起こそうとしている異形の者がいます。

 鏡よ。もっと近くに! あ、あれは、シュルシュ!! どういう事だ。

 メテオールは急いで魔法陣を消すと、ほうきにまたがり、シュルシュのもとへ飛び立ちました。
 モーヴェは、すぐ近くに迫っています。

...............続く。..................
by emeraldm | 2010-07-31 18:05 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

父と母の物語。。NO13.....魔法学校.....


 メテオールは、何度も古文書を読み返し、はっ!と息を呑みました。
 魔法学校!! ソレイユは魔法学校を卒業したばかりだと?? サージュ王国の魔法学校は、今は、ラ.ベリテ魔法学校1校だけだ。確証は無いけど、もし、300年前もそうだったとしたら、ソレイユは赤い髪のソレイユとなった時に行き場が無くって、卒業した学校に戻ったのでは?そうして、そこで生涯を過ごした。今ではその子孫の僕たちが引き継いでいる。
 だとすると、何か分かるかもしれない。僕達家族には何も語ろうとせず、人の噂が伝説となって今まで来たけれど、彼の若いときからある魔法学校なら、何か知っているはずだ。建物の精霊に聞いてみよう!!

 メテオールは魔方陣を作り、その中に水をはった手桶を持ってきました。その中を見つめながら、ぶつぶつと呪文を唱え、魔法の杖でぐるぐると3回かき混ぜ、渦をまいた水紋が徐々に引くと、ラ.ベリテ魔法学校の全景が映し出されました。
 メテオールはその建物に、人に話しかけるように話しかけました。

「今日は、学校の精さん。僕のことは知っているね。メテオールだ」

 建物が映る景色が少しゆがんだかと思うと、野太い重低音の声が返事をしました。

「坊ちゃん。心配しておりました。私はあなたの家です。いつお帰りになるのですか?」

 この魔法を知っていたのに、こんなことが無ければ学校に話しかけることも無かったろうな? と、なんだか変な気持ちになりながら、メテオールは話を続けました。

「頼みがあるんだ。300年以上前の話なんだが、ソレイユという僕の先祖がそこにいたはずだ。
お前、覚えていないか? なんでもいい。憶えていることを教えてくれ」

「ああ、ソレイユ様ですね。あの方は魔法学校始まって以来の秀才でした。身よりは無かったと。この近くの村で生まれ、呪術師の祖父に育てられましたが、その祖父が死んでしまい、ここの校長一家にもらわれてきたのです。来た時は確か数えで6つくらいでした。幼いなりに気を使ったのか、よく一人で勉強されてましたなあ。友達とも遊ばず。ああ。でも年頃になって、確か友達が出来て。
外国から来た、とてもきれいなお嬢さんで。でも、額に大きな傷があったのですね。ですので、他の生徒に恐れられていたようでした。お互いに寂しかったのか?? 学校を卒業するとともに結婚されるものだと、皆思っていたのですが、突然、お嬢さんは親元に戻されてしまい、ソレイユ様に何も告げず、突然消えてしまわれた。それから、ソレイユ様はしばらくふさぎ込まれ、彼女を忘れる為か、リュンヌ大帝の諸外国との戦に自ら志願して行ってしまわれました。何年かして、帰って来たら赤い髪になり、人相は変わり、すっかり別人になっていたのです。時々長い外出をされる以外はすっかり引きこもってしまい...。でも、そのころの校長の娘の一人と結婚されまして、晩年はそれなりに幸せだったと思います。ああ、私の中に、まだソレイユ様の宝物があります。肖像画ですが」


「それを見せておくれ!」

 手桶の中の学校の映像がゆがみ、古ぼけて剥げかけた肖像画が現れました。

 恋人たち2人が中庭で手を取り合っている肖像。
 一人は金髪の若者。そうして、もう一人は、もう一人は......。なんてことだろう!!
 シュルシュだ! 涙の乙女。僕が一目ぼれした夢の中の女性。
 いったい、これは?

.......................続く。....................
by emeraldm | 2010-07-31 13:21 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

父と母の物語。。NO12.....逃亡.....


「セルヴァン! 逃げるわよ!!」

 シュルシュ姫がきつい表情で言いました。

「に、逃げるって?? 姫様? え~~~っ???一体どこに???」

 セルヴァンはおろおろとするばかりです。
 困った。困った。竜王様に知られたらとんでもないことに。

「私は人間の姿と変わらないわ。貴方はそうね。私の寝台の布をすっぽりかぶっていれば、ばれやしないわよ。」

 そうよ、そう! なぜ気付かなかったのかしら?
 私たちは人間に化けられる。人間に隠れて、そう。あのエストック山を越えてしまえば、父もモーヴェも追っては来れない。私の3つ目の目が開くまでの辛抱よ。開いてしまえば、モーヴェも手を出せないし、人間の世界も見物できるし、一石二鳥じゃあないの。もしかしたら、赤い髪の彼を探せるかもしれない。。。。

「ま、待って下さい。そんなことをして、万が一捕まったら、私目はどんなことになるか? 後生ですから大人しくモーヴェさまと婚約の儀式を!」

 かわいそうに。セルヴァンは震えています。心配性な下級竜には耐えられない出来事です。シュルシュはセルヴァンをじっと見つめました。穴が開きそうに見つめられ、セルヴァンはふ~~っとため息をついて言いました。

「仕方ないです。姫様は子供の頃より言い出したら聞かないお方。
分かっております。しかも、姫様、何にも知らないですもん。世の中のこと。
セルヴァンがいないと駄目ですもん!」

 ちょっと涙目ですが、なにやら決心した様子です。頼りなく見えますが、セルヴァンは子供の頃よりの姫の御付。姫の乳母の子供、つまり乳兄弟なのです。姫のためなら死をも恐れない。嫌、人一倍恐れてはいるのですが、我慢できると思っている忠実な友でした。

「ありがとう! セルヴァン。私の姉妹。ではさっそく出かけましょう。時間が無いわ。
明日の攻撃の準備でモーヴェは忙しい。
小さな目立たない船を用意して。
人間に化けるのだもの、空を飛ぶわけにいかないわ。さあ。いそいで」

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 ウロコ島では、戦と披露宴の準備で皆忙しくしていました。
 しばらくして、島から小さなボートが音も立てず滑るように出て行ったのを、誰一人見咎めるものはありませんでした。。。
...............続く。.....................
by emeraldm | 2010-07-30 17:43 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)

父と母の物語。NO11。.........黒竜モーヴェ.....


 モーヴェはシュルシュ姫を探していました。

 先ほど竜王に呼ばれ、驚くべき話を聞いたばかりだ。にわかには信じがたい御伽噺に思えたが、自分の将来に指す影は、少しでも取り除いておきたい。今日は自分とシュルシュの婚約の日。今日を無事に迎えれば、彼女の第3の瞳が開く日に、晴れて結婚することが出来る。そうすれば、俺は竜王である。竜王国をもっと広げる野望もある。もっとも、シュルシュが女帝であり、俺の上に君臨するのは間違いないのではあるが...。
婚約の儀式が終われば、人間どもの根城を総攻撃する予定だ。人間などこの地に必要が無い。不安の種は全て刈ってしまうことだ!

 モーヴェは黒ずくめの服装。黒髪。黒瞳の持ち主です。背の高い大男。
 獣の姿のときは悪魔のように恐ろしい、大黒竜。人の姿を取っているのはシュルシュの趣味であるからにすぎません。彼女はなぜか、人の姿でいることを好みました。
 第3の目が無いので、魔法も使えず王権も無いのですが、シュルシュとの結婚を誰もが認める実力者。シュルシュの目が開いた時以外は、この男に勝てる者は竜王国には存在しないであろうと思われていました。
 竜王はすでに年を取り、その目は閉じかけていたからです。
 モーヴェの年は200歳と言ったところでしょうか?人間で言えば40歳位。古の竜たちは、その寿命が1000年を超えると言われていました。今はその半分もありません。
 ここ何百年かで、竜の数も減り、旺盛な繁殖力も退化し、寿命も短くなりつつありました。それどころか、獣の姿になれない半端な竜たちも生まれています。下級竜達にそのような半端者が多く見られました。
 セルヴァンのような。半獣半人。竜でも人の姿でも無い者達。高級竜達にはまだこのような兆候は無いのですが、いづれこのままでは衰退してしまうと思われていました。
 強い血を、もう一度、竜一族の繁栄を! モーヴェは強く願っていました。そのためにはシュルシュの力と、結婚による多くの子孫が必要だったのです。
 モーヴェに愛はありませんでした。あるのは野望だけ...。

 ほどなく、シュルシュを見つけました。子供っぽいシュルシュは、海岸で、向こう岸を見つめ、傍には心配症の半端竜。セルヴァンが付き添ってました。

「婚約者殿。こんなところで何をなさっているのですか???」

 黒づくめの大男が近づいてきて話しかけました。シュルシュは振り向きざま顔をしかめると、生意気そうにこう言い放ちました。

「何も! 今夜の儀式が嫌で嫌で、どうやって逃げ出そうか考えていたところよ!」

モーヴェは馬鹿にしたように、にやりと笑い。まだ、子供だな...と思いました。

「逃げることは出来ませんよ。竜王がお怒りになります。いずれにしろ、あなたはこのモーヴェとしか結婚できない。それが宿命です。婚約式が終われば私はあなたと竜王の為に、新しい城を差し上げましょう。
夜明けになれば、最後のあの砦、人間どもの根城を総攻撃いたします」

 また、戦!! シュルシュは嫌で嫌でたまりませんでした。争いなど大嫌い!人間の世界を見てみたかった。竜の世界とどう違うの?? 赤い髪の人は人間なの?? ああ。私は何も知らない! 又、血が流れるの???悲しい記憶が押し寄せる......。

「モーヴェ。城などいらない。人間などほおっておきましょう。竜と人では力が違いすぎるわ。彼らは飛べない、火を吐けない、力も弱いわ」

 おや、おや。なんてお嬢様なんだろう、このお方は。モーヴェは呆れ顔でシュルシュを見ました。
 竜王が心配していたとおり、このお方は苦労知らずだ。世の中を知らなすぎる。300年前の二の舞。御伽噺が急に現実味を帯びて見えてきました。

「これで失礼いたします。婚約の儀式のほかに、戦の準備もしなくてはなりませんゆえ」

 モーヴェはシュルシュに有無を言わせずにそうそうとその場を離れて行きました。

「だいっ嫌い! あなたなんか!!」

 シュルシュはその背中に鋭い言葉を投げかけました。こんな冷たい男と結婚するなんて、涙が。くやしくって、涙が流れてきたのです。
 召使のセルヴァンは二人のやりとりに、ただ、おろおろとしているばかりでした。
....................続く。.................
by emeraldm | 2010-07-30 11:55 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)

父と母の物語。。NO10。....古文書....


 メテオールは宿の部屋にいました。エグランティーヌ姫に渡された古文書は巻物で、羊の皮をなめして出来ていました。彩色された絵と、文章で出来ています。
 その古文書を眺めながら、メテオールはなぜか難しい顔をしていました。
 古文書のおおまかな内容は次のようなものでした。。

 英雄ソレイユは、エストック山脈の向こう側。サージュ王国のリュンヌ大帝より使わされた、ドラゴン討伐隊の指揮者であった。サージュ王国の魔法学校を出たばかりの若者であったが、王国を近隣の諸外国の攻撃より守り、さらに領土を広げた功績を買われ、リュンヌ大帝の右腕とまで言われるようになった魔法使いである。
 リュンヌ大帝はエストック山脈のこちら側、竜の王国をも手に入れたいという野望があった。竜王国には大量の金が取れるとの噂があったからだ。
 若干20歳のこの若者は、太陽神のような明るい金髪と、美しい容姿を持っていたが、魔法使いとしても天才的な才能があった。
 一方。竜王国は、白い竜。女帝オーヴが統治していた。オーヴは生まれながらの3目で、強い予言と魔法の持ち主だった。
 双方、一歩も引かぬ大戦争が始まった。竜達はその巨体と爪、飛翔力。炎によって、軍に襲い掛かった。ソレイユは魔法の力で炎を封じ、飛翔と力には巨大な大砲で応じた。時には巨人を出現させ、竜を空中で捕まえ叩き落した。
 このままでは双方が消滅してしまいかねないほどの戦だった。
 けれど、ソレイユは人間だった。ソレイユは疲れが出ると砦にこもり、しばらくの間出てこない。
 オーヴは賢い女帝だった。それを見逃すはずは無い。3つ目の額にある目で、オーヴはこっそり、一人で砦にこもっているソレイユの姿を思い浮かべた。。
 魔法使いの命の源。力の源泉。これをチャージしなければ、人であるソレイユに魔法は使えない。その方法を盗み出そうとしたのだ。
 ソレイユは魔方陣を描くと、その中で、日の神に祈り、光り輝く小さな太陽を飲み込んだ。いや、飲み込もうとしたところを、人の姿をしたオーヴが現れ、彼をさらって行った。
 戦況は変わった。ソレイユのいなくなった人間の軍隊なぞ、赤子の手をひねるようなものだった。
 軍は壊滅した。生き残った者たちはなんとかエストック山脈を越えて、サージュ王国にたどり着いた。ソレイユはすでに死んだものと思われていた。
 ところが一年もしないうちに、彼がサージュ王国に現れたのだ。黄金の髪が真っ赤にそまり、人相が変わっていた。美しかった柔和な顔がすっかりやせこけ、年を取った様で、するどく、苦悶の表情をたたえていた。
「竜は死んだ。」
 彼はそう言うと、表舞台から退いた。王がどんなに懇願しようと、表に表れようとはしなかった。ただ、魔法の力は増したようで、王国に本当に危機が来た時にだけ、彼は無言で現れ、敵を倒し、又、無言でいなくなった。 その戦いぶりは氷のようだったという。
 人々は、あの赤い髪は竜の血で染まり、彼は竜王の力を手に入れたと噂した。
 竜の王国には竜の影もなくなり、リュンヌ大帝の息子の一人。エスポクールが王国を築いた。そして、その名をエストラゴン王国と名づけた。

 さて、難しいなぞがここにある???
 ソレイユがさらわれ、何故命が助かり、竜がいなくなったのか?
 赤い髪。竜の血で染められたと言い伝えられているこの赤髪。確かにこの髪を持つものは普通の者より魔法の力が強い。何故ソレイユの金髪が赤い髪となったのか?魔法の力が増したのか??
 いったい竜は今までどこにいたんだろう??まず、それを探らねば。

 メテオールは思案顔で巻物をじっと見つめていました。
..................続く。。。。
by emeraldm | 2010-07-29 18:39 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)

父と母の物語。。NO9。......シュルシュ姫......


「姫様??? 姫様??」

 気が付くと、召使のセルヴァンが不安げな顔で見ていました。

「ああ。眠ってしまったのね?」

 シュルシュ姫は王宮の中庭でうたた寝をしてしまったようです。

「姫様。又、あの恐ろしい夢を見たのですか??」

 シュルシュは、今さっき見ていた夢を思い出しました。そう、最初はいつもの夢だった。あの恐ろしい夢。
 赤い大量の血。誰かと引き離される悲しみの記憶。私は泣いていた。
 でも、あの人。赤い髪のメテオール。そう。。
メテオール様!ちゃんと憶えているわ。なつかしい匂いがした。

「シュルシュ様。今宵はあなた様の婚約の披露宴。しっかりなさって下さいませ。竜王様もご心配されていますから」

 セルヴァンは困ったようなおかしな顔をしていて、まあ、心配性の下級ドラゴンはいつもこんな顔しているのだけれど。
 そうだった、今宵は私の婚約の日。生まれたときからの許婚。いとこのモーヴェとの約束を交わす日。

「ああ、セルヴァン!どうしたらよいの???
私、モーヴェとは結婚出来ないわ。私には運命の方がいるのだもの」

 シュルシュはぶどう酒色の大きな瞳を翳らせました。

「姫様。いいかげん夢の話は忘れて下さいませ。竜王様の跡取りはあなたお一人。ご兄弟姉妹さまは沢山おられますが、王の印、額の目を持つのはあなた様お一人なのですから」

 シュルシュは自分の額の上にある3番目の目に触れてみました。少し熱を持って熱くなっています。泣いていたのか?涙で指が濡れました。
 シュルシュの3つ目の目は、額に縦に亀裂が入り、まだ開いてはいませんでした。この目は物を見る為にあるのではなく、目で見えるもの意外を見るためにあるのです。持ち主の力の根源であり、誰よりも強い証拠。竜王の印。

「こんなもの、いらなかったのに。」

 シュルシュはしかめっつらをしました。見た目はかわいらしい人間の少女。15歳くらいに見えます。
 瞳はぶどう酒色。髪の毛は少しウェーブのかかった明るいオレンジ色。
 額には縦に大きな傷に見える閉じられた目があり、肌が透き通るくらいに白い以外には、人間と変わらない姿です。
 横に控えるセルヴァンは、少し変わっていて、困ったような神経質そうな顔に人間の胴体。太い鳥の足のようなウロコ足をしています。これもまた透けるように病的な肌。瞳は灰色で、爬虫類の冷たい目を持っていました。

「とにかく、お支度を。竜王様がお呼びでございます。」

セルヴァンがため息混じりに促しました。

 竜王は心配していました。数多い子供たちの中で、跡取りとなるものは、夢見がちなシュルシュしか生まれなかった。まだ、若く、夢見がちな少女に、竜王が勤まるはずがない。
 300年前のあの日。竜王国が崩壊してから、ちりじりになった仲間を集め、再び自分がこの王国を再建するまで、仲間とともに、どんなに苦労をしたのか? 今やっと、長年の夢が叶う。
 女帝オーヴ。今までで一番力の強かった竜王。
 あまりに人間に近かった為、彼女の王国は崩壊した。シュルシュにその二の舞をさせてはいけない。
 モーヴェは一族の中でも賢く、強い竜だ。ヤツならシュルシュの力になってくれるに違いない。あの子の目が開くまで。
 さもなくば、又、300年前の酷事が繰り返される事になる。
 そう竜王の見えなくなりかけている第3の目が告げていました。
.................続く。。。。。。。。。。。。
by emeraldm | 2010-07-29 11:04 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)

父と母の物語。。NO8。......エストラゴン王国......


 王の名はメイユール。そのすぐ傍に控えている若い女性は彼の一人娘。エグランティーヌ。
 メイユール王はうろこ島から町の後ろにそびえる大山脈、エストック山脈の裾野までを統治する小国の王様で、竜が暴れまわっていた300年前。英雄。赤髪のソレイユが竜を退治してから、この地を統治した一族です。
 この国の名前はエストラゴン。小さな竜の意味。300年前までは、人がこの地に近づくのさえ危険な土地で、竜が跋扈していたと言います。

 メイユール王の話を要約すると。
 最初に竜が目撃されたのは、ちょうど一年前の今頃位だったとのことです。ウロコ島の上空を、舞っている、1匹の白い大きな竜を、周辺の猟師たちが目撃し、その後、一匹、二匹と増えて行き、今では数え切れない竜がウロコ島に集まっている。周辺住民達も、さすがに何とかして欲しいと、次々に王の下へ請願に来て、
王も捨て置けぬ事態に大規模な討伐隊を送り込むが一人として帰らず。
 最近は国外に使者を出し、魔法使いを雇い入れるが、やはり、ウロコ島に行った者は一人として帰らず。
かえって、竜を激怒させたらしく、半年後を境に、村々への攻撃が始まった。
小さいので子牛ほど、大きいので教会ほどの大きさの竜が、空を飛び、炎を吐いて村々を焼き尽くす。
人々は身を守る術も無く、逃げまどうばかり。
 村々にも祈祷師がいるにはいるが、守護の魔法が効いたたためしはない。最後に残ったわずか数名の大魔法使いにこの町を守らせているが、それでも、持ちこたえるのが精一杯。町は周辺から逃げ延びて来た村々の住人たちで一杯になり。この町が最後の砦となっている。との事。

「王様。今まで、300年の間、姿を現さなかった竜が、なぜ今頃集まるようになったか?心当たりはないのでしょうか???」

 メテオールは尋ねました。。。

「さて、心当たりは無いのじゃが。わが国には、英雄。赤髪のソレイユの伝説が伝わっておる。
この地方では子供の頃より聞かされる御伽噺だと思っておったのじゃが、
事実。竜が跋扈しておる。
この国を竜より守りぬいた、伝説のソレイユ.フルミンク。
そなたのご先祖じゃな。生きてその子孫をこの目で見れるとは思っておらなんだ。
とにかく、我等は最後の頼みの綱。。英雄ソレイユの子孫を探しておったのじゃ。
ソレイユの子孫はエストック山脈を越えたところに住んでいる、赤髪の一族じゃとの噂をたどり。使者を出し。
まさか、そなたから出向いてくれるとは、神のご加護としか思えぬ。
メテオール卿。
ご先祖のように、この国を竜より守ってはくれまいか?
もし、あの竜どもを退治してくれるのなら、ここにいる一人娘のエグランティーヌを妻に向かえ、
この国の王になってもらいたい。
全てをそなたに引き継ごう」

 メテオールは驚いて、王の顔をまじまじと見。続いて、エグランティーヌを見つめました。
 王は心労の為か、疲れきった顔をしています。エグランティーヌは、落ち着いて、澄み切った漆黒の瞳をまっすぐにこちらに向け、すでに覚悟を決めている様子でした。
 エグランティーヌは黒髪の、清楚で上品な野ばらのような女性でした。華奢な体も、ピンク色の肌も、黒くて長い睫毛も、そうして、慎ましやかなその態度も、男なら望まぬ者はいないでしょう。
 この方を娶ることの出来る男性は幸せだろうな。メテオールは思いましたが、すぐに、夢の中の娘の顔が浮かび、あわてて目をそらせました。

「王様。その申し出は身にあまる光栄だとは存じますが、そもそも、頼まれずとも念願の竜退治でございます。何も望むものはありません。ただ、この町に、数日の滞在をご許可いただきたいのと、竜退治の策を練るためのご協力をお願いしたいのですが」

 王は少し呆れ顔でメテオールを見つめ。

「欲の無い男じゃ。それではせめて、その策を練るための情報集めに我僕、全ての国民を使うことを許可いたそう。軍の指揮もまかせよう。
宿泊は今の宿屋で良いかな?この町一番の宿屋じゃ。
城では動きがとりにくかろう。宿屋の警護はこちらでするので、自由に振舞うが良い。
あの宿には、そなた一人しか宿泊客はおらぬ。専用じゃ。
魔法使いは孤独を好むからな」

「それで結構でございます。ありがとうございます」

「姫。メテオール卿を城の書庫に連れて行って差し上げなさい。
そこに古文書がある。彼のご先祖さまの英雄伝を彼に託すのじゃ」

 エグランティーヌ姫はだまってうなずいて、メテオールを身振りで促し、先立って書庫に案内して行きました。エグランティーヌは、とてもしとやかで優美な女性です。近隣の王国にも、このように美しくたおやかな姫はいないでしょう。
 しかし、メテオールは、夢の中の涙の乙女を忘れることが出来ず、エグランティーヌ姫を欲しいとは思いませんでした。
 .......................続く。。。。。。
by emeraldm | 2010-07-28 12:21 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

父と母の物語。。。NO7。......王の謁見......


メテオールは、王の使者に連れられて、お城に向かいました。。
町の中核に行くほど高台になり、一番高い場所にそのお城は建っていました。。。
王の使者によると、この町は、古い丘を中心に建築されており、
その丘のてっぺんにお城が建てられたとのこと。。。
さして時間もかからず、お城に通じる石壁の門を潜り抜けると、
すぐにお城の裏口の木戸に立っていました。。。
メテオールは中の召使に引き渡され、その召使はとある大きな部屋に彼を連れて行きました。
すっかり、謁見の間に通されると思っていたメテオールは、少しびっくりしました。。。。
この会見は非公式だったのです。。。。
大きな部屋の扉のライオンの飾りを叩くと、召使は大きな声でこう言いました。。。

「メテオール様。お越しになられました。。。」

「入るがよい。。。」

野太いよく通る自信に満ちた声がしました。。。。
召使がライオンの飾りを引っ張ると、扉は大きく開き、中には王が若い女性と立っていました。。。

「そなたがメテオールと申すものか。。。よく来てくれた。。。」

王は挨拶もそこそこに、メテオールを招き入れました。。

「王様。。。この町に立ち寄る許可を与えて下さいまして、ありがとうございました。
私はメテオール.フルミンクと申します。。。竜退治の旅の途中でございます。。。」

王は隣の若い女性に目配せをして、椅子に座るよう促し、
そうして、メテオールにも椅子に座るよう、手で合図した。。。。

「誰か、メテオール卿に飲み物を持て。。。
。。。メテオール卿。。。話すことが山のようにあるのじゃ。。。。
格式ばった挨拶などいらぬ。。。まずは寛がられよ。。。」

王は自分もソファーに座ると、しばらくじっと、この若者の瞳を見つめました。。。
メテオールは、おそらく自分の父親と同じような年であろうこの王様が、
自分に何を伝えたいのか???その瞳を見返しながら図りかねていました。。。。
.......... 続く。。。。
by emeraldm | 2010-07-27 18:40 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)

父と母の物語。。NO6..........涙の記憶.......


 ここはどこなのでしょうか?......灰色の空間......懐かしい何者かの気配......粟粒のような水泡があちらこちらから湧き上がってきます。しぼりだすような悲しみの気配......。
 これは涙??? 何者かが泣いています。
 近すぎる......。
 メテオールは潰されてしまうような悲しみの気配に同化している自分を見つけ、その気配の持ち主から自分自身を引き剥がしました。
 もっと遠くへ。相手が見えるように。
 すると、そこには、今まで、見たことも無いような透ける白い肌を持つ女性が一人たたずんでいました。
 彼女は忍び泣いていました。涙が、後から後から、あふれ出て、ぶどう色の瞳を濡らします。
 髪の色は明るいオレンジ色。素敵な紅い小さな唇。意思の強そうな大きな瞳には、悲しみの色が浮かんでいます。
 この女性は本当は明るい人なんだ。なんで泣いているのだろう??? メテオールはなぜかそう思いました。
 懐かしい、愛しい存在。始めて会った人なのに、この思いはなんなのだろう???

「何故泣いているの? あなたは誰??」

 メテオールは思わず声を掛けてしまいました。するとその女性はこちらを怪訝そうに見つめて、

「あなたこそ誰??? そこで何をしているの???」と聞き返します。

「私の名はメテオール。」

「メテオール? 赤髪の者?? あなたがそうなのね...。私の名はシュルシュ。」
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 ドンドンドンドン!!扉をたたく音がして、急にメテオールは瞑想から呼び戻されました。
「メテオール様。謁見の準備が整いました。お支度をお願いいたします。」
 王の使者が扉を叩いています。
 メテオールは腕の一振りで魔方陣を消し去ると、立ち上がり、扉の鍵を開け、王の使者を迎え入れました。     .............続く。。
by emeraldm | 2010-07-27 11:46 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

父と母の物語。。NO5.........魔法使い.........


 城壁の中には、とても大きな町の景色がありました。雑多な荷物や、色々な肌の色の人々が、ひしめきあって暮らしています。とにかく人が多く。その中には、町から町へ品物を売り歩く商人の姿も多く見られました。
 メテオールは門の中で待っていた門番らしき兵士に連れられ。町で一番大きな宿屋に入りました。謁見の準備が出来るまで、こちらでくつろがれるようにとの王命だそうです。
 メテオールはすぐにお城に連れていかれず、内心とてもほっとしました。こちらにも準備が必要だったのです。三日三晩寝ずに、食事もせずにいたので、魔法の力も限界に来ていました。
 宿屋でも最高級の一部屋を与えられると。メテオールは全ての窓とドアに鍵を掛け。石の床に、魔法のチョークで魔方陣を書きました。そうしてそのまん中に胡座をかいて座ると、夜の神に祈り始めました。
 ブツブツと呪文を唱えてしばらくすると、空中に光る星のようなキラキラした小指の先ほどの塊が現れて、メテオールはその小さな物質を摘まんで口に入れ飲み込みました。体中に光のパワーが行きわたってゆきます。旅の疲れもすぐに取れ、メテオールの皮膚は先程飲んだ光る物質のせいか、微量に発光しているようです。
 この光る物質が、メテオールのパワーの源泉。
 魔法使いはそれぞれ、自分の力をチャージするための方法を持っています。そうして、それは自分独自のもの。決して人に教えても見られてもいけません。魔法使いが魔法使いで在るために、まず一番大切な約束事でした。
 メテオールの名前の由来は星から来ています。メテオールはその名の通り、一欠片の星を飲み込むと、そのまま、瞑想に入りました。魔法使いの眠りは魔方陣内の瞑想です。ごく短時間でしかも必要な事を教えてくれる夢を見る事が出来ます。。
 メテオールは身体中に星の光が灯り、とてもいい気持になって、明晰夢の中に落ちて行きました。
..................続く。
by emeraldm | 2010-07-26 21:38 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

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