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rubyの好きなこと日記

NO24。......魔法使いの眠り......

 
 メテオールは考えました。黒い魔術のことは教科書通りの知識しかありません。
 このまま、父達を待つか?それとも自分ひとりで先に立ち向かうべきか?
 いずれにしろ今夜、やつらはクラージュを迎えに城に訪れるでしょう。
 準備をするのなら今日の夕方までしかありません。
「思いつくのは、防呪の法しかないな。この呪文は先にかけなければならないし、防ぐことしか出来ない。
何かいい方法はないものかな? 呪い返しの法は有効だが許可がいるし......」
「仕方が無いな。又夢に聞いてみるか? クラージュ様のいる部屋では無理だから、プレーリーの部屋を貸してもらおう」
 メテオールは勝手にプレーリーの部屋を開け鍵をかけてから、魔方陣を描き出しました。
魔方陣は一瞬で消えるので、プレーリーも文句を言うことはないでしょう。
 メテオールは魔方陣の中に入ると、エネルギー補給に、星を1つ飲み込み、そして、魔法使いの眠りと呼ばれる瞑想に落ちて行きました。

-- そこはどこか遠い土地のようです。夜のように暗い空。しかし、星は見当たりません。
 メテオールが立っている大地は草もまばらな乾燥した土地で、目の前に空よりも黒々とした山脈が見えます。後ろからは灰色の薄明かりがさしているようですが、その光源はぼやけて分かりません。

「ここはどこだろう? 」 メテオールはつぶやきました。

「幽明のあわい」 誰かが答えました。

「誰だ? 」 答えはありません。
 メテオールは答えた相手を探してきょろきょろと見回しましたが、目に入るのは砂と石とまばらな草のみ。

「早く帰った方がいいよ」
 さっきの声とは違う何者かが言いました。

「何処にいる? 」

「僕等は大勢いるんだよ。でも、姿を現すことは出来ない。ここ、あわいの住人だから」
 又違う声が答えました。何人も答え手がいるようです。

「ここは危険なところなのか? 」
 メテオールが聞きました。

「うううん? そうじゃないけど、奴らがいるから生きた者には危険なんだよ」

「やつらって? 」

「影の奴隷......。僕らはそう呼んでいる。僕等は死んじゃってるけれど、奴らは死んでない。生きてもいない。永遠に彷徨って言うことを聞くだけ」

「誰の言うことを聞くんだい? 」

「あそこに山脈が見えるだろう? その向こう側にある、死の谷の王。オプスキュリテ! 」

「あいつらオプスキュリテの奴隷なんだ。僕達あわいに住む者も大勢やつらに殺されたよ!
生きていた時、生贄になったんだ」

「僕は水に沈まされた」
「僕はナイフで目をえぐられた」
「僕は手足を切り取られた」
「僕は舌を切り取られた」
 
 大勢の何かの気配が足元に感じられました。

「君達は人ではないの? 」

「僕たちは人間じゃあなかった。多くが、獣と言われる森に住む者。
たまに人間に飼われていた者もいるけどね」

「僕は人間の家にいたよ。君のお父さんも知っているよ。
お父さんの友達のジニっていう子のペットだったんだ。
時々、君のお父さんとも遊んだ。だけど、ラシャって子に殺されたよ。随分前だけど! 」

「お願い! 僕たちの為に仕返ししてよ、メテオール! 」

「僕達! 本当は生まれ変わらなきゃならないんだ。ここにいちゃいけないんだ! 」

「オプスキュリテを倒してよ。そうすれば生まれ変われるよ! 」

「ラシャを倒して。奴に寄生している死の王はまだ弱いよ。竜の珠を奪って! 」

「僕達応援するよ。いっぱいいるんだよ。何百といるんだよ。小さくてもいっぱいなんだ! 」
 
 いつの間にかメテオールの足の周りに小さな獣の気配が押し寄せてきました。
 暖かい、蛍のような薄灯が灯り、それが何百と言う数になって、メテオールの体を這い登って行きます。
 それから、その灯たちは次々とメテオールの懐に吸い込まれて行きました。
 メテオールの懐は薄黄色く輝く大きな灯に照らされて、何かの照明を隠しているようです。
 赤ん坊を抱えているようにとても暖かい感じがしました。
 
 全ての灯を吸い込むと、今度はもっと黒く濃厚な気配が近づいてきます。大きな黒々とした影。
 こちらは人間の影のようです。きっと灯に誘われて来たのでしょう。
 数人......。5人ほどでしょうか?
 輪になって、メテオールを包囲しているようです。
 それらが近づくにつれ生くさい匂いが漂ってきました。
 目を凝らすと、黒いローブに杖を持っています。元は魔法使いだったのでしょう。
 顔色は青く頬はこけ、目は落ち窪み瞳は見えず、空洞のようにガランとしています。
 髪の毛も眉毛も無く、表情も無い死人のようです。男も女もいました。
 彼らに感情があるとは思えませんでした。
 死ぬも生きるも出来ない者。影の奴隷......。
 ぞっとする冷気が彼らを取り巻いています。
 メテオールの体に鳥肌が立ちました。

「早く! 僕たちを持って帰って! 早く! 」
 急ぐように懐の光達が言いました。
 影の奴隷たちが一斉に杖を上げました。そして...... --
 
 ドンドンドン!

 間いっぱつで瞑想から覚めたメテオールが、ドアを開けると、そこには心配顔のプレーリーが......。

「何してたんだよ~。心配したんだぞ! 君! 懐に何を抱えているんだい? 」
 メテオールは無意識に懐を大事そうに抱えていたようです。
 懐を開いてみると、いつもと同じ杖が一本。
 けれど、その杖は微妙に光り輝いて見えました。
 
 「ん。で、何があったか教えてくれるんだろうね? 」
  プレーリーは杖とメテオールを交互に見ながら尋ねました。

.............続く。.....................  
by emeraldm | 2010-09-07 14:51 | 小説- 赤髪のメテオール(2)

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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