父と母の物語。。NO20......贈り物.......


 地下の王宮の出入り口は、メテオールに与えられた宿の地下室にありました。
 宿屋の主人も、ドワーフの血族で、もう何代もここで人間に混じり、商売をしていました。
 ドワーフ達も、人間と混血を繰り返してきたお陰で、人と変わらぬ背丈になり、外見では、ドワーフ一族なのかどうかさえ見分けは付きません。ただ、黒い瞳は共通のようでした。
 宿屋の地下室は小さな武器庫のようで、色々な種類の剣や槍、石斧、などが所狭しと、壁や机に並べてありました。
 その中の一つを、カシュ王女は取り、メテオールに差し出しました。

「メテオール様。我等はしばらく地下の王宮に避難します。
これが、我らドワーフからの贈り物です。
この剣は、300年前。。貴方が使われたもの。
炎を封じることが出来る、火炎の剣です。こちらをお持ち下さい」

 その剣の柄から刃の先端にかけては、黒い金属で出来た炎と竜がぐるぐるとらせん状に駆け昇っています。彫刻の螺旋の中には、透き通った真っ赤な鉱物が両刃の剣となって尖っていました。
 これでは何者も、斬る事も、突く事も出来ない。まさに、魔法の法具であるのは一目両全のものでした。

「ありがとう。カシュ王女。シュルシュをお願いします」

 言い置くと、メテオールは地下室を出て、宿の庭から箒に乗り、空に昇って行きました。
 日が翳り始め、太陽が沈みかけています。
 
 上空から町の周囲を見渡すと、すでに無数の竜達が、町の城壁を取り囲んでいました。町のこちら側に来れないのは、残っていた魔法使い数人が力を会わせて、城壁に守護の魔法をかけ続けているからです。
 兵たちは、その間、矢を射掛けたり、大砲を打ったりしていましたが、一向に効き目は無いようです。
 竜達はただ、その様子を馬鹿にしたようにゆうゆうと、城壁の周りを飛行しているだけです。
 時々、雷のような雄たけびが不気味に響き渡り、聞いているものの身を震わせました。魔法使い達が疲れて、守護の魔法の効き目が切れるのを待っているのです。
 王は城の屋上から、その様子を見守っていました。
 メテオールが急いで王の傍に降り立つと。

「メテオール卿。どこに行っておったのじゃ。探しておったのじゃよ。
一刻ほど前に、やつらは大群で現れ、城壁を取り囲んだのじゃ。
残りの魔法使いに何とかこちらに入って来られぬ様に呪文を唱えさせておるが、
いつまで持つか? どうしたらよいかのう」

 王は疲れきった顔をメテオールに向けました。

「私がなんとかしてみます。
王よ。城の中に入っていてください」

「しかし、城には誰もいないのじゃ。姫もおらん。
みんなどこに行ってしまったのじゃ??
町のものも半数はいなくなったようじゃ」

 王は震えています。ドワーフの取替え子は、すでに町の半数にも達していたのです。

「王様。大丈夫です。彼らはちゃんと避難していますし、姫もそちらにいます。
ここは危ない。王様は自室に篭っていて下さい。安全になったら迎えに行きますから。」

 メテオールは城壁の周りに舞っている竜の中に、ひときわ大きい黒い竜を見つけました。
 沈み行く赤い太陽を背に、その巨体が黒々と不気味に際立っています。
 王が自室に引き返すのを見届けてから、メテオールはその黒竜に、向かっていきました。

......................続く。........................

by emeraldm | 2010-08-03 15:41 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(0)