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rubyの好きなこと日記

NO18。......身代わり......


 裏庭からの物音で、プレーリーは目を覚ましました。 メテオールが帰ってきたのか? それにしては早いな? 
 窓からのぞいて見ると、まさにメテオールが大きな包みを抱いて、馬から降り立つところでした。
 急いで自分の部屋から階段を下りて裏庭に駆けつけ、その包みを持ち上げるのを手伝いました。
 「人か? 」
 プレーリーは小さな声で訪ねました。
 メテオールはただうなずいたきりでした。
 声も立てず、2人はその大きな包みを2階の父親の寝室に運び、ベットに寝かせました。
 メテオールはマントの結び目をはずしました。
 「うっ! 」
 プレーリーは悲鳴をあげそうになるのを必死で押さえました。
 中から出て来たのは、エジプトのミイラを思わせる、やせて皺皺になった人でした。肌はすでに青黒く、死体と言ってもいいでしょう。
 「生きてるのか? 」
 「生きている......。ただ眠っているだけだ 」 
 メテオールの顔色は青く、つらそうです。
 「誰なんだい? 」
 「クラージュ大帝! 」
 「えっ? まさか? 」
 どこをどう見ても、このベットに寝ている人物と、パレードの日に見かけた、若く美しい若者とは結びつけることができません。
 「なんだって...。」
 言いかけてメテオールに手で静止され、プレーリーは黙りました。
 「この方は確かにクラージュ様だよ。オンブル教のオムファムという女の教祖に呪いをかけられた。
明日の夜になったら、やつらがクラージュ様を生贄にする為に迎えにくる手はずだ。今、クラージュ様の寝室には身代わりのまぼろしを置いてある。オムファムが来たらばれてしまうけれどね」
 「え? 本当に大帝がここに? どうするんだ? 今にも死んでしまいそうじゃあないか? 」
 「大丈夫。魔法の眠りをかけてあるから、誰かが魔法を解くまでは死なないよ。それより、呪いを解かなければならない。これは影の魔法だ。黒の魔術。プレーリーも少しは知っているだろう? 」
 
 プレーリーは魔法学校の授業を思い出しました。
 黒の魔術は魔法学校では教えてもらえません。なぜなら、白い光の魔法は自然の精霊を呼び出し、その助力を乞うもので、自然界全てが神の様な存在です。小さな花の妖精でさえ、魔術師は尊敬し、感謝しなければなりません。
 対して影の魔法。黒魔術は、ただひたすら、人間の悪の感情を呼び出します。精霊と言うものではなく、はっきりと悪の神を召還し、契約を交わして望みをかなえる。そのために魔術師は、自分の命や他人の命を引き換えにするとても危険な魔法なのです。そのような悪術が、公に認められていないのはもちろんのこと、国際魔術連盟で取り締まる、最上級の犯罪でした。
 「それで、メテオール。どうするんだ。僕達では太刀打ちできないじゃあないか? 」
 「大丈夫だ、今親父たちがこちらに向かっている。呪い解きのスペシャリストをよんでもらおう! このまま眠らせておけばいいよ。すまんが、プレーリー。しばらくここに置いてやってくれないか? 」
 「いいけど。お前はこれからどうするんだ? 」
 「おお。しばらくこの部屋で僕も眠るよ。明日はいよいよオンブル教に潜入しなけりゃならないし。とりあえずクラージュ様を救出したのだから、急ぐこともあるまい。君も明日仕事だろう? 起こしてしまって悪かったな」
 言うが早いか、魔法でもう一台の寝台を出し、あくびをひとつすると、プレーリーを部屋から追い出しました。
 「まったく! 人の気もしらないで.....。今から眠れるはずないだろう? 」
 プレーリーは迷惑そうに部屋に引き返し、不安な気持ちでべッドに入りました。
 ミイラのようなクラージュの姿がちらつきろくに眠れないままでしたが、明け方近くにやっと、とろとろと眠ってしまったようです。気持ちよく寝入ってしまったプレーリーの耳にとんでもない悲鳴が飛び込みました。
 「きゃ~~~~~ああああ! 」
 母さん! 飛び起きて廊下に出ると、あわあわと母がプレーリーに飛びつきました。
 「ぁ、ぁ、ぁ、あの部屋に~。ミイラが~~あ。」
 ああ。見てしまったのね......。プレーリーは寝不足でズキズキする頭を抱えて、大丈夫だからと、昨日のメテオールとの会話を伝えました。
 母はすごくショックの様子で、それでもプレーリーの言ったことを信用して、少し震えながら階下に降りて行きました。
 きっと朝寝坊した息子たちに朝食を取らせようと起こしにきたのでしょう。
 父親の部屋をのぞきに行くと、ミイラのようなクラージュと、あの騒ぎに全然起こされないで寝ている大物の親友。
 相変わらずだなぁ! プレーリーはあきれてメテオールの寝息を聞いていました。

.................続く。.....................


 
 
by emeraldm | 2010-09-02 17:41 | 小説- 赤髪のメテオール(2)

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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