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rubyの好きなこと日記

小説ー赤髪のメテオール 外伝 「黄金の島」...NO16

......血の絆.......

 
 「ソレイユ殿、ソレイユ殿。しっかりして下さい。
 私が分かりますか?」

 カルサスの顔がぼやけて見えます。
 ソレイユはカルサスの計らいで、城の寝台に寝かせられていました。
 高熱を出し、意識は朦朧としています。
 
 「傷の縫合は終わりましたが、どうやらこの傷には毒が塗ってあったようですね。
 とにかく熱を下げなければ危険な状態です。」

 宮廷医のオオツノが言いました。

 「アリアスは?...」
 ソレイユが口を開きました。
 
 「ああ、良かった。意識が戻りましたか?
 今、姉上の行方をレギオンが追っています。
 ローラン卿も追跡を始めました。
 私はこの後、海賊共の略奪から町を守らなければならない」

 「俺も行く」

 「お起きになるのはまだ無理です。
 竜の毒が抜けきるまで医者としては安静に寝ていることをお勧めしたい。」

 オオツノが言いました。
 ソレイユは全身に汗をかき、赤い顔をしていました。

 「とにかく、これをお飲みなさい。お薬ですから...」

 オオツノはソレイユを起こすと、薬の入ったグラスを口に運んであげました。
 その薬を一口飲むと、ソレイユは又、意識を失ったように暗い空間に落ちて行きました。

 「毒消しです。一時ほどは目を覚まさないでしょう」

 オオツノはカルサス王子に言いました。

 
 
 カルサスが町に続く道に出て行くと、あちこちに火の手が上がり、
城へと続く通りはみな封鎖されていました。
 カルサスは騎士団の一人を見つけ呼び止めました。

 「シャウト!状況の報告をせよ」

 シャウトと呼ばれた背の低い太った騎士は、カルサス王子の前で敬礼をすると言いました。

 「海賊100名ほどが砦と反対方向の岩山を超え、知らぬ間にこの町に攻め入りました。
町の者達の大半は砦に逃れ、逃げ切れなかった者、反抗したものは殺されて町の教会に吊るされています。
 建物は火を掛けられ、木造の家屋の多くが消失いたしました。
 町の大門は閉められ、やつらに占拠されています。
 月丘、星丘の両砦は、海からの海賊船の砲撃と、町からの攻撃にさらされています。
 私とリルケは城に続く道の警備に配属されました!」

 「ご苦労、シャウト!騎士団はまだ機能しているか?」
 
 「私とリルケを除き、ローラン卿は女王様の追跡を、
星丘、月丘両砦には残りの騎士団のメンバーがおります」

 「よし!では、貴殿とリルケ殿は私の後方を援護してくれ、
これから両隊とも町に突撃して、海賊どもを殲滅する。
 我に続け!!」

 言うが早いか、カルサス王子は馬を走らせました。

 シャウトは急いで
 「皆の者~!カルサス王子に続けー!!」
 と、言いながら王子の後に続きました。




...... 血が、血が溢れている。
  赤い、暖かい血。むせ返るような血の匂い...。
  噴出す血飛沫の美しさ。
  俺は全存在を血に委ねる。
  全身を浸す赤。心地よい暖かさ。
俺の心は凍てついて、凍えそうに寒いから
赤い赤い血を求める。
  この身を浸す熱い血潮を .......


 「いけない!目覚めてはいけない!!」 
 

突然大声でソレイユが言いました。

 寝込んでいるソレイユを一人でかいがいしく世話をしていたソフィアは、
びっくりして寝台に駆けつけました。

 「ソレイユ様。どうなされました?」

 女王の傍使えのソフィアはソレイユの様子を伺いました。
 瞳は閉じられ、全身は汗だくです。

 「うなされていたのですね」

 ソフィアが後ろを向いたとたん。
又ソレイユがうわ言を言い始めました。

 「ソフィアさん。私の服と杖を持ってきて下さいませんか?」

 どうやら目を瞑ったまま話しているようです。
 しかも以前のソレイユとはどこか様子が違っているようです。
 ぞっとして振り向くと

 「貴方はどなたですか?ソレイユ様ですか?」
 ソフィアは思わず尋ねてしまいました。

 ソレイユは目をつぶったまま起き上がり、そっと瞼を開きました。
 ラベンダー色の瞳は穏やかに澄み渡り、彼は落ち着いた物腰で頷きました。

 
 「私はメテオール。残念ながらソレイユではありません」




.......続く.......

BY-RUBY^^


 
by emeraldm | 2012-07-31 06:56 | 小説-赤髪のメテオール外伝

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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