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rubyの好きなこと日記

〜小説〜サンタの約束。NO1.

  
   サンタの約束


「サンタじ〜いぃ〜」
僕は泣き叫んだ。

 あの冬の日。僕のジィジは行ってしまった。

「ジィジの嘘つき。空飛ぶそりに乗せてくれるって言ったのに。
一緒にプレゼント配ろうね。って言ったのに。何で死んじゃったんだよぉ…」

 葬式の晩は、ジィジに相応しくイヴの夜で、しんしんと雪が舞う教会の入口にジィジの棺が運び込まれ。
追いすがる小さな僕を父が抱き止めた。

「良明。静かに父さんを送ってやろうな」

 父の目が余りにも悲しそうだったから、僕は泣くのを止めたんだ。

「三太爺さん。享年83歳。クリスマスイヴの夜に眠る…か」

 父が呟いた。
 ジィジがまだ元気だったころ、ジィジと父は仲が悪かった。
ジィジの仕事は童話作家で、父は幼い時からファンタジー漬けの生活だったらしい。
 ジィジにとっては自分の息子に英才教育。父さんにとっては大迷惑な話しだったらしくて、
小学校に入学してからは妖精さんなんて何処にもいない。
妖精どころか鬼も吸血鬼も空飛ぶ竜だっていない、全部嘘ではないかとジィジに食ってかかったそうだ。
 後で分かった事だが、どうやら学校で苛められたらしいのだ。
 今時妖精を信じる小学生などあまりいない。

 父はその時のトラウマか、ジィジと真逆の仕事を選んだ。
ファンタジーより科学を信仰し、成績優勝のトップクラス。
ただ今開業医として来栖総合病院を経営中...。
 父の母。つまりジィジの奥さんは父が2歳のころに失踪し、
父一人子一人の二人暮し。
 ジィジはああいう性格だから、そりゃ父さん肩身が狭かっただろうけれど、
当時僕にとってジィジはスーパーヒーローだったんだ。
 僕はこれまた父と真逆で夢見がちな性格。
 ジィジとは気が合って、ジィジは父に出来なかった英才教育を孫の僕にしてくれた。
 ジィジの影響で、30歳になる今でも僕は古今東西古代から現代まで世界中の童話、民話、ファンタジー、
SF小説のたぐいまでディープに語れるぐらいなのだ。
 ちなみに僕は今、ある雑誌の編集長をしている。
世界の不思議博物館って聞いたことあります?
 まあ。その世界ではちっとは名の知れた雑誌ですが、そんな仕事に就いたのもジィジの影響が大きかったと思うのであります。
 
 とにかく、そのサンタジィジ。
 来栖 三太。83歳は、クリスマスイブの日に天に召された。
 大好きなジィジとの突然の別れに、今年小学校に入学したばかりの小さな僕は泣き叫んでいた。
 僕と同じ年頃に、ジィジに反旗を翻していた父も、僕を抱きしめながら静かに泣いていた。
 真っ黒な空からハラハラと雪が舞い落ち、ジィジの棺の上に薄っすらと積もっていた。
 棺は教会の入り口から運び込まれ、
 セレモニーの賛美歌が静かに流れ始めた。

 あの日。僕はサンタジィジに大きな贈り物をもらったんだ。
 その贈り物は僕の人生に決定的な影響を与えた。
 そのことを今、書き記したいと思っている。

........................続く。............................

                      BY-RUBY^^

〜小説〜サンタの約束。NO1._b0162357_1047406.jpg

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by emeraldm | 2011-11-08 22:20 | 小説-サンタの約束

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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