人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

rubyの好きなこと日記

サンタの約束。NO6

 
 僕たちが家を出たのは、結局夕方。5時を回ってからだった。
 父さんが持ってきたテキストの宿題をやっていたのと、
サンタジィジがあれこれと、僕のお出かけ服を探していたからだ。

 驚いたことに、サンタジィジの家には僕にちょうどいいくらいの男の子の服が沢山あった。
 ジィジの家の屋根裏に部屋があったのも驚きだったが、そういえば周りの家より
サンタジィジの家はとんがっていた。
 屋根裏部屋は2階の廊下の隠し扉から上がれるようになっていて、
隠し扉の階段は普段は大きなタペストリーに隠されていた。
 その隠し扉の秘密を見た途端。僕の心臓はドキドキと高鳴った。

 「ジィジ。素敵すぎる。なんで父さんはジィジの家を出て行ったんだ?
こんなにカッコイイ家なんてないのに!」

 僕の瞳はキラキラと輝いていたに違いない。
 サンタジィジはかわいい孫の賞賛にくしゃくしゃな笑みを浮かべて嬉しそうにした。
 
 「そうじゃろ。ここは堅信のお気に入りの部屋じゃったんだぞ!
あいつは何が不満だったのだろうかのう?」

 僕は屋根裏部屋へと続く階段を飛ぶように駆け上った。
屋根裏部屋にはきっと魔法があるんだと。サンタジィジは魔法使いに違いないと、
 僕はワクワクと興奮していた。

 屋根裏部屋は思っていたより広かった。
 そして思っていたより明るくきれいで整頓されていた。
 そう言えば、ジィジの家を外から見ると、とんがり屋根の下に丸いステンドグラスが付いていたのだが、
そのステンドグラスがここでは丸窓になって、外から色々な光を取り込んでいた。
 小さな色ガラスを通した光が、赤青緑黄白色となって部屋に置いてある家具類のあちこちを照らしている。
ジィジは大きくて重そうな洋服ダンスの前に行き、その扉を開けた。

 「ほら。パーティに行くにはぴったりの服がいっぱいあるぞ!どれにしようかなあ!」
 
  ジィジが僕の服を選んでいる間。僕は屋根裏部屋を探索していた。
箱に入れられた色々なものが積んであったり、洋風のランプや、骨董品が置いてあったり。
ソファやテーブルまである。
ほとんどは布やビニールがかけられて縛ってあるけれど、
小物類は家具の上に無造作に置いてあった。
 
 僕はその中に舶来製の革ボディの万華鏡を見つけて、丸窓のステンドグラスに向けた。
 万華鏡は鏡を組み合わせただけのシンプルな物だったけど、
ステンドグラスに向けるとすぐに僕の視界に色ガラスの美の世界が飛び込んできた。
 
 「うわあ!」
 
 僕は夢見心地で万華鏡に夢中になった。
万華鏡を回して見たり角度を変えたり。魔法の色の世界は自由自在だった。
 赤青緑白の星々が回る宇宙。エメラルドシティや深海の謎。
 溶岩の中、火の鳥の世界。天使が舞う天上の白...。

 「これこれ、あんまり夢中になると酔っぱらうぞ!」

 ジィジが言ったので、僕は万華鏡を下してジィジの方を振り向いた。
振り向いたとたん!とてもいい物を発見した。
 最初、そのものは僕の視界に赤い色として飛び込んだ。
 ジィジの横。少し斜め上の壁のあたりだ。
 僕は万華鏡を置き去りにして、その物にまっすぐに突進して行った。
 ジィジはその勢いに驚いたのか、さっと身をかわし、僕を通してくれた。

 「これ。これ何??ジィジ。」
 
 驚いていたジィジの顔に笑みが戻った。

 「ヨシュア。それはね。プロペラ機と言うものじゃぞ!
ジィジは昔、パイロットだって言ってなかったかな?」

 確かにそれは赤いプロペラ機の模型だった。
しかもナイスなボディ。僕大すきだ!
 いいや、それより何より、ジィジ??今なんて言った?
 
 「パ?パイロットって言った??」

 「言ったぞ!父さんに聞いてなかったか?
サンタジィジは作家になる前、パイロットだったって?」

 おっどろき~~~!これは参った!
 サンタジィジってやっぱナイスだ!かっくいい。
 僕のジィジは世界一かっくいい!僕は本気でそう思った。

 
 ジィジが僕の為に変なお出かけ服を選び出すまではね...。

 んで、結局。時間かかって選び出した服は、女の子が着るブカブカのワンピースのような代物だった。

 「うわ~~~。僕嫌だ。これ着るの~~」

 「いいからいいから。楽しいとこに行くんだから我慢しなさい。ジィジも同じの着るからさあ」

 僕はもう涙目。二人して、ぶかぶか白いワンピースを着た姿は.....ウェェ。
 そしてなんだかわからないうちに、インド人が頭に乗っけているターバンのような帽子と、
長い派手な色のベストを着せられ、裸足にサンダルの姿で上から黒いマントを又着せられ、
サンタジィジの運転する黄色いワーゲンに乗り込んだ。

 「ほんとにこんなカッコで出かけるのお?」
 
 僕は念を押してみた。
 僕とほとんど同じ恰好をしているサンタジィジは満面の笑みで答えた。

 「もちろんだとも!ヨシュアよ。さあ出かけるぞ。用意はいいか?」

 黄色いフォルクスワーゲンのエンジン音が轟いた。

 「さあ!出発じゃ若者よ。今宵はお前の社交界デビューの日だからな。
みんな首を長くして待っておるぞ。ふぉっふぉっほ 」

 
 社交界デビュー?みんなって誰のこと??
 僕は恥ずかしさも忘れ、運転するサンタジィジの横顔をあきれて見つめていた。
 それが僕たちの不思議な夜の始まりであった。



......................続く。...............................
                     BY-RUBY

サンタの約束。NO6_b0162357_17165286.jpg

artworks
by emeraldm | 2011-11-11 15:27 | 小説-サンタの約束

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

by RUBY