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創作人形  (サーニット / ポリマークレイ) 人形教室開講中♪ 店舗「アトリエ まみ」☆お問合わせはこちらのメールアドレスまでお願いします。kadooroo☆yahoo.co.jp(←☆を@に変換してね。)


by RUBY
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......追跡。......

 「チッ!」 
 
 レギオンは短く舌打ちをしました。
 アリアスを攫って行った海賊の乗る、オゾーと言う怪物は
 山の中の木立を隠れ蓑にしながら巧みに逃げて行きます。
 炎を吐きだそうにも、アリアスを人質に取られていてはそれも叶いません。
 巨体の竜の姿では木立の中に近づくことも出来ず、
 ただ、ちらちらと見える怪物の影を追いながら空から追跡するのみです。

 あいつは確かにアリアスの一族を知っていた。
 レギオンは嫌な胸騒ぎを抑えることが出来ませんでした。

 その頃、ローランも早馬でレギオンを追っていました。
 
 カルサス王子に海賊の襲撃を伝えたのはローランでした。
 ローランの報告後カルサスが慌ててアリアスを追い、時を置かずに傷付いたソレイユを城に運んで来た時、
 ローランはアリアスの身に何かが起こったのを感じました。

 「カルサス様。女王は!!」

 「ローラン!姉上は海賊に連れ去られた。
 王族として、私はこれから麓の町に行かねばならない。
 私の替りに、ローラン!女王を救出せよ!
 今、レギオンが追跡をしている。あの巨体は目印になるはずだ。
 居場所が分かったら必ず合図しろ。相手は怪物だくれぐれも無茶をするな。
 合図があればすぐに軍を出動させる」

 
 .....カルサス様。私の命に掛けまして女王をお救い申し上げます。............

 ローランは馬に落とされないよう手綱をぎゅっと握り、険しい山道を駆け抜けて行きました。


 カルサスの軍は町の大門を突破し、町の教会まで海賊たちを追い詰めていました。
 姉を目の前で攫われたにも関わらず、それを追う事が出来なかった怒りが、
若いカルサスに勢いを与えていました。
 海賊達は小さな女の子の人質を取り、教会の中に立てこもって時々発砲して来ました。
 教会の窓からは殺された町の人々が吊り下げられ、とても恐ろしい風景です。
 
 カルサスは人質の身を案じ、兵を動かせずにいました。
 すでに日は傾き始め、夕日が白い教会の壁を血の色の様に照らし始めました。
 町はあらかた焼き尽くされ、炎は白煙に変わりじりじりとした熱気だけが町を覆っていました。

 「やい!そこの偉いの!!話がある!!」
 海賊の一人が女の子に銃を突きつけ、こちらに一歩近づいてきました。

 「何だ!」

 「俺たちを船に乗せろ!浜に小船を用意させるんだ!」

 「お前たちを逃がすつもりはない!」

 「こいつがどうなってもいいって言うんだな!」

 「ママー。ママー!!」
 女の子はすすり泣いています。
 カルサスは歯噛みをしました。
 
 仕方がない...。
 
 そう思った時、思いも掛けずに誰かの熱い手が肩に置かれました。

 「ソレイユ殿?」
 びっくりして見つめている間に、ソレイユは杖を上げ、
 
 「オウランジュボトネ!」
 と唱えました。
 
 すると教会に吊るされていた多くの死体が動き出し、勝手にロープを解いて
ボトボトッと地上に落ちました。よたよたと血だらけの死体が歩き出すのを見て、海賊達は震え上がり、
死体に向かって発砲を始めました!
 パンパンパン!!いくら鉛の玉を打ち込んでも死体は死にません。
 あまりの恐ろしさに人質から銃をそらしたのを見て
 ソレイユは杖の一撃で海賊の手から銃を落とし、瞬時の動きで女の子を奪い返しました。
 「バリアラウリア!」
 間髪いれずに唱えると海賊たちは互いに発砲しあい恐怖に引き吊った顔をしながら
倒れて行きました。

 カルサスの兵士らも、あまりの成り行きに固まってしまい、まったく動けません。
 「これはいったい...」

 「最初の魔法は死体よ動けと、最後の魔法は互いに撃ち合えと」
 
 ソレイユは片手に抱いた女の子をカルサスに渡しながら言いました。
 カルサスはソレイユの顔を恐る恐る見ました。
 ソレイユの表情は明るく、まるで別人の様でした。

 「サウンディッドの援軍が現れたぞ~!!!」

 砦から伝令が走って来ました。


 突然周囲に風が巻き起こり、ソレイユの赤髪が舞い上がりました。 
 「ソレイユ様、アリアス王女の居所が分かりました!」
 悪魔の風ウィローが姿を現さずに告げました。

 「では、そこに連れて行けウィロー!」

 夕日の中、ソレイユの姿は一瞬で掻き消えてしまいました。

 


  ......続く。.......
   BY-RUBY^^

  

 
by emeraldm | 2012-07-31 19:30 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
......血の絆.......

 
 「ソレイユ殿、ソレイユ殿。しっかりして下さい。
 私が分かりますか?」

 カルサスの顔がぼやけて見えます。
 ソレイユはカルサスの計らいで、城の寝台に寝かせられていました。
 高熱を出し、意識は朦朧としています。
 
 「傷の縫合は終わりましたが、どうやらこの傷には毒が塗ってあったようですね。
 とにかく熱を下げなければ危険な状態です。」

 宮廷医のオオツノが言いました。

 「アリアスは?...」
 ソレイユが口を開きました。
 
 「ああ、良かった。意識が戻りましたか?
 今、姉上の行方をレギオンが追っています。
 ローラン卿も追跡を始めました。
 私はこの後、海賊共の略奪から町を守らなければならない」

 「俺も行く」

 「お起きになるのはまだ無理です。
 竜の毒が抜けきるまで医者としては安静に寝ていることをお勧めしたい。」

 オオツノが言いました。
 ソレイユは全身に汗をかき、赤い顔をしていました。

 「とにかく、これをお飲みなさい。お薬ですから...」

 オオツノはソレイユを起こすと、薬の入ったグラスを口に運んであげました。
 その薬を一口飲むと、ソレイユは又、意識を失ったように暗い空間に落ちて行きました。

 「毒消しです。一時ほどは目を覚まさないでしょう」

 オオツノはカルサス王子に言いました。

 
 
 カルサスが町に続く道に出て行くと、あちこちに火の手が上がり、
城へと続く通りはみな封鎖されていました。
 カルサスは騎士団の一人を見つけ呼び止めました。

 「シャウト!状況の報告をせよ」

 シャウトと呼ばれた背の低い太った騎士は、カルサス王子の前で敬礼をすると言いました。

 「海賊100名ほどが砦と反対方向の岩山を超え、知らぬ間にこの町に攻め入りました。
町の者達の大半は砦に逃れ、逃げ切れなかった者、反抗したものは殺されて町の教会に吊るされています。
 建物は火を掛けられ、木造の家屋の多くが消失いたしました。
 町の大門は閉められ、やつらに占拠されています。
 月丘、星丘の両砦は、海からの海賊船の砲撃と、町からの攻撃にさらされています。
 私とリルケは城に続く道の警備に配属されました!」

 「ご苦労、シャウト!騎士団はまだ機能しているか?」
 
 「私とリルケを除き、ローラン卿は女王様の追跡を、
星丘、月丘両砦には残りの騎士団のメンバーがおります」

 「よし!では、貴殿とリルケ殿は私の後方を援護してくれ、
これから両隊とも町に突撃して、海賊どもを殲滅する。
 我に続け!!」

 言うが早いか、カルサス王子は馬を走らせました。

 シャウトは急いで
 「皆の者~!カルサス王子に続けー!!」
 と、言いながら王子の後に続きました。




...... 血が、血が溢れている。
  赤い、暖かい血。むせ返るような血の匂い...。
  噴出す血飛沫の美しさ。
  俺は全存在を血に委ねる。
  全身を浸す赤。心地よい暖かさ。
俺の心は凍てついて、凍えそうに寒いから
赤い赤い血を求める。
  この身を浸す熱い血潮を .......


 「いけない!目覚めてはいけない!!」 
 

突然大声でソレイユが言いました。

 寝込んでいるソレイユを一人でかいがいしく世話をしていたソフィアは、
びっくりして寝台に駆けつけました。

 「ソレイユ様。どうなされました?」

 女王の傍使えのソフィアはソレイユの様子を伺いました。
 瞳は閉じられ、全身は汗だくです。

 「うなされていたのですね」

 ソフィアが後ろを向いたとたん。
又ソレイユがうわ言を言い始めました。

 「ソフィアさん。私の服と杖を持ってきて下さいませんか?」

 どうやら目を瞑ったまま話しているようです。
 しかも以前のソレイユとはどこか様子が違っているようです。
 ぞっとして振り向くと

 「貴方はどなたですか?ソレイユ様ですか?」
 ソフィアは思わず尋ねてしまいました。

 ソレイユは目をつぶったまま起き上がり、そっと瞼を開きました。
 ラベンダー色の瞳は穏やかに澄み渡り、彼は落ち着いた物腰で頷きました。

 
 「私はメテオール。残念ながらソレイユではありません」




.......続く.......

BY-RUBY^^


 
by emeraldm | 2012-07-31 06:56 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
.........レギオンとソレイユ.3........

アリアスの声にふいを突かれ、レギオンの剣が一瞬遅れました。
 ソレイユは草地を転がり、両刃の長剣は大地に深々と突き刺さります。

 「じゃまをするな!アリアス!!」

 レギオンが大地に突き刺さった剣を抜く間にソレイユは立ち上がり、
自分の剣を構えました。
 背中の傷が痛むのか、苦しげな表情をしています。

 「レギオン聞いて。この人には記憶が無いの。
今、貴方と戦って勝てるはずはないわ!!」

 「ほう。こやつは記憶喪失なのか?
どおりでセコイ魔法しか使えんと思ったぜ!
 そりゃ好都合だな。ソレイユさんよ!!」

 ソレイユは憎々しげにレギオンを睨みました。
肩で息をしています。

 「もうやめて!!」
 
 アリアスは駆け出してソレイユを庇いました。

 「そいつを庇うのか?」

 悲しげにレギオンは言いました。

 「レギオン!この方を切るなら私くしを切りなさい。
 相手の弱みを利用するなんて貴方は卑怯者よ!」

 「なんだと?俺を卑怯者扱いするのか?
 俺はお前の秘密を知っていて、今まで待っていたのだぞ!
 無理やりお前を手に入れることも出来た。
 だがそれをしなかったのはお前に嫌われたく無かったからだ」

 「貴方は卑怯よ。父と母を脅したあの時も、私くしの血の家系を利用した。
今回もこの方の弱みを利用しようとしているのよ!」

 「なんだと!
 お前の 呪われた家系の血なぞ誰が好き好んで迎え入れようと言うのか?
 人を吸血鬼に変えてしまう血族なんぞの受け入れ先が、我が一族以外他にあり得ると思っているのか?
 アリアス.ファウスト!!」

 ソレイユの背中からは生暖かい血がドクドクと流れていました。
 竜の爪で付いた傷の苦痛は刃のそれよりも酷く、
少し足元がふらつき始めました。それでも一歩前へ出ると、

 「そこを退いてくれないかアリアス。これは俺の問題だ!」
 と言いました。
 アリアスは傷付いたソレイユを抱きとめようと逆に一歩近づきました。

 
 「アリアス.ファウスト?ファウスト家の一族か?これは好都合だな」
 
 いつの間にかオゾーに乗った海賊王ロラージュが草地の隅に立っていました。

 「お前は!」
 
 レギオンが驚いた顔をしました。

 「このオゾーはな。ただの怪物ではないんだよ。
 島の岩壁をよじ登るなんぞ何てことはないのさ...。
 それよりいいのか?こんな所で仲間割れをしていて。
 麓の街を見てみろよ。煙が上がってんぜ!!」

 「姉上!姉上~!麓の町が海賊に襲われました。
 こちらも危ない、早くお城にお戻り下さい!!」

 カルタス王子が馬で駆けて来ました。
 一瞬の隙を突きオゾーが高く跳躍し、ロラージュはアリアスを片手で引き掴み、
そのまま草地の崖を飛ぶように降りて行きました。

 「アリアス!」
 「姉上!!」

 レギオンは竜の姿になり、ロラージュを追いました。
オゾーはことのほかすばしっこく、山や森を抜け、レギオンの追跡をかわしました。
 ソレイユはその場に頽れる瞬間に悪魔の風を呼びました。

 「悪魔の風ウィロー!アリアスを追跡せよ!」
 
 それからソレイユの意識は真っ黒な奈落の底に落ちて行きました。








..........続く。..............

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by emeraldm | 2012-07-30 18:46 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
 
 ......レギオンとソレイユ.2......

 城から少し離れた高台の草地にレギオンは立ちました。
 目の前に見下ろすメイルーンの町並みや田畑。その先の海原。
 海岸と砦の様子もここではチェスの駒のように見えます。
 月丘砦と星丘砦、それをつなぐ海岸線。この島を取り巻く険しい岩山。
 キラキラと光る水面の先に、黒く固まって見えるのは残った海賊船の船団です。
 今はお互いに動きは無く、ただ船団は不気味に海に漂うばかりです。
 ピィピィチチチ。鳥の声が聞こえ、涼やかな風がレギオンの髪を揺らしました。

 「ここから見ると平和そのものだな。
 人間の争いなぞ、自然の者たちにとっては何の意味も無い...」

 「何が言いたいんだ」
  
 ソレイユが後ろから問いかけました。
 レギオンは振り向いてソレイユをまじまじと見つめました。

 「あの戦い...。お前はソレイユと言う魔法使いであろう?
 竜一族の長。最強と言われたオーヴを倒した男...。
 しかし、先ほどの戦いぶりは何だ?
 お前が本物のソレイユであれば、海賊なぞ物の数では無いはずだ。
 赤髪のソレイユは東の竜王国を一人で壊滅させたと言うではないか?
 女の恰好をして騙し討ちなんぞ似つかわしいとは思えない」

 「あいにく俺は、勝つために手段を選ばない男でな」

 「お前は本当にソレイユなのか?俺にはそうは思えない」

 レギオンとソレイユは睨みあいました。

 「しかし、お前がソレイユを名乗っている以上。俺も見過ごす訳には行かない。
 ここで俺と勝負しろ」

 「意味のない争いは好まないんだが」

 「お前に無くとも俺には十分すぎるほどの意味があんのさ。いざ!」

 レギオンはその腰に差した長剣を抜きました。

 「いざ!」

 ソレイユも剣を抜き構えました。
 ビュッ!!レギオンの剣がソレイユの右の顔をかすめました。
 ものすごい風圧です。レギオンの剣は幅の広い両刃の剣で、当たれば骨を砕きます。
 通常の人間には持ち上げる事も出来ないぐらい重いものでした。

 ソレイユは身の軽さと柳のように軽い剣でレギオンの刃をかわし、見事に隙をついて
レギオンの左脇腹に軽い傷を負わせました。
 レギオンはそれに少し驚いたような顔をしましたが、今度はソレイユの足を薙ぎ払いました。
 ソレイユはレギオンの刃を飛び越え、頭頂めがけて剣を振りおろしました。
 すばやく、レギオンは両刃の腹でそれを受け止め、ソレイユを突き飛ばします。
 ソレイユは軽々と宙を飛び、少し離れた場所に着地しました。

 「本当に小賢しい奴だ!!」
 
 レギオンの体がむくむくと大きくなり、濃い紫色の大竜がそこに現れました。
 鼻ずらからは白い煙が上がっています。
 竜は翼を広げ、空中に舞い上がりました。

 「お前を焼き殺してくれるわ!!」
 
 草地のソレイユに向かって、火炎が放たれました。
 間一髪で飛びのいたソレイユに、今度は竜の爪が襲い掛かりました。
 シャッと言う音がして、ソレイユの背中が切り裂かれました。

 思わず呻いてうずくまると、レギオンは人の姿に戻り、
ソレイユの前に立ち、このまま一気に切り裂こうと剣を天に構えました。

 「まって!レギオン!!」

 アリアスの声が草地に響きました。



...................続く。............................

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by emeraldm | 2012-07-30 10:28 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(2)
......レギオンとソレイユ.1......


 「姫様!お喜び下さい。
海賊船の半分が大破して、我が軍が優勢になっている模様です」

 「なんですって?それで、カルサスは、ソレイユ様はご無事なのですか?」

 「お二人とも無事にあらせられます。
 今回の作戦はカルサス王子様、ソレイユ様、ローレン卿のご活躍で
大成功を収めました。敵の勢力は半分になりました。
 サウンディッドの援軍が来るまで、なんとか持ちこたえられそうです」

 「そう!そう。ああ、良かったわ!
 あの方はやはり我らの守り神...」

 「まだ、油断するのは早いんじゃあないか?」

 突然、レギオンの声がしました。
 レギオンはつかつかと玉座に座るアリアスの前に立ちました。

 「まだ半分しか倒してないぞ!
 やつらは海賊。おめおめと引き返すはずはない。
 しかも黄金を見てしまった。
 大方、やつらのやる気に火をつけてしまったってとこだ!!」

 「レギオン!私くしは貴方の自由には成らないわ。帰ってちょうだい!」

 「わざわざ援軍を連れて来てやったのにか?
 サウンディッドの援軍が着く前に、この島はガルガンドイドに侵略されてしまうぞ!
 まあ、俺にはどうでもいい話しだがな!!」

 「きっと、あの方が救って下さいますわ!」

 「あの方?ソレイユって言う魔法使いか?
 小賢しいやつめ!!
 今、このままお前を攫っていってもいいが、
 その前に、そのソレイユって奴と話を付けねばならないな!
 アリアス!婚礼の仕度をして待っていろよ!!」

 レギオンはそのまま部屋を出て行きました。


砦では、海賊船に砲弾をこれでもかと打ち込み、
海に落ちた残党を弓矢で狙い撃ちしていました。
 ヒュードーン!ドーン!!バキバキバキッと砲弾の音が響きます。
 海岸線は海賊達の血で染まり、砦の石壁に辿り付き登ってこようとした者達はすべからく矢で射殺され、生きて海岸にたどり着く者は皆無でした。
 あちこちで船が赤く燃え上がり、やがて海に沈みました。
 残った海賊船は生き残った仲間達を拾い上げると砦の大砲が届かぬ距離に退却を始めました。

 「引け!引けー!!体制を立て直すんだー!」
 
 
 
 すでに太陽は登り、じりじりとした暑さの中、にらみ合いが続きました。

 「戦況はどうだ?エンリケ将軍」

 カルサス王子とソレイユが砦に戻って来ました。
 すでに変装は解いています。

 「王子様方のご活躍で、なんとか敵艦の半分を撃破しました」
 残った船は射程距離の外に退却いたしました」 

 「ご苦労!エンリケ将軍!!
 援軍が到着するまでなんとかやつらの上陸だけは引き止めねばならない。
 私は一度城に帰り姉上に戦況のご報告をして来る。
 後はたのんだぞ!!」

 「承知いたしました。カルサス様。
 やつら一人たりともこのメイルーンの地を踏ませわいたしませぬ!」

 「よろしければ、ソレイユ殿も私と同行願いたい。
 姉上について、内密な話があるのです」

 「お召とあれば...」

 「では参る!」

 カルサス王子とソレイユは砦の厩舎から馬を借り、ファウスト城へと急ぎました。
 

 二人が城に辿り着くと、城の門の前に、人の姿のレギオンが待ち伏せをしていました。
 その姿が視界に入ると、

 「レギオンめ!」
 カルサスは腰の剣を抜き、馬から飛び降りました。

 「レギオン!何しに現れた。姉上をお前なんぞに渡しはしないぞ!」

 「カルサス王子。やがて貴方は俺の身内になる方。
 その美しい顔に傷を付けたくは無い。
 俺はソレイユとか言う魔法使いに会いに来たのです。
 そこをどいて下さい」

 剣も抜かずレギオンは冷ややかに言いました。

 「なんだと!」
 
 カルサスが剣で打ちかかろうとするのを後ろから腕を取り、ソレイユが止めました。

 「カルサス様。この方は私と話がしたいようです。
 これは私と彼の個人的な問題です。どうぞお気使いなされないで下さい」

 「じゃまをするなと言う意味か?」

 「はい」

 「仕方ないな...。では私は城で大人しく待っている。ソレイユ殿、後で必ずお会いしましょうぞ!」

 カルサスは振り向きもせず、城門から城に入って行きました。

 「さて...。こんな狭いところでは話にならんな!
 ちょっと顔を貸してくれるか?」

 竜王のレギオンはぷいと後ろを向き歩き出しました。
 ソレイユは城門に向かって馬の尻を叩き、自分は歩いて後ろから付いて行きました。


............続く。.................

BY-RUBY^^
by emeraldm | 2012-07-29 10:39 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
  ......黄金と女王......

 「まあ!ロラージュ様。
なんて素敵なお名前なの?」
 アリアス姫は大げさに驚いて見せました。
 

 「くさい芝居...」
 ローランは聞こえないように小声でいいました。

 しかし、ロラージュはまんざらでもないらしく、ニコニコしています。
笑った顔が又醜悪で、カルサスは思わず目を逸らしました。

 「姫様はロラージュ様の武勇伝を聞き、お会いするのを心待ちにしていたのですよ」

 女王の御付であるのか?妙齢の赤毛の美女が言いました。
 こちらも何とも言えず艶やかな女で、真っ赤な口紅とその髪の色が良く似合っています。
 いささか女にしては背が高すぎるようですが、涼しげな流し目がロラージュを誘惑していました。

 「この品々はこの島の特産品です。姫さまからの歓迎の印。
受け取って頂けますか?」

 恥じらうように、花のような美少女が言いました。赤毛の女のような色気はありませんが、
こちらに気があるのか上目づかいに見上げて来ます。
 頬がほんのりとピンク色で柔らかそうでした。

 ロラージュはこの事態に我を忘れてしまいそうでした。
天にも昇る心地とはこの事です。

 「そうか、そうか。それは嬉しい歓迎だ!
この島でこのような歓待をしていただけるとは思ってもいなかったぞ!」

 ロラージュはやに下がってニヤニヤと笑いました。

 「この黄金はこの島の鉱山で取れるもの、まだまだあります。
後ろの全ての船に詰め込みました。
 私からの心よりの贈り物。どうぞ受け取って下さいませ」

 「何?この島では黄金が取れるのか?」

 「はい。何も無い退屈な島ですが、このような物なら腐るほど!
 私たちは和平を望んでおります。
 ですから、このように女だけでご挨拶に伺いました。
 私たちは非力でございますゆえ、どうぞこの荷を貴方様の配下の方に運ばせて
下さいませ」

 「おい!お前ら、黄金を持ってこい!!くれぐれも淑女たちに妙な真似をすんなよ!」
 「へい。お頭!」

 たちまち船にロープが掛けられ、大勢の手下が流れ込みました。

 「おい!本当だぞ!!これは本物の黄金だ!」
 「こっちには金の壺。こっちは黄金の剣だ」

 「ほう。大したお宝だな。これがみんな俺の物か?」

 いつの間にかロラージュもこちらに渡って来ていました。

 「いえいえ。後ろに積んだ黄金はこれよりもっとございます。
どうぞお納め下さいませ」

 姫が片手を上げると、白旗が引き降ろされマストに赤旗が上がりました。

 「これは船を引き渡す合図ですゆえ」
 
 その言葉通り、荷物を積んだ40隻あまりの軍艦がてんでんばらばらに、
するすると海を漂い出しました。
 どうやら人は乗っていないようです。

 「私くしからのあの贈り物をどうかお受け取り下さいませ。
それから私くし達は城で貴方様をお待ちしております。
 素敵な歓迎会をご用意いたしますので、
少しの間お待ち下さいませね。
 後でお迎えに上がりますから」

 「おお。これはかたじけない。戦になると思っていたが、
思わぬ歓待を受けたぞ!
よし!お前ら。あの荷物を積んだ船を回収しろ!
それから誰かご婦人方を島に連れて行って差し上げろ!」

 「いえいえ。私くしどもは、あの小船で島に帰りますゆえ、
どうぞこの軍艦ごとお受け取り下さいませ。
 私は島の魔女で小さな魔法くらいは使えます。
小船で島に帰るなぞ造作も無いことです」

 赤毛の女が言いました。
 
 なるほど、この女は魔女という名にふさわしく、蠱惑的でミステリアスです。
 女王と女二人でここまで来れたのもこの女が魔女だったからだろうと
ロラージュは考えました。

 そうして、この美女三人組は何事も無かったかのように
軍船の脇につるされていた小船を降ろしそれに乗り込みました。
 ロラージュは少し残念なような気がしましたが、目の前のお宝と歓迎会という言葉に騙され、美女達の乗った小船を手を振りながら見送りました。

 「あ~あ、お頭。返しちゃったの?まったく女に弱いんだから...」
 手下の一人がぶつぶつと文句を言いました。

 「ぶつくさ言ってねえで早くあの船を回収しろ!
船一杯の黄金があんなに沢山手に入ったんだぞ!!
 俺は世界一の金持ち王だ!
 アリアスも俺に気があるみたいだからな。
 結婚しちまうかな~~~あ。うへへ」

 「どう考えても変だよな~。お頭に気がある女なんて、
これは罠にきまってますぜ」

 「なんだと!お前ら殺されてぇのか?」
 
 「何でもありませ~ん。船の回収に行ってきま~す!」

 「黄金船を回収せよ~」
 「黄金船を回収せよ~」

 伝令が200隻の船に響き渡りました。

 「何?黄金船だと??あの船には黄金が積んであるのか?」
 200隻それぞれのキャプテンが急いで船を近づけ、
 40隻の軍船を争うように収奪しました。

 「キャプテン。本当です。積荷は黄金製品の山です」
 「何だと?おい!お前ら!俺たちの船に黄金を移しやがれ!」

 「おい!この船は俺たちが先に確保したんだ!
お前らは他の船を捜しやがれ!!」

 「なんだと?お前ら独り占めするつもりか?」

 荒くれ者の海賊たちは欲に目がくらみ、仲間同士で争い始めました。
 パンパン!誰かが発砲したようです。
 ワーワーと争いの声が上がりました。

 「あいつら、何やってやがんだ?」
 ロラージュは首をかしげました。

 「お頭、どうやらお宝をめぐって争っている見たいですぜ」

 「馬鹿だなあいつら...。あの黄金は全部俺んだぞ!
今すぐやめさせろ、でないと恐ろしい目にあうぞと言ってやれ!!」

 「はい!分かりましたお頭!!」

 「まったく、油断も隙もあったもんじゃあねえ。
あいつらには品性って物がねえんだよな。
 そこいくとアリアス女王の品の良さったら、
やっぱ御育ちってやつよな。
 ああ。アリアス。今宵が待ち遠しいぞよ!なんちゃって。
おお。こうしちゃおれんな。俺も飛び切りのおしゃれをせんと。
 おい!お前ら。黄金はこのままにして、この船ごとひっぱれ!
 俺は船に帰るぞ!!」


 その頃すでに、カルサス、ローラン、ソレイユの三人は、小舟で入り江の先に来ていました。
 三人の乗った船から砦に向かい大きな花火が打ち上がりました。

 パンパンパン!花火の音が響くと、
月丘砦、星丘砦。両側から砲弾が発射され、荷物を積んだ40隻もの軍艦が大爆発を起こしました!
 辺りは火の海です。
 ぎゃー。逃げろ!海に飛び込め。
 口々に叫びだすと、海賊たちはてんでに逃げ出しました。
 黄金を収奪しようと集まっていた海賊船は格好の標的になり、
 砲爆で次々と海に沈んで行きました。

 海賊王ロラージュの船も爆発の犠牲になり、船の半分は大破して、木造の船はめらめらと燃えて行きました。

 「お頭。逃げて下さい。この船はもう駄目です!!」
 手下の一人が叫びました。

 ぶおお~~~~!!オゾーが火に怯え、叫び出しました。

 「おのれアリアス!!騙しやがったな!
 お前ら、船を脱出して島に向かえ。
 残った船は総攻撃をかけるのだ!」

 ロラージュはひらりとオゾーに飛乗り、海に飛び込みました。
 手下達も小舟を降ろし乗り込みます。

 海賊船は飛沫を挙げて傾き、めらめらと燃えながら海中に沈んで行きました。

 「アリアス。俺を本気で怒らせてしまったな。
この借りは必ず返してもらうからな!!」

 炎を映すロラージュの顔はこの世の物とも思えぬほど恐ろしげにゆがみ、
メイルーンの島を憎々しげに見つめていました。


..............続く。.............

 BY-RUBY^^

 
by emeraldm | 2012-07-28 18:04 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
 
・・・夜明けの奇襲・・・


 「ソレイユ殿。これはやりすぎなのではないでしょうか?」
 
 派手な美しい装束を纏い、赤い顔をしたアリアスが言いました。

 アリアスの他に二名の美女が軍艦の舳先に、黄金の山とともに乗り込んでいます。

 「とても美しいですよ。アリアス王女!」

 艶めかしく赤い髪の背の高い女がにっこりと笑いました。

 「ふざけないで下さい。なぜ私までこのような恰好を?」

 かわいらしい美少女がドレスの裾をたくし上げて訴えました。

 「ローラン。君以外に誰か適役がいましたか?」

 ソレイユは又にっこりと笑いました。

  ...いじわるだ!いじわるに決まってる。一番若いからって馬鹿にして...

 ローランと言われた美少女は真っ赤になってソレイユを睨み付けました。

 アリアス王女は悔しがるローランを見て、ふっと笑いました。

 「ローラン、こらえてくれ。まさか本物の姉上を危険にさらす事はできないだろう?」

 「カルサス王子...。貴方様がそうおっしゃられるなら...。
 しかしそうして見るとカルサスさまはアリアス王女に生き写しですね。
 本当に美しい!」

 ローランはカルサスを眩しい物を見るように見つめました。
 メイルーンを守る十人の騎士の一人であるローランは、カルサスと同年代の
まだ少年と言ってもいい体つきの華奢な若者でしたが、その忠誠心は誰よりも厚く
アリアスに密かな恋心を持っていました。

 「私はソレイユ殿の女装ぶりに驚きました。
長い赤髪は美しい物ですね。
 あなたが本物の女性なら今すぐにでも求婚するものを...」

 カルサス王子がおどけた調子でソレイユに言いました。
ソレイユはちょっと嫌な顔をしてから言いました。

 「いくら変装の魔法を使っても、この髪の色は変えられ無かったのです。
それより、カルサス王子、ローラン卿。用意はいいですか?」

 
 
 夜が明け始めていました。
水平線の辺りにガルガンドイドの船隊が港を包囲するように浮かんでいます。
 その数は思っていたより多く、砦の上の兵士達がざわめきました。

 「ハロルド、兵を静めてくれ。くれぐれもばかな真似はしないように。
我々はソレイユ殿の合図があるまで微動だにしてはならぬ。
 皆が一丸となってこの戦況を乗り越えねばならぬのだ。
 一兵卒とも油断するな!!」

 「はい!エンリケ将軍」

 海岸線100m向うの入り江ぎりぎりの線に、メイルーンの軍船40隻が港を塞ぐように終結しています。
真ん中の一番大きな飾り立てた軍船には、山盛りの黄金と三人の美女が乗っていました。

 
 「なんだ?あれは...」
 
 空の上、雲の向うに隠れていたレギオンは呟きました。
 メイルーン島の入り江付近を守る様に軍船が40隻。
 それを取り囲むように200隻もの海賊船。

 「ばかな!あれでは集中砲火をあびてしまうではないか?」

 実際に海賊達は入り江の軍船に砲弾を撃ち込む準備をしていました。


 
 「お頭様。女たちが見えます!」

 ガルガンドイドの見張り番が単眼鏡を片手にマストの上から言いました。

 「なんだと?女?ばかな!ちょっとそれをよこせ!!」

 見張り番から単眼鏡を取り上げると、ロラージュは敵の軍船を見ました。
 確かに、女が三人。一番先頭の大きな軍船で手を振っています。

 「ええい!良く見えん!船を近づけろ!」

 ガルガンドイドの船団は、輪を縮めるように近づいて行きました。

 「ロラージュ様。これ以上敵に近づくのは危険です!」

 手下の一人が忠告しました。

 「よし、この辺でいいだろう!!どれ。
何だ?あの女たちは??いずれも劣らぬ美女揃いだな??
 あの後ろにあるのは!!驚いたな。黄金だ!
黄金が 山とつんであるぞ!」

 「お頭様。女がお宝もって振ってます!
あ。白旗が上がった。降伏です。降伏宣言してます!!」

 「中の一人は王冠を被ってるな。
アリアス王女か?するとメイルーンは無条件降伏をするつもりか?
それとも黄金と引き換えに命乞いをするつもりなのか?」

 ロラージュの醜い顔がゆがみました。どうやら笑っているようです。

 「女の統べる国なぞこの程度。どうやらこの国に強い男はいないようだな!
あ。女達の船が近づいて来るぞ!」

 「お頭様。罠かもしれませんぜ」

 「罠だと?王女を囮にしてか?いずれにしてもこちらの方が人数が多いんだ!
相手の言い分を聞いてみてやろうじゃないか!」

 「お頭様は女に弱いからなぁ...」

 ぶつくさと手下たちが文句を言う中。

 「うるせぇ。俺は早くアリアスの顔が見たかったんだ!
向うからお出ましになるのに迎えにいかなきゃ男がすたる。
 お前たちはだまってろ!!なあ、オゾー!」

 オゾーは頭をぶるると振りました。
 
 「女たちの船に近づけろ!他の船はここで待機!」

 「待機しろ~!」
 こだまのように船から船へ伝令が伝えられました。


 ロラージュの船とアリアスの船は、
両軍のちょうど真ん中で出会い、横並びになりました。

 「あら、嫌だ!醜いわ」

 ローランがふざけて小声で言いました。
ロラージュは甲板の手すりに身を乗り出し、女たちと黄金の積み荷をかわるがわる見ています。
傍らには巨体の怪物オゾーが寄り添っていました。

 「あら、よだれがたれている。どっちが船長なのかしらね?」
 
 ソレイユが話を引き継ぎました。

 「ふざけている場合では無いですよ。ばれたらどうするんです?
さあ。いきますよ!」

 カルサスはつかつかとロラージュに近づきました。
 相手の顔がすぐ近くに見えます。
 ロラージュはアリアス女王の美しさに思わず顔を赤らめました。
 
 ...お、思ったよりべっぴんじゃあないか?この女...
 
 ロラージュは舌なめずりをしました。

 「ガルガンドイドの王は貴方様ですか?私はアリアス。この国の女王です。」

 カルサスはなるべく姉のアリアスに似ているよう装いました。

 「我はロラージュ。ガルガンドイド及びテルー諸島の統治者だ!」

 ロラージュは威厳を保つように気取って答えました。
 
 「お頭、いつもとちがわね?」
 小さい声で誰かが言いました。



 一方空の上で、レギオンがそれを見ていました。
  
 「なんだなんだ?メイルーンの軍船が白幡をあげているぞ!
どういう事だ?あれ?交渉を始めたのか??
 あ。あれはアリアス...。いったいどういう事なんだ??
 ウィロー!ウィロー出てきておくれ!」

 一握りの風がびゅっと吹きました。

 「ごめんね。レギオンさん。俺、主様ができちゃったから、
もう遊んであげられないんだ。悪いね」

 姿も現さず、ウィローは去って行きました。

 「ちょっ。待て、ウィロー!!お前もどういう事だ!!
 ......仕方ない。しばらく状況を見るしかないな...」

 雲の上には沢山の竜達が、竜王レギオンの指示を今か今かと待ちわびていました。




............続く。...................

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by emeraldm | 2012-07-28 09:24 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
 ・・・・・・夜明け前.3・・・・・・

 
 「はは~ん。あれがソレイユだな?
西風のルーンが言っていた通りだ!....」

 風の精ウィローはカルサス王子とソレイユが出会った木の上で呟きました。
今は透明な姿です。

 「それにしても見事な赤髪だな。あれが竜の血の色だってホントかな?
 ほっしいな~あの髪。
 でも、絶対手に入んないだろうな~。
 レギオンに目玉を貰おうと思ってたんだけど、こっちの方がお宝だ!
 うう~ん。寝返っちゃおうかな~??
 でもどっちが強いか見極めてからでもいいか~。
 取りあえず付いて行って見よ」

 「おお。凄いことになってるぞ!
ソレイユには何か秘策があるらしい。
 これは面白くなってきたな!
 えばりくさった貴族どもが気おされして言いなりになってるぞ~。
 なんか面白いから、しばらくこいつの側にいるかな」

 ウィローは姿が見えないのを良いことに、ソレイユのすぐ近くにくっついて聞き耳を立てていました。
 ソレイユの赤い髪が少しだけ風になびいています。
 
 会議の途中、ソレイユは何かの気配にふっと空中を見上げました。

 「やば!こいつ何か感じているらしいぞ!気をつけねば」

 ウィローはちょっとだけソレイユから離れました。

 会議が終わったのか、カルサスが最後に言葉を引き継ぎました。

 「では、各自持ち場に付いて下さい。
こちらから指示があるまで動かないように兵を統率してください。
 これから私はソレイユ殿と行動します。
 この作戦が成功すれば、ガルガンドイドに多大な打撃を与える事が出来ます。
同盟国、サウンディッドからの援軍が到着するまで我らは持ちこたえねばならない。
 うまくすると挟み撃ちに出来るかもしれない。
 それでは皆様、ご武運を!」

 十人の騎士たちはそれぞれの持ち場へと帰って行きました。
 カルサス王子と二人きりになると、ソレイユは言いました。

 「さて、私たちも仕度をせねばなりません。
王室の財宝はどのくらいありますか?」

 「数えたことは無いので良く分かりませんが、この島には黄金が眠る鉱山があります。
確か王室に一部屋分の黄金はあると思うのですが?
 もっと必要ならば採掘も可能です。」

 「驚いたな!ガルガンドイドはそれの為に戦を仕掛けているのですか?」

 「さあ?この島に黄金があるのは極秘事項になっていますので、
やつらが知っているかどうか?
 むしろテルー諸島を全部手中に収めたいのと、
大方姉上の美貌の噂でも聞いたのでしょう。
 黄金の情報が入っていたのならもっと早くにこの島に来たはずです」

 「では、その黄金を1隻の船にあるだけ詰め込んで下さい。
 後は、私の指示通りに... それと、その前に!」

 ウィローは突然何か強引な力で引き下ろされ、地面に落下しました。
思わず透明な子供の姿に戻りうめきました。

 「痛い!!何だ?」

 目の前に魔法の杖を突きつけられています。

 「ひょえ。ばれた?」

 ソレイユは怖い目でウィローを見つめました。
 ウィローは手足の自由を奪われ、動くことが出来ません。

 「ひえ~。悪かったよ~。立ち聞きしただけだよ~」

 「お前は悪魔の風だな。ここで何をしていた?」

 「ちょっと立ち聞きしただけだよ~。殺さないでおくれ!」

 ソレイユの瞳がギラリと光りました。
......お前の方が悪魔じゃん!恐いよ~!..........
 ウィローは小さな声でつぶやきました。

 「全部吐け。でないとお前を焼くぞ!」

 
 「えええ。嘘!そしたら消えちゃう。止めてくれ~。
お願いだ。全部吐く。吐くから~!!」

 ウィローは泣きながらすがりました。
こんなに怖い思いをしたのは初めてです。

 「まず、お前の名は!!」

 「.....。」

 「火をつけるぞ!」

 「ウィ、、、ウィローです......」

 「ここで何をしていた!正直に答えるんだぞ」

 「スパイ」

 「誰に頼まれた?」

 「レギオン」

 「竜王のレギオンか?なぜ奴がメイルーンを嗅ぎまわる?」

 「メイルーンでなくって貴方を、赤髪のソレイユを調べろと...」
 
 「俺を?なぜだ?」

 「貴方が竜一族の敵だから...だと....」

 「ふふ~ん。お前。争いを面白がっていたな。
 悪魔の風ウィロー。残念だがお前はもう俺の手下だ!
 俺に名前を告げたのが運のつきだな。
 俺はいつでもお前を呼び出せる。
 もちろん報酬無しでな!分かったか?ウィロー!!」

 そう言うとソレイユは杖を上げ、

 「アルファイラルファルス、ウィロー!
 悪魔の風よ我に従え」
と唱えました。

 「ひぇ~苦しいごめんなさ~~い!」

 悪魔の風はポン!と潰れていなくなりました。

 「あいつ、逃げたのでは?」
 カルサス王子が言いました。

 「いえ。あの呪文からは逃れられません。
私はいつでもあの者を召喚する事ができるのです」

 何事も無かったかのようにソレイユが言いました。


 「貴方はどれほどの魔法が使えるのですか?
私にはとても記憶を無くしているようには見えないのですが?」

 
 「完全に記憶が戻らぬかぎり、私にもどれほどの魔法が使えるのか分からないのです。
 多分、この程度の魔法は日常生活でいつも使っていた範囲なのでしょう。
 それに私は軍にいた気がする。戦いが日常であった気がするのです」

 
 「やはり、貴方は大魔法使い。悪魔の風を従わせることを日常だとおっしゃる。
姉上のお言葉は正しかったのですね。
 さあ、我らの成すべきことを成してしまいましょう。夜明け前に......」

 ソレイユとカルサスは足早に砦を出て行きました。


................続く。.............

BY-RUBY^^


 
by emeraldm | 2012-07-27 15:55 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
  ・・・・・・夜明け前.2・・・・・

  
.
..... 血、血。見渡す限り血の海だ。
 手を見ると、ねっとりとまつわりつくどす黒い液体で濡れている。
 血の匂い、全身に浴びた赤...。 
 後ろに気配を感じ、容赦なくそれを切り裂く。
噴水のように血しぶきが上がり、俺は血の洗礼を笑って受け止める。
 血の海は熱いのに俺は凍えそうに冷え切っている...。

 ......君は一人ではない。愛した事を忘れてはいけない。......

 誰かの声が聞こえる。

 「お前は誰だ?」

 靴音? 
何者かが近づいて来る...。
 
 赤い髪の男。
 俺は自分自身に語り掛けているのか?........


 

 「ソレイユ様。こちらにおられたのですか?」
 
 声を掛けられ、ソレイユは驚いて夢から覚めた。

 「失礼。お休み中であられましたか?」

 木の下から高貴な身なりの若い男が言いました。

 ソレイユは高い木の枝からその男の目の前に飛び降りました。

 「これは、カルサス様。
 見張りをしているつもりだったのですが、
気付かずに眠ってしまったらしい。
 私に何か?」

 「姉上から貴方様の指示に従うように言われて来ました。
私と一緒に来ていただけますか?」

 「いったいどこに?」

 「砦へです。そこに参謀が皆集まっています」

 「でも、なぜよそ者の私を...?」

 「女王命令ですから。それに貴方はかの有名な英雄ソレイユ」

 「ばかな?自分の名前すら憶えてない者を!」

 「それでも今わが軍には人が足りない。貴方のように自ら戦いに参加してくれるお方は
我々にとっても貴重なのです。何より、姉上が貴方を信用している。
 とにかくついて来て下さい。さもなくば、参謀共がこちらに来なくてはならない」

 「カルサス王子。分かりました。貴殿について行きましょう」
 

 カルサスとソレイユは岬の砦に入って行きました。
 
 兵たちはすでに戦闘準備を終え、指示待ちの体制のようです。
ピリピリと緊張した空気が流れていました。

 会議室には円卓が置かれ、十人もの騎士たちがすでにメイルーンの地図を挟み
何やら意見を交わしておりました。
 王子に続きソレイユが入って行くと、
二人が椅子に掛けるまで十人の騎士は敬礼をしました。

 「で、状況はどうなのだ?エンリケ将軍」
 カルサスは一番の年上であろう、恰幅のいい口髭を生やした騎士に訊ねました。

 「はい。すでにメイルーンの沿岸全域はガルガンドイド軍に包囲されている模様です。
敵の軍船は200隻余り、わが軍の軍船は40隻。まともに戦っても勝ち目はありません」

 「そうか?では奇襲を掛けるしかないな!」

 「サウンディッドから援軍が向かったと報せがありました。
 100隻ほどの軍船だそうです。サウンディッドからの援軍が到着するまで
我々が持ちこたえれば勝機もあると思われます」

 一番若い騎士が言いました。年の頃はカルサスと同じ位でしょうか?

 「それでも我が軍は相手方より劣勢だ。海の戦闘に手慣れた海賊船200隻と、
サウンディッド、メイルーン合わせて140隻。海戦では話にならない」

 痩せて背の高い神経質そうな騎士が言いました。

 「やはり、まともに戦っては勝ち目が無い用ですね。
カシス王国が味方してくれぬかぎり......」

 一番背の低い、太った騎士が言いました。

 「シャウト!君は女王をカシス王国に売るつもりか?」

 一番若い騎士が腰の剣を抜こうとしました。
そこにエンリケ将軍が割って入りました。

 「ローラン。シャウトはそんな意味で言ったのでは無いよ。
カシスに援軍を頼んだのは女王自身のお考えだ。
それに、まだカシスから返事は来ていない。
 我々も、カシスからの援軍は期待しないで置いた方がいい。
何か斬新な戦術を考えねばならない。
 海戦。内戦。奇襲。全ての知恵を出すのだ。
 ガルガンドイドに負けたら一族郎党全て滅びると肝に銘じて策を練るのだ。
 赤い髪のお客人はどう思われる?」

 「エンリケ将軍。このお方はソレイユ様だ。失礼な物言いをするでないぞ!」
 
 カルサスが口を挟みました。

 「え?ソレイユ様?あの竜退治の?」
 「まさか?伝説だと思っていたのだが?」
 「このような若造がソレイユだって?」
 「いや、あの血の色の髪。かの人以外には...」

 ざわざわと一同がざわめきました。
 ふっと口元に皮肉な笑みを浮かべるとソレイユは立ち上がりました。

 「私は記憶の一部を失っている。だからその名が自分の物かも分からない。
しかし、魔法使いであることは確かなようだ。
 将軍。この国の地図を見せてくれないか?」

 エンリケ将軍が地図の説明を始めました。
 
 「今、皆がいる砦がここ、月浜岬です。
近くの沿岸は比較的遠浅で、船は沿岸から100メートル遠方にしか着船出来ません。
ですからここに上陸するには手漕ぎボートがいる訳です。
 もしくはここ月浜岬の断崖をよじ登るか、向かいの星浜岬の断崖をよじ登るかどちらかになるでしょう。
どちらの岬にも砦があり、大砲も矢も設置してあります。
 沿岸には兵を配置して地上戦にも備えております」

 「エンリケ将軍。島の裏手はどうなっているのですか?」

 「島の最奥にはファウスト城があります。この島で一番高い土地にあり、
堅固な城壁で囲まれています。
 城の裏手は人間には登る事の出来ない絶壁。
 敵が入って来るなら沿岸か岬の壁をよじ登るより手が無いでしょう。」

 「では、海戦は控えて、やはり侵入路で戦うべきですね。
島の人間は地の利がある。島の形状を知り尽くしているからね。
 私に策がある。援軍が来るまで、しばらくは持ちこたえることが出来ましょう。
 40隻。全ての軍船を私に預けて下さいませんか?」

 ソレイユのあまりに大胆な申し出に、エンリケ将軍は驚き
カルサス王子に無言で問いかけました。
 
 「エンリケ。彼の言う通りにしろ。女王命令だ!」

 その場にいる十人の騎士は事の成り行きに驚き、ただソレイユを見やりました。
 赤い髪のこの男は、表情の無い鋭い瞳でその場にいる全員を威圧しているようでした。


...........続く。..............

BY-RUBY^^

 

 




 


 
by emeraldm | 2012-07-27 11:30 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)
 ......夜明け前.1......

 夜明け前にアリアスはベットの中で目覚めました。
一瞬、何が起こったか分からずに驚いて布団をはねのけ、額に手を当てました。

 「姫様。お目覚めですか?」
ソフィアの声が扉の外から聞こえました。
 「朝食をお持ちいたしました。入ります」

 「ソフィア?私くしは眠ってしまったの?昨日はソレイユ様とお話していたと思っていたのですが?」

 側使えのソフィアはふっと微笑みを浮かべました。

 「あの方はあれからすぐに港に向かいました。どうやら姫様を魔法で眠らせたようですね」

 「眠らせた?あの方は記憶が無くなってしまったのではなかったのですか?」

 「何がなんだかソフィアには分かりませんが、あの方が姫様の部屋から出ていらして、
姫様がお眠りになっているのでそっと寝仕度をさせてくれと言われるのです。
 朝方には目覚めるようにしてあるから心配するなと。
 それから、こうも言われました。
 事情は承知したが、私が戻るまで無茶をされるなと伝えて欲しいと」

 「あの方が・・・・・・」

 アリアスの心は不安と期待の狭間で揺れました。

 「姉上、起きておられますか?」

 弟のカルサス王子が現れました。
 すでに軍服を着用して戦闘に備えています。

 「よくお眠りになられましたか?姉上」
 
 カルサスは気遣うように微笑みました。

 「ええ。すっかり元気になったわ、カルサス。
ガルガンドイドの動向は分かりましたか?」

 「いえ。まだ伝令からは何も報せが届きません。
私もこの後すぐに前線に出動いたします」

 「カルサス。くれぐれも気を付けて下さい。
貴方に何かあったら私くしは生きては行けません。
 それと、あの赤い髪の客人はソレイユ様よ。
きっと貴方を助けて下さるはずです。
くれぐれも失礼の無いようにね」

 「ソレイユ?あの大魔法使いの??確か行方不明になったのでは?」

 「そう、あの方はソレイユ様。どうやら記憶を無くしているようだけれど、
あの方の記憶が戻って来れば、メイルーンを救って下さるかもしれません。
 昨晩、取り乱した私くしを魔法で眠りにつかせて下さいました。
どの程度の力が残っているのかは分かりませんが、
 あの方によく従って下さいね。
 カルサス、これは女王命令です」

 「そうでしたか。竜退治のソレイユ様であるならばあるいは...。
ところでいずこに居られるのですか?」

 「すでに港に向かったようです。
カルサス。戦況は逐一報告して下さいね。」

 「はい。それでは、姉上。カルサスは出陣いたします。姉上に幸運を!」

 「カルサス。貴方もね」

 夜明けを待たずに、カルサス王子は足早に去って行きました。
 幼かった弟のカルサスはいつしか立派な軍人となり、
アリアスは無事を祈る事しか出来無い女の身を呪いました。

 ......そう。女の私くしに出来ることは一つしかない。だけど.......

 「私が戻るまで、無茶をされるな」
 
 ソレイユの鋭く冷たいまなざしが思い出されてなりませんでした。

 
...........続く。..................

 BY-RUBY^^

 
 
by emeraldm | 2012-07-26 15:26 | 小説-赤髪のメテオール外伝 | Comments(0)