カテゴリ:小説-サンタの約束( 11 )

サンタの約束。NO11 ~最終章~

 
 三日の間。僕は病院を出ることが出来なかった。
  熱は一日で引いたものの、体が大分衰弱してしまい歩く事が出来なかったからだ。
  父もジィジも何事も無かったかの様に振舞い。
 僕は、あれは夢だったんでは無いのかと思い始めていた。
 
 三日目の朝には、父が自ら愛車のジャガーを運転して、僕をサンタジィジの家に送ってくれた。
 
  「良明。父さんの事業はもう少しで片がつくんだ。それまで待っていてくれるか?」

 父が珍しく神妙に聞いたから、僕はコクリと頷いた。
 サンタジィジは家の前で僕を待っていてくれた。僕は車を飛び出し、サンタジィジの胸の中に飛び込んだ。
 
 「ヨシュア。ありがとう。ありがとうな…」

  ジィジが僕を撫でながら鼻をすすっているのが分かった。
 
 「僕。ジィジのホットケーキが食べたいな」

 僕は照れ隠しにそう言った。

 「そうか、そうか!今すぐに作ってやるからな」

 「スペシャルイチゴソースがけでお願いします!」

 僕は笑いながらそう言った。

 「なんだか、美味しそうだな。父さん、僕にも作ってくれないか?」
 
 父が車のドアをバタンと閉め、此方に歩いて来た。
  ジィジは凄く驚いた顔をしてから、急にニマニマし始め、最後に飛びきりの笑顔を見せてこう言った。
 
 「よし、よし!それではスペシャルホットケーキ三枚ご注文~だな!」

 ぽかぽか暖かい朝だった。

 
 
 それを期に、父とサンタジィジの関係は少しづつ変わり始めていた。
 
 何にも無かったかのように、相変わらず僕はジィジの家から幼稚園に通い、
父は仕事の合間にちょくちょく会いに来てくれた。
 母は医院長ジィジの治療で、段々と回復してきたみたいだけど、少しの間しか面会は出来なかった。
 
 ジィジと僕とで企画したクリスマスパーティにも、遅れて来はしたけれど、父はちゃんと出席してくれた。
 サンタジィジの友達の山ちゃんと奥さんのみよちゃんも来てくれた。
 今度は普通の恰好だったから、僕は最初誰だか分からなかったのだけれど、
 みよちゃんはピンクのセーターが似合うかわいいおばあちゃんで、
 山ちゃんは背が高く、がっちりとしたロマンスグレーのかっこいいおじいさんだった。
 皆でプレゼント交換やゲーム。山ちゃん夫妻が社交ダンスを披露したり、
 サンタジィジが帽子からウサギのぬいぐるみを取り出す手品をしたり。
 僕は笑い、大いに食べ、昔話を聞いたりしていた。
 父さんも珍しく楽しそうに笑っていた。
 
 パーティがお開きになる頃。
 山になったプレゼントを開けながら、僕はふとサンタジィジに訊ねた。

 「ねえサンタジィジ。本物のサンタさんているのかな?」

 ジィジは事もなげに答えた。

 「いるよ」

 「ほんと?」

 「本当だとも、わしがサンタの親戚だって言わなかったっけ?」

 「でも、ジィジ。日本人じゃん!」

 「うへへ。それを言われちゃしょうがない。
でもな、サンタさんて見えないだけかもしれないよ」

 「え?」

 「サンタさんは、そうだな、サンタっていう精霊かもしれない、
誰か愛する人に贈り物をしたいって思う気持ちが精霊になって、
パパやママを動かしてプレゼントを届けてもらうんじゃ。
言い換えればサンタさんは愛そのものなんじゃな。
そうするとパパやママがサンタさんだともいえるんじゃあないかな?」

 「ふうん!」

 「わしがサンタの親戚って名乗っているのはな、何も名前が同じだったからじゃあないぞ。
わしはいつも願っている。わしの本を読んでくれた子供たちに夢や希望が届きますようにってな
だからサンタの親戚って名乗っているのさ」

 「そうか~。じゃあ、サンタさんの親戚でもいいね」

 「うむ。だけどお前だって、明日からそう名乗れるんじゃぞ」

 「ええ~~」

 「お前が誰かに愛を伝えたい、何かしてあげたいって思った時。そこにはサンタさんがいるんだからな、
何もクリスマスイブともかぎらない。
 そうだ!来年は一緒にサンタさんやるかあ???」

 「なにそれ」

 「サンタ号に乗って子供たちにプレゼント配るんじゃよ!
 山ちゃんが毎年プロペラ機にプレゼント積んで孤児院を訪問しているんじゃよ。
 わしもサンタの格好をして協力しているぞ!
 来年のクリスマスイブはヨシュアサンタにプレゼント配ってもらうかあ?」

 僕はもう、うれしくてうれしくて。その晩なかなか寝付けないでいた。
山ちゃんのプロペラ機には赤いペンキでそりの絵が描いてあるんだってさ、
 その飛行機に乗ってクリスマスイブの夜に飛行できるなんて本物のサンタクロースみたいだ。

 「ほんと?ほんと?約束だよ。サンタジィジ!」

 「ああ。約束だ。お前がプレゼント配るんだからな!
 山ちゃんと今から計画立てておくからな......」

 それからしばらくして、
 母の退院とともに僕は元の家に戻された。
 けれど、父と母の間はすでに修復不可能で、
 僕の親権をめぐって二人が争うのを僕は不思議な気持ちで見ていた。

 僕が小学校に入学した頃には、 
 父は新しい事業に成功し、新病院の医院長となっていた。
 母は僕の親権を手離し、僕は父と一緒に再びサンタジィジの家に住み始めた。
 
 何年か後、遠い噂で母が益田さんと再婚したのが分かったが、
 母の再婚相手が四角四面な益田さんと聞き僕は大分安心した。
 真面目な彼なら、きっと母も幸せになれるだろう...。

 とにかくその頃の僕たち男3人だけの暮らしは、今から思うととても短かったけれど、
 サンタジィジのおかげでエキサイティングでファンタジックで愛と笑いに満ちていた。
 僕はこの暮らしがとても気に入り、いつまでも続くものだと思っていた。
 ジィジは十分齢を取っていたのだから、もうこれ以上齢をとらないだろうと子供の僕は思っていたのかもしれない。 

 最初、ジィジは軽い風邪だと言って、ベットで寝ていた。本当は肺炎にかかっていたらしい。
 その冬は大変に寒さがこたえ、うつるからと言う理由で、僕はジィジの部屋に入れてもらえなかった。
 そのまま会えなくなってしまうなんて、僕は思ってもいなかった。
 山ちゃんや、みよちゃんが急に来て、ジィジの部屋に入ったり、
 父の病院のスタッフがバタバタと走り回ったり、
 結局約束のクリスマスイブの夜に、ジィジはあっけなく逝ってしまった。
 冷たくなったジィジを見て、泣きじゃくる僕に、
 きっと天女のおばあちゃんが迎えに来てくれたんだよ...。と父が言ってくれた。

 サンタの約束はイブの日には果たされず、
知らぬ間にジィジに置いてけぼりにされた僕は泣き叫んでいた。

 
 「ジィジの嘘つき。空飛ぶそりに乗せてくれるって言ったのに。
一緒にプレゼント配ろうね。って言ったのに。何で死んじゃったんだよぉ…」

 
 お葬式の後。
 
 「三太からだ...」

 そう言って、山ちゃんが僕の手に、綺麗にラッピングされた紙の包みを渡してくれた。
 僕は暗い外に走りだし、雪の中でびりびりに紙包みを破いた。
 中から出てきたのは手作りの絵本。
 「暁のヨシュア」だった。

 「サンタジィジ...」

 絵本は何もかも手作りだった。下手な絵も字もサンタジィジのものだった。
 僕は急いで表紙を開いた。
 そこには翼を大きく広げた少年が空を飛ぶ姿が描かれていた。
 短い文章が添えてある。
 

 「 言の葉は翼となりて空を飛ぶ。
 君に大いなる翼を残そう。我が偉大なる後継者。ヨシュアへ 」


 僕はその晩、暁のヨシュアの絵本を読みながら眠った。
 
 夢の中では、大きな翼をもった僕とサンタジィジが、
空の上から、何か見えない沢山のプレゼントを子供たちの為にばらまいていた。

 
 サンタジィジは粋なやり方で僕との約束を果たしてくれたのかもしれない。

 暁のヨシュアの最終ページにもジィジの走り書きがあったのを発見したのは
僕が朝一番に父にこう宣言した後だった。

  「父さん。僕。ジィジのような作家になるよ!!」

          
  そして、

  最終ページに書いてあった言葉.
 
   
  「 その翼の名は - 自由 -  」  

  
 サンタジィジから僕への、
人生で最高で最大のクリスマスプレゼントだった......。



....................................完。.....................................
                             BY-RUBY


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by emeraldm | 2011-11-15 12:04 | 小説-サンタの約束 | Comments(2)

サンタの約束。NO10


僕は又、あの宇宙空間に浮かんでいた。

 でも、ジィジの車は何処にも無くて、
フランケン山ちゃんや女王みよちゃん、モーセの格好をしたサンタジィジと手を繋ぎ、
円になって空中で踊っていた。
 回りには星ぼしの替わりに、クロネコや魔女。
かぼちゃのジャックやハロウィンのお化け達が小さくなってダンスしていた。
 僕たちはグルグル回り、頭がくらくらした。
 何処からか、ジィジの元に天女が舞い降りた。ジィジは恥ずかしそうに天女の手を取った…。

 
 僕が気がついた時は、見慣れた病院のベッドの上だった。
 父と母とサンタジィジと医院長のジィジ。家族全員が揃っていた。
 
 僕は最初、何があったか分からずにちょこっと嬉しかった。
 家族全員揃うなんて今まで無かったんだもの。

 「おお。気づいたか、ヨシュア。ああ良かった」

 ジィジの声がした。

 「僕。どうしちゃったの?」

 声を出すと、頭がくらくらした。

 「幼稚園でインフルエンザを貰って来たらしい...。
 昨日、父さんから緊急連絡受けた時にはびっくりしたよ。お前は一晩中、高熱出して呻いていたんだぞ」
 
 父が言った。

 「とにかく、今日は大人しく休んでいるんだぞ。まだ熱が下がった訳では無いんだからな」

 「すまんのぉ。良明。ジィジがお前をパーティなんかに連れて行ったばっかりに」

 サンタジィジが小さく萎れてしまったように見えた。

 「困りますなあ。家の可愛い跡継ぎに、何かあったらどうしてくれるのですか?」

 医院長ジィジが言った。

 「そうよ。この子に何かあったら、私生きて行けないわ!」

 母はヒステリックにサンタジィジを睨んだ。

 「もう、お義父様には任せて置けないわ、やっぱり私が良明を引き取ります!」

 「いや。それはまだ無理じゃろ。お前は治療を続けなきゃならん」

 医院長ジィジが母の肩に手をかけた。

 「イヤヨ!あたしはどこも悪くないわ!!みんなして、みんなして私を悪く言うのね。
もう嫌よ!あなた達。私がいなくなればいいと思ってるんでしょう!
いつもいつも私ばかりが悪者。私は皆に嫌われているんだわ」

 母はそう叫ぶと、大きな声でおいおいと泣き始めた。

 「いいから、明子。分かった分かった。少し休もうな。
堅信君にはわしからよく言っておくからな。お前は安心していていいんじゃよ。
ほら、もうお部屋に帰ろうな......」

 母は医院長ジィジに肩を抱かれ、半ば強制的に部屋を出て行かされた。
廊下から、母が泣き叫んでいる声が聞こえた。

 「びっくりしたか?良明...。悪かったな、母さんちょっと気が立っているみたいなんだ。
お前が悪い訳じゃあないぞ。お前は心配せずにゆっくり休めばいい...。」

 父さんがやけに優しく言った。不思議なことに、父の目はいつもより柔らかい。

 「父さん。母さん。なんの病気なの?」

 「母さんは今、心が病気になっているんだよ。でも心配するな。
母さんには医院長が付いている。きっと治るよ」

 僕は嫌な感じがした。父があきらめたような、力が抜けてしまったようなそんな感じに見えたから。
サンタジィジの方を見ると、ジィジはいたたまれないような顔をしていた。

 「さあ。良明。ちょっと眠ろうな。まだ夕食には早すぎる。
病院の食事はまずいけど、我慢しろよ。時間になったら起こすからな!」

 父がそう言って、布団をかけ直してくれたので、僕は横を向いて眠った振りをした。
 
 しばらくして、本当に眠気が差し始めた頃。父とジィジの話し声が聞こえた。

 
 「堅信。悪かったのお。わしが良明を連れ出したばっかりに」

 「いいんですよ。パ-ティの招待状もらった時から、
良明連れて行くのは分かっていたんです。
 それに、明子とのことは、もうあきらめていますから......」

 「......父さん...」

 「何だ?堅信。」

 「父さんは何でお母さんのことをいなくなったなんて言ったんですか?」

 「え?」

 「父さんが嘘をつかなければ、僕は物語の世界をずっと信じたかもしれません。
多分、医者にはなっていなかった」

 「堅信!」

 「僕には母の思い出がまるでないんです。
どんな人だったか?なんで僕を捨てたのか?子供の頃ずっと考えていた。
 随分大きくなってから、本当は亡くなったって、僕は他人から聞かされたんです。
僕があなたのことを恨まなかったと思っていたのですか?」

 「..........すまん。堅信。悪かった。わしが全部悪いんじゃ、わしは」

 「そう!あなたが僕の人生をめちゃくちゃにした。
僕はあなたの言葉を信じることをやめたんです。
 母が天女でどこかに行ってしまったって、僕は小学生になるまで信じていたんですがね。
子供は時に残酷なもんです。同級生たちが言うことには、それは父さんが母さんに逃げられたと言う事だと、
お前の母さんはお前を捨てて逃げたんだと、そう言われたわけですよ。
 父さんが変わっているのでそうなったと、変なことばっかり信じているからお前も捨てられたんだと」

 「......」

 ジィジは黙ってしまった。きっと泣いていたのかもしれない。

 「違うよ!」

 僕は思わず飛び起きた。起きた瞬間、頭がズキーンと痛くなったけど、
言わずにはいられなかった。

 「違うよ。父さんはジィジを恨んでなんかいない!
本当は物語が好きなんだよ。ジィジが好きなんだよ!
 僕は知ってる。
 だって、僕をジィジのところに預けたじゃない!
パーティだってだまって行かせてくれたじゃない!」

 「良明」

 父が驚いた顔で僕を見つめた。
 僕の体は熱くなり、僕の息はぜいぜいと変な音を出した。
 ひどいめまいが僕を襲った。
 父は飛んできて僕を寝かせ、布団をかけた。
 それに抗う力を僕は持っていなかった。

 「父さん。僕はサンタジィジが好きなんだ。物語が好きなんだ。
 ジィジの事を否定しないで。僕を否定しないで。
 ジィジは夢だったパイロットをあきらめて、父さん育ててくれたじゃない。
 ジィジにとって、おばあちゃんは天女だったんだよ。本当だよ。
 ジィジにとって、おばあちゃんは死んでないんだ...。まだ死んでないんだ」

 「ヨシュア!」

 ジィジが僕の名を呼んだ。

 「分かった。分かったからお前は大人しく寝ていなさい」

 父さんが厳しい言葉で言った。
 僕は胸が、体中が苦しかったけれど父に反抗した。

 「分かってないよ。父さんは何も分かって無い!
 ジィジが守りたかったのは父さんなんだよ!
 ずっとずっと守って来たんだよ。
 だけど、父さんは僕を守ってくれなかった。母さんを守ってくれなかった。
 仕事、仕事、仕事。
 母さんがおかしくなったのも父さんのせいだ!
 ジィジを許してあげないなら、僕も父さんを許さない!」

 父は何も言わず黙ってしまった。
 サンタジィジも黙っていた。
 
 病室には僕のぜいぜいする息の音だけが聞こえていた。
 僕は怒りに全ての力を使い果たし、
 いつしか眠ってしまった。


...........................続く。...................................................

                            RUBY
 
by emeraldm | 2011-11-14 12:57 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

サンタの約束。NO9

 
 割れんばかりの歓声と拍手の中、
僕らは何が何やら分からずに、ハローウィンのお化け達に囲まれた。

 「おめでとうございます!先生!握手お願いします」
 「先生!暁のヨシュアの主人公はお孫さんだったのですか?」
 「ヨシュアちゃん!こっち向いて~写真撮らせて~!」
 
 黄色い歓声も野太い声も飛び交いもうしっちゃかめっちゃかだ。
 僕らはパチパチと写真を撮られ、もみくちゃにされ。
 僕のターバンはどこかに転がり、死神に顔を覗かれ、魔女に頭を撫でられ、
 黒猫に連れ去られそうになった。そしたら、誰か柔らかい感触が僕を包み込み、
 視界が赤一色に染まった。

 「およしなさい!はしゃぎすぎよ。この子は私があづかっているんだからね。
勝手にするのはよしてちょうだい!」
 
 みよちゃんが僕をドレスで包み込み、そのまま部屋の端に連れていった。
みよちゃんはしゃがみこんで僕と視線を合わせた。
 みよちゃんって、よく見るとかわいい顔をしている...。
 きっと若いときは美人さんだったんだろうな?っと思っていたら、額に手を当てられた。

 「大変。赤い顔してると思ったら、この子熱あるじゃない。あらま。どうしましょう!
やまちゃん!山ちゃんいる??この子に椅子を持ってきて」

 山ちゃんが椅子を持ってきてくれたので僕は座った。

 「山ちゃん。悪いけど、奥に行ってこの子の食べられそうなものとオレンジジュース貰ってきてくれる?
私はこの子に付いてるから」

 山ちゃんは何にも言わずに奥に引っ込んだ。山ちゃんて無口なんだな~。

 「良明ちゃん。ごめんねぇ。さんちゃん調子に乗っちゃうと駄目なのよ。
こんな小さい子をパーティに連れて来るなんてどうかしてるわ。
 堅信ちゃん。きっと怒るわね」

 「おばちゃん!お父さん知ってるの?」

 僕は驚いて尋ねた。この派手なおばちゃんと真面目で地味なお父さんがどうしても結び付かなかったからだ。

 「知ってるも何も、堅信ちゃんは私の甥っ子。私の姉の子供よ。
つまりあなたは私の孫どうぜんなの」

 ひえ~~~!赤の女王は父さんのおばさんって事はサンタジィジの奥さんの妹?
 へ?でもそしたら奥さんはどこ?あれれ行方不明だって父さんが?
 それにみよちゃんはジィジにメロメロだって言ってたよね。あれれ??

 「あの~あの~~。みよちゃんはサンタジィジの奥さんの妹なの?」

 「そうよ!」
 
 「みよちゃんはサンタジィジにメロメロなの?」

 「誰がそんな事言ったの?さんちゃんね。まったくもう!嘘よ、嘘。
私には山ちゃんてれっきとした旦那様がいるんだもの」

 そこにフランケン山ちゃんが、食べ物が乗った銀盆を片手に現れた。
 又々空いてる方の手でナイナイとしている。
 赤の女王はちらっとそっちを見るとしかめっつらをした。

 「さんちゃんがでたらめ言ったのよ!まったく、子供みたいなんだから。
姉さん聞いたらきっと怒るわね。
結局自分はもてるんだ~~~って言いたいだけなんだから」

 フランケンは首をすくめた。

 「え?じゃあ。山ちゃんがみよちゃんの旦那様で、みよちゃんのお姉さんがジィジの奥さんで~。
ええと~~。僕のおばあちゃんがみよちゃんのお姉さん!」

 「あたり~!あなた頭いいのね。とにかくお腹すいたでしょう。
具合悪くなかったら、これ食べてちょうだい。」

 みよちゃんは山ちゃんから銀盆をひったくって僕の前に出した。
乗っていたのはオレンジジュースと、見たことも無いような豪華なお子さまランチ!
旗まで付いてる。

 「うちのシェフに特別に作らせたのよ。味は保証付き。
フランス料理のシェフなのよ。いっぱい食べてちょうだいね」

 料理は小分けされていて、見た目はお正月のおせちに似ているけれど、
家で食べるデパートの高級おせちよりよっぽどおいしかった。
 僕は満足するまで食べた。オレンジジュースもしぼりたてでいつものものと味が全然違った。

 「いっぱい食べてね。いくらでもおかわりしていいのよ。
デザート持ってきてあげようか?」

 見た目と違って、みよちゃんはとってもやさしかった。
僕のおばあちゃんもこの人みたいな人なんだろうか?

 「みよちゃん。僕のおばあちゃんはどんな人だったの?」

 「う~ん。一言で言うのは難しいわね。でも、とてもやさしい人だったわ。
さんちゃんにぞっこんだったのは姉さんの方よ」

 「本当?」

 「本当よ。あんなに仲の良い夫婦は見たことがないわ」

 横で山ちゃんがうんうんと頷いていた。

 「じゃあ、なんでいなくなっちゃったの?」

 「えっ?」
 
 みよちゃんと山ちゃんが顔を見合わせた。

 「だっていなくなっちゃったって、父さんが......」
 
 「まあ。まだそんなことを......。
さんちゃんも、堅信ちゃんも、よっぽどショックだったのね。

......あなたのおばあ様はね。病気で亡くなられたのよ。お空の星になってしまったの。

 あれは堅信ちゃんが2歳になったばっかりだったわ。
 堅信ちゃんはお母さんのことを覚えてはいないはずよ。まだ小さかったんだもの。
 大きくなるまで、確かにそう言い聞かせたかもしれない。
 小さい子にお母さんの死を告げるのはつらいもの。
 でもそれ以上に、さんちゃんがショックだったはずよ。
 だから本当のことを言い出せなかったのかもしれないわね。
 あの後、さんちゃん会社やめちゃったもんね。
 あんなに誇りにしていたお仕事だったのに...。
 おじいさんがパイロットだったって知ってた?」

 「うん。聞いたよ」

 「そう。さんちゃんはね。しばらくショックで飛べなかったのよ。
それに堅信ちゃんがまだ小さかったし。
まさかそのあと会社を辞めて、童話作家になるなんて思ってもいなかったけど」

 「ほんとにびっくりだった」

 野太い声が言った。山ちゃんが急に口を開いたのだ。
 山ちゃんてしゃべるんだ!

 「俺と三太は同じ航空会社のパイロットだった。
まさかあいつが子供の為に会社を辞めるなんて思ってもいなかった。
あいつは飛ぶことが誰よりも好きなんだ。童話作家?信じらんないよ!
 でもあいつはやりとげたんだ。成功したんだよ。見て見なさい。良明君。
三太の回りにいる人達は全て三太の大ファンなんだよ」

 サンタジィジは会場の真ん中で、色とりどりな怪物たちに囲まれ、ただ今記念撮影の真っ最中だった。
サンタジィジの顔は誇らしげに輝いていた。
 僕はかっこいいなあ!と思った。
 
 いつの間にか音楽がスローな物に変わり、照明が暗くなった。
フロアーのあちこちで物の怪達が踊りだした。
ジィジの撮影会も解散して、ジィジが僕の方に歩いてきた。

 「ヨシュア!パーティ楽しんでるかい?ケーキ持ってきてあげようか?」

 ぼくは小さく首を振った。

 「ううん。食べたくない。それより眠いや。ちょっと...休ませて......。」

 ヨシュア、ヨシュア......。ヨシュア。
 遠くにサンタジィジの声が聞こえた。
 僕は、僕の体が椅子からゆっくり倒れて行くのを感じていた。




.....................続く。..............................

                   RUBY
 
by emeraldm | 2011-11-13 16:42 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

サンタの約束。NO8

 

 「これだわ...。さんちゃん。ダメじゃない?これチョコレートボンボンでしょ?」
 
 「まだ幼児なんだから飲酒は禁止だぞ!」

 僕の頭の上で誰かが騒いでいた。
 でも、頭がぼ~っとなって、よく分からない。

 「しまった!あの店にチョコボンボンがあったなんて!知ってたら全部わしが食っていたぞ!」
 
 サンタジィジの声がした。

 「それどこじゃないでしょ!さんちゃん。とにかく店にお入り。
山ちゃん手伝ってあげてね。良明ちゃん落とさないようにそ~っと、そ~っと」

 女の人の声?

 「んしょ」
 
 男の人の太い腕が僕を抱き上げたのが分かった。でもくらくらして目を開けられない。

 「うむむ。大きくなったな。ヨシュア。重いぞ!」

 サンタジィジは僕の足を持っているらしい。

 「よいしょ。よいしょ」

 二人は掛け声を掛けながら僕を運んだ。そうして何か柔らかいものに僕はそっと落とされた。

 「店中のクッション集めたわ。しばらくぼうやはここで寝かせておいた方がいいわね。
誰かお水持ってきてちょうだいな」

 女の人の優しい手が僕に冷たいコップを持たせてくれた。
僕はコップの水を少しづつ飲んだ。自分の体が熱いのとコップの水が冷たいのが分かった。

 どれぐらい経ったのか?僕の視界が霧が晴れたように開き始めた。
するとすぐ目の前にサンタジィジの心配そうな顔があった。

 「良明。大丈夫か?すまんのぉ。チョコボンボンが入っていたなんて知らなかったんじゃ」
 
 サンタジィジは柄にもなく、情けない顔をしていた。

 「うん。もう大丈夫」

 僕は嘘をついた。ほんとはまだぼっとしてたんだけれど。

 「まったく!せっかくのパーティが台無しじゃない。さんちゃんのだからいいけどさ。
それにしても、そのカッコはどういうつもり?」

 ジィジの隣に、どう見ても若くないだろう女の人が立っていた。
 その人は胸の開いたハートの女王様みたいな赤いドレスを着て頭をタワーのように結い上げている。
ジィジのカッコに文句言うなら、その人のカッコもどうなんだろうか?ドレスに合わせたらしい真っ白塗の厚化粧に真っ赤な口紅。その白塗りが額のしわと目じりのしわを強調している。
 
 「みよちゃん。まあ、そう言うなよ!何事にもハプニングは付き物じゃで。
それにこの衣裳には訳があるんじゃよ。まあ、見ておれ!」

 「しょうがないわね。まあ、いいわ。
山ちゃん!音楽流してちょうだい!」

 女王みよちゃんに命令された山ちゃんと言うのは、なんとフランケンシュタインだった!
山ちゃんはふらふらと金属製の水仙の花ような機械の所に行き、何やらごそごそやっていた。
 しばらくして、ジャズの軽快な音色が流れ始めた。

「さ。もう少しでお客様達が到着するわ。さんちゃん!今度はちゃんと挨拶してね。
いつもハチャメチャになっちゃうんだから!」

 そう言って、赤い女王様は忙しそうに行ってしまった。
サンタジィジはみよちゃんに見えないように僕にウィンクした。

 「みよちゃんは気が強そうじゃがな。あれでなかなか優しい子なんじゃよ。
それにわしにメロメロなんじゃ。うひひひ」

 いつの間にかサンタジィジの後ろに来ていたフランケン山ちゃんが、ナイナイと手を振っていた。
思わず僕はぷっ!と噴出した。
 
 「みよちゃんと山ちゃんはわしの古くからの知り合いなんじゃ。
みよちゃんの初恋の人は多分、わしじゃったんだからな」

 後ろの山ちゃんを見ると、やっぱりナイナイしてる。そして自分のことを指さしてる。
何をやってるのだろう?この人達??

 「山ちゃんは~?」

 試しに聞いてみた。

 「おお。山ちゃんはみよちゃんにぞっこんだったからな~。かわいそうに、片思いじゃ」

 フランケンが後ろから殴ろうとしているのを見て、僕は我慢できなくなって大笑いした。
サンタジィジが後ろの山ちゃんに気づき、取っ組み合いになる寸前、みよちゃんが帰って来た。

 「何してるの?二人とも。いい加減にしてちょうだい!お客様が見えたわよ。
ちゃんとスタンバイして!!」

 一喝されて、子供のように大人しくなった二人を見て、僕は又大爆笑!!
 
 入り口からどやどやと人の気配がした 。驚いた事に入ってきたのは、
幽霊・魔女・コウモリ・妖精・大鬼・子鬼・天使と悪魔・かぼちゃのお化けetc ...。
 なんか物凄い数いるような??
 あれ。僕まだ夢見てる?
 
 赤の女王みよちゃんが、くるくる回るミラーボールの下のステージに立ち、マイクを片手に叫んだ。

 「さあさあ。皆様。奥に詰めてくださいませね。
 今宵はハロウィンパーティ&来栖三太の朝月新聞児童文学賞受賞パーティでございます!
 おいしい食事もご用意しております。どうぞごゆっくりお楽しみ下さいませ!
 その前にご挨拶を、来栖 三太 82歳! どうぞ~!」

 割れるような拍手が起こった。
 その中を堂々とサンタジィジがステージに上がった。
 あれ?いつもと違って威厳があるような。

 ピィ~ピィ~!と誰かが口笛を吹いた。
 ジィジは両手を広げて天を仰いだ......。

 「皆様!お忙しい中。
 わしの作品、暁のヨシュア。
児童文学賞受賞パーティにお越しくださいまして誠にありがとうございました。
 今日は無礼講。ごゆるりとお楽しみ下さいませ。
そして、くしくも今日はハローウィン!......。

 わしは今日、モーセじゃ。皆の者、良く聴くが良い!
 わしの後継者。来栖 良明。
 孫のヨシュアじゃ!皆の者。拍手~~~!」

 満場の拍手喝采とともに、ステージライトが僕に当たった。
 ぼくは驚いて固まってしまった。

 暁のヨシュア?何のこと??

 誰かが僕をステージのジィジの元へと連れて行った。
 ジィジは僕を片腕にかかえ、満足そうに微笑んだ。




...............................続く。.............................

                          BY-RUBY

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ハロウィンパーティー Petr Kratochvil

 
by emeraldm | 2011-11-12 16:07 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

サンタの約束。NO7

 
 サンタジィジはめずらしく寡黙に運転していた。
 久々の運転で緊張していたのか、これから行くと言う何処かに心が飛んでいたのか
僕に分かるはずもなかった。
 しかし、とんでもないアラブ人のような恰好をして真面目な顔して運転している老人は
どう見ても奇妙で、滑稽で......。でも、愛すべき僕のジィジに変わりなかった。

 「ねえ。ジィジ。これからどこに行くの?僕の名前の秘密って何?」

 僕はストレートに尋ねてみた。ドキドキよりも不安の方が大きくなって来たからだ。

 「まあ。待て。ヨシュア!着いたらすぐに分かるって。それより腹すいてないか?」

 ジィジは振り向きもせず運転に集中しながら言った。
  運転...。大丈夫だろうか?

 「うん。ちょっとお腹すいた」

 「そうか?んじゃ、そこの扉開けてごらん。中にクッキーとチョコレートが入ってるぞ。
もう少しだからお菓子をつまむといい。でも、食べすぎるなよ。
これから行くとこには御馳走が待っている。今まで食べた物の中で一番おいしい御馳走だぞ!」

 「ほんと?わ~い!お菓子ちょっとにしとくよ」

 御馳走と聞いて、僕は又ワクワクし始めた。
ダッシュボードを開けると、小さいチョコレートの包みやクッキーがいっぱい入った袋が見つかった。
ビニール袋にはアソートって書いてある。あ。派手な色のキャンディーも入ってた。

 「この間町に行った時買って置いたんじゃ。そこの店はな、そのビニール袋一杯に店にあるお菓子を何でも詰め込んでいいんじゃよ。夢のようじゃろ?そこのキャッチフレーズが効いている。
 よくばりさんでも大丈夫!アソートお菓子店!って。
 わしはその看板見てグッときてしもうてな...。魔法の菓子店かと思ったよ。
 どれ!わしにもキャンディおくれ!」

 僕は中に入っている、赤白の渦巻きの棒キャンディーを取り、ジィジの口に入れてあげた。
 ジィジはもごもごと器用に棒キャンディを操り、煙草をくわえるように口の端に咥えたりしていた。
 僕は中のチョコレートの包みを開けた。チョコレートは小さくって丸くって、口に入れるとゼリー状の中身が飛び出し、甘い花のような良い香りと、とろけるような甘さが広がった。それになんだか胸のへんがぽっと暖かくなった。

 「これ。おいしいね。魔法のお菓子店だね。」

 「そうじゃろう?ヨシュアも一度連れてってあげような。
その袋に、何でも好きな物詰め込んでいいんじゃよ。
わしの子供のころにもそんな店があったら良かったなあ」

 ジィジはちょっと悔しそうな顔をした。ジィジなのに子供のようだな。と僕はなおさらジィジが好きになった。
3つ目のチョコレートを開けた時、ジィジがふいに言った。

 「ヨシュア。ジィジがパイロットだった頃の話をしてやろうか?」

 僕の目は輝いた。

 「うん!聞きたい。聞きたい。パイロットなんてジィジ。カッコイイ!」

 ジィジの顔がほころんだ。

 「よし、今宵は特別に聞かせてしんぜよう。
ヨシュアは第二次世界大戦のことは知っているか?」

 「よくわかんないや」

 「日本が世界中と戦った戦争じゃ。わしはな。16歳で予科練に入ったんじゃよ」

 「よかれん?」

 「言うなればパイロットになる訓練校だな。とてもきつくて大変な訓練じゃった。
毎日殴られてぼこぼこにされとった」

 「え?殴るの?」
 
 「その頃の教官は厳しくてな、そんなの当り前じゃった。わしはパイロットになりたくって
それでも訓練に耐えておった。わしの回りの訓練生は全てそうじゃったよ。
あの頃、日本の男子はパイロットに憧れておってのう。
今でいうヒーローじゃな。ヒーローは強くって、いつでも勝ち続ける。
わしもそう思っていたんじゃよ。だけど......」

 「だけど?」

 「日本は負けた。予科練も解散した。最後はとても悲惨なものだったよ。
 今はまだその時の話をする気はない。いつかお前が大人になったら話してあげよう
 ......。
 とにかくわしは生き残った。友人のほとんどが死んでしまったのに、わしは生き残った。
 満足な飛行訓練もされず、中途半端なままで世間に放り出されたかたちになってしまった。
 わしは家族の為に働き、再びパイロットになるために勉強した。
 戦後初めての日本人パイロット養成校、航空大学校に再び入学した時は、わしは26歳になっておった。
 そして自分の夢をかなえるべく、勉強に勉強を重ねて国際線のパイロットになったと言うわけさ」

 ジィジの話が全て分かった訳では無かったけど、とにかくジィジが苦労してパイロットになったのが
子供の僕にもよく分かった。でも、なんとなく眠くなってきた。
 僕は3個目のチョコレートを口に入れた。

 辺りは暗くなって街灯もつき始め、車のヘッドライトが行き交った。
 時々ヘッドライトに浮かぶジィジの横顔がどこか遠くを見ているように僕には思えた。

 「で?何で童話作家になったの?」
 
 僕は目を擦りながら言った。とっても目が重い。

 「そりゃ、天使を見たからじゃ!」

 「へ?」

 僕の目がいっぺんに開いた。 
 え?何だって??

 「天使じゃよ。そう言えば魔女も見たなあ!」

 「うそ!!」

 「嘘じゃないぞ!フライトの途中でやつらと出会ったんじゃよ。
 堅信のママは天女だし......。」

 「そ、そ、そんなの聞いてないよ?」

 「ありゃ?ヨシュア。物語の世界を信じないのか?あんなに熱心に読んでいたのに?
そうか!それじゃあ、あれは何だと思う?」

 サンタジィジが指さした方向を見てみると、いつの間にか車の横に箒に乗った魔女が並走していた。
 
 「え?え~~~??」
 魔女はこっちを見て、恐ろしげな顔でニッと笑った。大きく笑った口の中は歯が少ししか無かった。
 「わっ!」
 僕は仰天してしまった。
 急いで目をそらすと、そらした先には小さな羽の生えた白っぽい妖精がいた。
 いつの間にか車の中に入って来ていたらしい。
 妖精は金色の粉をまき散らし、
 「ハロ~!」
 と言った。
 気が付くと車の外の町並みは消え、替りに星々の浮かぶ宇宙空間を走っていた。
 遠くに天使のようなものが浮かんでいた。
 僕の頭はぐるぐると回転し、それから何も見えなくなった。


....................続く。................................................
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by emeraldm | 2011-11-12 10:36 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

サンタの約束。NO6

 
 僕たちが家を出たのは、結局夕方。5時を回ってからだった。
 父さんが持ってきたテキストの宿題をやっていたのと、
サンタジィジがあれこれと、僕のお出かけ服を探していたからだ。

 驚いたことに、サンタジィジの家には僕にちょうどいいくらいの男の子の服が沢山あった。
 ジィジの家の屋根裏に部屋があったのも驚きだったが、そういえば周りの家より
サンタジィジの家はとんがっていた。
 屋根裏部屋は2階の廊下の隠し扉から上がれるようになっていて、
隠し扉の階段は普段は大きなタペストリーに隠されていた。
 その隠し扉の秘密を見た途端。僕の心臓はドキドキと高鳴った。

 「ジィジ。素敵すぎる。なんで父さんはジィジの家を出て行ったんだ?
こんなにカッコイイ家なんてないのに!」

 僕の瞳はキラキラと輝いていたに違いない。
 サンタジィジはかわいい孫の賞賛にくしゃくしゃな笑みを浮かべて嬉しそうにした。
 
 「そうじゃろ。ここは堅信のお気に入りの部屋じゃったんだぞ!
あいつは何が不満だったのだろうかのう?」

 僕は屋根裏部屋へと続く階段を飛ぶように駆け上った。
屋根裏部屋にはきっと魔法があるんだと。サンタジィジは魔法使いに違いないと、
 僕はワクワクと興奮していた。

 屋根裏部屋は思っていたより広かった。
 そして思っていたより明るくきれいで整頓されていた。
 そう言えば、ジィジの家を外から見ると、とんがり屋根の下に丸いステンドグラスが付いていたのだが、
そのステンドグラスがここでは丸窓になって、外から色々な光を取り込んでいた。
 小さな色ガラスを通した光が、赤青緑黄白色となって部屋に置いてある家具類のあちこちを照らしている。
ジィジは大きくて重そうな洋服ダンスの前に行き、その扉を開けた。

 「ほら。パーティに行くにはぴったりの服がいっぱいあるぞ!どれにしようかなあ!」
 
  ジィジが僕の服を選んでいる間。僕は屋根裏部屋を探索していた。
箱に入れられた色々なものが積んであったり、洋風のランプや、骨董品が置いてあったり。
ソファやテーブルまである。
ほとんどは布やビニールがかけられて縛ってあるけれど、
小物類は家具の上に無造作に置いてあった。
 
 僕はその中に舶来製の革ボディの万華鏡を見つけて、丸窓のステンドグラスに向けた。
 万華鏡は鏡を組み合わせただけのシンプルな物だったけど、
ステンドグラスに向けるとすぐに僕の視界に色ガラスの美の世界が飛び込んできた。
 
 「うわあ!」
 
 僕は夢見心地で万華鏡に夢中になった。
万華鏡を回して見たり角度を変えたり。魔法の色の世界は自由自在だった。
 赤青緑白の星々が回る宇宙。エメラルドシティや深海の謎。
 溶岩の中、火の鳥の世界。天使が舞う天上の白...。

 「これこれ、あんまり夢中になると酔っぱらうぞ!」

 ジィジが言ったので、僕は万華鏡を下してジィジの方を振り向いた。
振り向いたとたん!とてもいい物を発見した。
 最初、そのものは僕の視界に赤い色として飛び込んだ。
 ジィジの横。少し斜め上の壁のあたりだ。
 僕は万華鏡を置き去りにして、その物にまっすぐに突進して行った。
 ジィジはその勢いに驚いたのか、さっと身をかわし、僕を通してくれた。

 「これ。これ何??ジィジ。」
 
 驚いていたジィジの顔に笑みが戻った。

 「ヨシュア。それはね。プロペラ機と言うものじゃぞ!
ジィジは昔、パイロットだって言ってなかったかな?」

 確かにそれは赤いプロペラ機の模型だった。
しかもナイスなボディ。僕大すきだ!
 いいや、それより何より、ジィジ??今なんて言った?
 
 「パ?パイロットって言った??」

 「言ったぞ!父さんに聞いてなかったか?
サンタジィジは作家になる前、パイロットだったって?」

 おっどろき~~~!これは参った!
 サンタジィジってやっぱナイスだ!かっくいい。
 僕のジィジは世界一かっくいい!僕は本気でそう思った。

 
 ジィジが僕の為に変なお出かけ服を選び出すまではね...。

 んで、結局。時間かかって選び出した服は、女の子が着るブカブカのワンピースのような代物だった。

 「うわ~~~。僕嫌だ。これ着るの~~」

 「いいからいいから。楽しいとこに行くんだから我慢しなさい。ジィジも同じの着るからさあ」

 僕はもう涙目。二人して、ぶかぶか白いワンピースを着た姿は.....ウェェ。
 そしてなんだかわからないうちに、インド人が頭に乗っけているターバンのような帽子と、
長い派手な色のベストを着せられ、裸足にサンダルの姿で上から黒いマントを又着せられ、
サンタジィジの運転する黄色いワーゲンに乗り込んだ。

 「ほんとにこんなカッコで出かけるのお?」
 
 僕は念を押してみた。
 僕とほとんど同じ恰好をしているサンタジィジは満面の笑みで答えた。

 「もちろんだとも!ヨシュアよ。さあ出かけるぞ。用意はいいか?」

 黄色いフォルクスワーゲンのエンジン音が轟いた。

 「さあ!出発じゃ若者よ。今宵はお前の社交界デビューの日だからな。
みんな首を長くして待っておるぞ。ふぉっふぉっほ 」

 
 社交界デビュー?みんなって誰のこと??
 僕は恥ずかしさも忘れ、運転するサンタジィジの横顔をあきれて見つめていた。
 それが僕たちの不思議な夜の始まりであった。



......................続く。...............................
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by emeraldm | 2011-11-11 15:27 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

サンタの約束。NO5

 
 やっとこさ、幼稚園が終わり、お迎えが来たと思ったら父の秘書の益田さんだった。
父は会議で忙しいらしい。
 益田さんの車はデッカイ古くさい車で、父のジャガーの方が僕は好きだったけど、今日は返って益田さんが来てくれた事が嬉しかった。
 父に又何か余計なことを聞かれるかもと、お迎えが少し怖かったからだ。
 
益田さんは大きな男の人で顔が四角く、ついでに性格も四角くていかつい人だった。
短く刈り込んだ頭の形もそう言えば四角い気がする。
 それなのになぜか目だけが線のように細く。僕は思わず見入ってしまうのだった。
ぶっちゃけて言えば僕は益田さんの顔がとても好きだった。
 線の様な目はいつも優しく控え目で、四角く四面の性格は真面目さゆえであった。
 子供は不思議と善人を見分ける。

 「坊っちゃま。お迎えに上がりました。お父様は急な会議に出席されましたから、わたくしめがお祖父様の元にお送りするよう言いつかっております。」 
 
 僕は黙って益田さんの車の助手席に腰をかけた。早くジィジの元に帰りたかった。

 帰り道の途中。不意に益田さんが僕に尋ねた。
 
 「坊っちゃまはお母さまに会いたくは無いのですか?」
 
 僕は考え込んでしまった。母の具合は心配だけれど、そう言えば会いたいって今まで思わなかったな〜。
何でなんだろう?

 「明子様...。お母様がぼっちゃまに会いたがっております。
このまま、お母様の元にお連れいたしましょうか?」

 僕は考えた。母には会いたい。でもジィジとの約束もある。

 「うん。又今度ね。今僕忙しいんだ」

 益田さんは返事の替りに頷いたきりで、それ以上母の話はしなかった。
替りに今日あったことを色々聞いてきたのだが、特別面白い事も無かったとだけ言った。
 今思うと、あの頃の僕は幼稚園児にしてはませていたのか?クールだったのか?
自分でもかわいげが無かったなあと思う。
 大人の思いは推し量ることは出来なかったが、それでも、自分の思いだけには正直だった。

 やっとジィジの家に着いて、僕は車のドアを開けるなり飛び出した。

 「サンタジィジ~~~!帰って来たよ~~~!」
 
 ジィジも飛び出して来た。僕はジィジの腰に飛びついた。

 「お帰り。早かったな!よし。ご褒美におやつ作って置いたからな。早く家の中に入って手を洗っておいで」

 ジィジは僕の頭をなでると、腰のとこをポン!と押して家の中に入るよう促した。
そして自分は車の脇に立っている益田さんの所に行き、なにやら大人の話をしているようだ。
 僕は素直に家の中に入り手を洗った。
 
 大人の話...。
 僕にジィジと益田さんが大人の話をしているのが分かったのは、
父と母がよくそんな感じで話していて、そんな感じとは、子供が入ってはいけないと言う雰囲気で
二人の目は笑っていなくって何か秘密の話なんだけれど大抵楽しくない話...。
 僕は楽しくない話は大嫌いだから、特別大人の話に割り込んで聞かせてもらいたいとは思わないけれど
そんな態度を大人たちが取ることにとても不安を覚えた。
 自分の知らないとこで何か嫌なことが進行している。そんな気がしたからだ。

 ちょっとして、サンタジィジはもどって来た。
益田さんは帰ったそうだ。

 「明日から彼が君を送り迎えするそうだよ。堅信は今忙しいそうだ」

 ジィジが真面目な顔で言った。
 
 「そう」

 僕はそれだけ言った。父が忙しいのは今に始まった訳じゃあない。
母だって、なんだかんだと家を出ることが多かった。
 母はショッピングも観劇もお習い事も大すきだった。
 今まで僕の面倒を見てくれていたのは家政婦の田中 真理さんで、
僕はマリちゃんと言って実の姉のように慕っていたんだけど、28歳になって結婚退職してしまった。
 今でもマリちゃんは時々僕に会いに来てくれるが、最近赤ちゃんが出来たので会える回数が減ってしまったのが悲しかった。
 マリちゃんがいなくなってから、新しい家政婦の長谷部さんと家庭教師の金子さんが来たんだけれど、僕はこの人達が嫌いだった。
 なんて言うのかな?この人たちはそれぞれ仕事のプロらしくって、きっと父と母には満足できる人たちだったんだと思うけれど、子供の僕にはその潔癖さ、完璧さが鼻についたんだ。
 時間時間で何かのスケジュールに追い回され、おやつの時間まで1分1秒間違わない生活。
 子供の僕には過酷すぎたのだと思う。
 僕の大すきなマリちゃんは少々ずぼらで抜けていて、母にいつも怒られてはいたけれど、
僕には大切な共感する心というものを持っていた。
 サンタジィジもマリちゃんと同じ心を持っていると僕は思った。
 母がいないあの家に一人残されず、僕は幸運と言って良かった。
 サンタジィジはいつでも僕の味方だったんだから...。

 「ヨシュア!おいで。おやつのホットケーキ食べよう!
今日はスペシャルバージョンでアイスクリームいちごソースかけじゃぞ」

 ふぉっふぉっふぉ!と小気味よく笑うサンタジィジの所へ、僕は急いで駆け出した。
 
 「わ~~~い!」

 ホットケーキは上出来で、アイスクリームもいちごソースも絶妙だった。
こんなにおいしいおやつは久しぶり。
 僕がホットケーキに夢中でかぶりつく姿を見て、サンタジィジが幸せそうに微笑んだ。
 ジィジが幸せそうなんで、僕もとっても嬉しかった。
 僕は今幸せなんだな~となんとなく思っていた。



................................続く。.................................
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by emeraldm | 2011-11-11 09:09 | 小説-サンタの約束 | Comments(2)

〜小説〜サンタの約束。NO4

 
 「よし!ヨシュア。今日は早く帰って来るんだぞ。出かけるからな!」

 朝食の目玉焼きをお皿に乗せながら、
いきなりサンタジィジが言ったので、僕はきょろきょろとしてしまった。

 「もしかして、僕に言った??」

 何かの聞き間違えじゃあないかと思ったんだ。

 「ここにはお前しかおらんだろう!お前の本当の名はヨシュアなんじゃからな!
だいたい、堅信にそう言ったのに、勝手にヨシアキにしてしまったんだから間違った名前なんじゃ」

 いきなり自分の名前が間違っていると言われてもピンと来ないが、ヨシュアという名もかっこいいなあ。

 「突然な。結婚したって言った後に、子供が生まれたって言うんだぞ。急にだぞ!
しかも電話口でだ。だからその子供にヨシュアと名付けろと言ったんじゃ。
電話口だから聞き間違ったんだろうか?」

 なるほど...。父さんは半分だけジィジの話を聞いたわけだ。
 僕は目玉焼きをほおばりながら頷いた。

 「ヨシュアの由来を聞きたくないか?」

 サンタジィジの目が光った。これは何か面白そうな予感。
僕はごくんと目玉焼きを飲み込んだ。

 「知りたい。知りたい。ヨシュアってかっこいい名前だもん。正義の味方の名前みたいだ」

 ほっほっほ。と、本物のサンタさんみたいな高笑いをすると、
サンタジィジは人さし指を立て、僕の目の前で左右に振った。

 「それは帰ってからのお楽しみじゃ。幼稚園から寄り道せずに真っ直ぐに帰って来るんだぞ!
そしたら由来を教えてしんぜようぞ!それに、楽しいとこに出かけるのじゃからな」

 そう言って僕にウインクした。
 
 今日は幼稚園初登校の日。
本当は行きたくないんだけど、父さんが怒るからしょうがない。
朝から暗くなっていた僕の心にふつふつと好奇心が湧いて出てきた。
まったく、サンタジィジは楽しいの天才!遊びの神様だ。

 「うん!僕なるたけ早く帰ってくるよ。でも、どこに出かけるの?」

 「ふふふ。それも内緒じゃよ。秘密は楽しいものじゃからな。
あ。それから父さんには言うんじゃあないぞ。これから出かけることも、ヨシュアのことも。
二人だけの秘密だからな!」

 僕は今からワクワクしてきた。白百合幼稚園初登校の不安より、帰ってきてからの秘密の行動の事が気にかかって、何かとんでもないいたずらを思いついちゃったみたいな気持ちになっていた。
ジィジと一緒にするいたずら。父さんの知らないいたずら。
そして僕の名前の秘密...。

 ブロロロ。車のエンジン音が聞こえ、ジャリジャリと砂利の踏まれる音。バタンと扉の閉まる音が聞こえた。
 父さんだ。 

 「良明!仕度は出来ているか?」

 家の外から大きな声が聞こえた。

 「は~~い。今行きます」

 僕は返事をすると、急いでナプキンで口をぬぐい、サンタジィジにピースサインをしてから玄関に向かった。
家を出るとき、ジィジが声をかけてきた。

 「ヨシュア。約束じゃからな。待ってるからな!」

 僕は返事の替りに後ろ向きのまま右手を挙げた。そうして振り向かずに玄関の扉を開け出て行った。
ヒーローってクールなもんさ!

 「良明。早くしろ。おくれるぞ!」

 父が扉を開けて待っていたので、助手席に飛び込んだ。
車が発進してから振り返ると、サンタジィジは玄関先まで出てきて手を振っていた。
僕も思い切り振りかえした。ちょっと涙が出そうだった。

 「良明...。父さんなんか言ってたか?」

 運転しながら父が聞いた。

 「ううん。何にも」

 僕は生まれて初めて嘘をついた。男と男の約束だからね。

 
 僕はその日。帰って来るまでずっと上の空だった。
案の定、白百合幼稚園はつまらなかった。型通りのお遊戯。くだらない勉強。
何も考えていない子供達。やけに甲高い声の先生。
 ただ一つ僕の興味を引いたのは、書棚にある童話や絵本だけだった。
僕は本の中でだけ自由な子供だった。
 実際は親の言うなりのか弱い子供だったけど、本の中とジィジの前でだけ、僕は本当に生きていた。
幼稚園が終わる1時半になるまで、僕はひたすら本の中に埋没していた。

.......................続く。...........................

                     RUBY.

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by emeraldm | 2011-11-10 16:26 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

〜小説〜サンタの約束。NO3

 
 
 僕たちの幸せな乱痴気騒ぎは、3日と続かなかった。
 父が幼稚園の入学を決めてきてしまったからだ。
 それまで父は家庭教師をやとって僕に勉強をさせていたのだが、
サンタジィジが家庭教師を家に入れるのを頑なに拒んだ。
 じゃあ、と言う事で急遽、白百合幼稚園に中途入学が決まったのだ。
 白百合幼稚園はその地域で有名なお受験校で、親が裕福なのは勿論のこと、
その知名度、社会貢献の割合など子供にはまったく関係ないものまで審査される有名校。
入学すれば大学までストレートという半面。親の七光り校と言う悪名もついている。
 サンタジィジはもちろん反対したが、親の権限という事で押し切られてしまった。

 「あんなお光学園に入れるぐらいなら、わしが勉強教えてやった方が良明の為だ。
お前がそもそも医者になれたのも勉強教えてやったわしのおかげじゃないか!」

 サンタジィジはぶつぶつと文句を言った。

 「いえ。父さん。良明を父さんに任せていたら余計な知識が増えるだけです。
なんですか?この格好は??私の息子が屋台のお面に風呂敷背負って...なさけない...」

 僕は恥ずかしいものを見るような父さんの目から逃げるようにジィジの後ろに隠れた。
父が来た途端、光の剣は力を無くし正義の味方は僕から離れた。

 「堅信。本来子供とはこういうものだぞ!お前もこの年のときはこうだった。
わしは今でもこうじゃがな」
 
 そういうと、サンタジィジはふふふと笑った。
 サンタジィジも僕と同じお面を頭に載せていた。ジィジのは怪獣だったけど...。

 「とにかく、良明は私の子供です。入学の手続きは終わりました。
明日から朝9時に迎えに来ますのでちゃんと仕度させておいて下さいね。
帰宅は2:00頃ですからそしたら午後から3時間テキストで勉強させてください。
 父さんには悪いけど、明子の容体がすぐれません。私も新しい病院の建設事業で忙しい。
良明をよろしくお願いします。この子も父さんが好きなようだ」

 その時、父の目が少し笑ったように見えた。

 父さんが帰った後。
昼食にオムライスを焼いてくれながら、サンタジィジが呟いた。

 「あいつ。子供の頃の事まだねに持ってるな。」

 「父さん。僕の事、怒ってるの?」

 サンタジィジはオムライスを焼く火を止めて僕の方を振り向いた。

 「いいや良明。あいつが怒ってるのはわしにじゃよ。」

 「なんでジィジの事怒ってるの?」

 「さあな。どうしてじゃろうな?」

 サンタジィジが悲しそうなので、僕はそれ以上聞かないことにした。
 オムライスは微妙にしょっぱかったが、僕はそれも言わないことにした。
サンタジィジの心がどこかに飛んで行ってしまっているように思えたから。
 サンタジィジはぼおっとどこかを見つめ、オムライスはフォークでぐちゃぐちゃにかき回されて口をつけられることは無かった。
 ラジオが昼間なのにブルースを流していた...。

......................続く。...........................
                            BY-RUBY.

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by emeraldm | 2011-11-10 10:56 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

〜小説〜サンタの約束。NO2


 僕とサンタジィジが出会ったのは、実は僕が3歳の頃だった。
 父の堅信は三太じいちゃんと折り合いが悪く、医大卒業とともに家出したらしい。
 それから勤め先である大病院の医院長の娘と、つまり僕の母さんと結婚するまで三太じいちゃんに連絡しなかった頑固な父だけど、僕が生まれて考えが変わったのか?それともただの気まぐれか?
七五三のお祝いに初めて僕を三太じいちゃんに引き合わせてくれたのだった。
 もっとも、僕の良明と言う名もサンタジィジが名付けてくれたのだから、父も本気で縁を切りたかったわけでもないだろう。

 とにかくサンタジィジはえらく喜んだ。ぐれた息子が素直な幼児となって現れたとばかり、僕を甘やかした。
 世界中のどんなに高価な絵本でも取り寄せ、外国語の何語であっても自ら翻訳し、嬉々として幼子の僕に語って聞かせた。
 そんなサンタジィジを父が許すはずもなく、僕はたまにしかサンタジィジと会えなくなった。
 
 僕はサンタジィジが大好きだった。
どう見ても小さい日本人の体格なのに、自分のことをサンタクロースの親戚だと言い放ち。
白い口髭といつも赤いシャツを着ている変わったおじいさんだけど、サンタジィジは偉い人らしかった。
 なぜなら、時々来る編集の人がペコペコお辞儀しているのを見かけたし、
日本ファンタジーノベライズ大賞というものを受賞していた。
 僕のジィジは童話作家でSFファンタジー作家でもあったのだ。

 僕はサンタジィジに会えるのをいつも心待ちにしていた。
 もう一人の、ジィジ。母の父親は医院長だったけど、サンタジィジとは比べ物にならないほど平凡な人物で、
僕の顔を見ると勉強しろ将来お前が跡継ぎなんだからなとしか言わなかった。
 そんなお医者様の長老より、僕は断然!サンタジィジが好きだった。
 でも、サンタジィジに会えるのは月に1度だけ...。
 あの赤いとんがり屋根の白壁のお家に父が連れて行ってくれる時だけだった。

 5歳になる頃。
 僕達に転機が訪れたのは、母が病に倒れてからだった。
 母は難病を罹ってしまい。医者の父も祖父も手の施しようが無かった。
 母の母はとっくに亡くなってしまっていたので、僕の面倒を見れる者が回りにはいない。
 父も祖父も病院の経営でてんてこ舞い。さらに難病の母を見なければならなかった。
 病気の母の強い要望で、誰か他人に預ける訳にはいかなくなり、
最後の頼みの綱がサンタジィであったのだ。
 思えば、あの頃。父はどんなに苦々しい気持ちで僕をジィに託したか?
 僕は、母と父には悪いけど、サンタジィジに会えて大満足!
しかも母が入院中はずっとサンタジィジの家にいていいんだって。
 信じられる?この幸運??
 
 「父さん。良明をお願いします。くれぐれも変なこと教えないように...。
この子は病院の跡継ぎなんですからね。1日3時間はあのテキストで勉強させて下さいね」

 「おお!分かってるぞ。お前の勉強もわしが見てやったんだからな!
大船に乗ったつもりで任せなさい」

 父は疑い深そうに細い目でサンタジィジを見つめると、僕を置いてジィジの家から出て行った。
 父が玄関の扉を閉めた途端。サンタジィジはくるりと僕に振り返り、ニタッと笑った。
 僕もニタッと同じように笑い返した。
 
 その日。僕たちは二人して誕生パーティのような騒ぎだった。
 完全な自由。解放だ!!
 叫んでも、吠えても、ソファをめちゃくちゃに飛び回ってもサンタジィジは怒りはしない。
 だって自分も同じことしてるんだもの。
 
 僕たちは宅配ピザとコカコーラで乾杯して、夜遅くまで思う存分絵本を読んだ。
 サンタジィジは身振り手振り、時には俳優のように動き回り、物語を語ってくれた。
 大きな恐竜やら恐ろしげなサタンは影絵となり、僕は震えあがり、
正義の使者は僕自身で、悪者を光の剣でやっつけた。

 僕たちは年のうんと離れた親友だった。
 僕たちを引き離せるものは何もないと、その時僕らは思っていた...。


.........................続く。............................

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by emeraldm | 2011-11-09 15:47 | 小説-サンタの約束 | Comments(0)

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