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カテゴリ:小説- 赤髪のメテオール(2)( 38 )

……鍵。……

メテオールは最後の階段を登りきりました。
ラシャの部屋の入口には、酒樽に乗った狼男の生首が此方を向いて唸っていました。
主のいない部屋を忠実に守り、メテオールに挑みかかって来ます。
「ノワールか?ラシャだ。」
メテオールは早口に告げました。
狼男の生首はポン!と音を立て黒い大きな蛇に変わり、扉はひとりでに開きました。
メテオールが急いで飛び込むと、扉が自動的に閉まり、すぐにドーン。と言う一際大きく重い衝撃音が感じられました。オプスキュリテが扉に体当たりしたようです。
メテオールはかまわずに部屋に入りました。そこは白い光で満たされた輝く部屋でした。
天井と壁はガラスのドームで出来ていて、夜空に星が浮かんでいるのが見えました。
メテオールは、ふと、サイドテーブルに置いてある写真に気づきました。可愛らしい少女と痩せて小柄な少年の写真。
母さん?
メテオールはラシャが哀れに思えました。

--その床の白い光を解き放て。闇の神を封じるのだ。--

ラシャの最後の言葉が頭の中に木霊しました。
--白い光を解き放て。--
ドーン!!ドドドド。
いつの間にか、ガラスドームの上にオプスキュリテの巨体がへばり付いていました。
すでに獣の光は無くなっています。白く長い毛をガラスドーム全体に広げてゆすっていました。力づくでドームを破るつもりです。
「この部屋では闇の魔術は使えません。」
下の方からしゃがれた声が聞こえました。
見ると黒い大蛇が鎌首をもたげ、何かを訴えるようにメテオールを見つめていました。
「貴方は、ヴィオレット様のご子息ですか?よく似ていらっしゃる。」
大蛇のノワールが口をききました。
「君はノワールか?」
「はい。私の主様はすでに亡くなったようです。私には分かるのです。こうなった以上、私も長くはありません。私はすでに一度死んで、主様の魔法で甦ったからです。主が死ねばこの身体も元に戻りましょう。
ヴィオレット様は主の最愛の方でした。そして私目にも優しくして下さいました。貴方様はヴィオレット様に生き写し。主が扉を開ける合言葉を教えたと言う事は、貴方様をお助けせよとの事だと思います。」
「ラシャは何故母を?」
「主様にただ一人、愛情深く接して下さった人だからです。
主様は友も無く、ご両親からも疎まれていました。私は友達の替わりとして育てられ、ずっと主様の側にいたのです。」
話しているうちにも、ガラスドームはオプスキュリテの力でゆらぎ、あちこちひび割れが出来てきました。
「ノワール。この部屋の床を開く方法を教えてくれないか!」
メテオールが言いました。
「メテオール様。それには鍵が必要です。主様の命で守っていた鍵。私はその言葉を知りません。」
「鍵は言葉なんだね。ノワール。この床下に一体何があるんだい?」
「メテオール様。この床下の白い光は死者の魂。その奥は死者の国の入口でございます。」
急に、以前。プレーリーが言った疑問の言葉が思い出されました。

--じゃあ、なぜ、人間の生け贄はそこにいなかったんだい?一体人間の魂はどこに行ってしまったのだろうね?--

ガシャ、ガシャン!!
ガラスドームの一部が破られました。オプスキュリテの一部が白い部屋に入ってきました。
「メテオール!!」
シュルシュの悲鳴が空から聞こえました。
見上げると、モーヴェに乗ったシュルシュが空中からオプスキュリテめがけて今にも襲いかかろうとしている所です。
「シュルシュ!来るんじゃない!!」
メテオールは叫び。
すぐ床下に向かって命令しました。
「死者の国の扉よ開け!鍵はヴィオラだ!!」
ブゥーンと奇妙に金属の振動する音がして、白く強力な光の束が床下から飛び出し、オプスキュリテに向かって行きました。白い光はオプスキュリテを捕らえ、体を包んで明滅し、渦を巻いて回転しながら床下に引きずり込もうとします。堪らず、オプスキュリテがこの世の物とは思えぬ悲鳴を上げました。
光が物凄い力でオプスキュリテを引っ張り、床下に飲み込む寸前に、最期の力を振り絞ったかのように、オプスキュリテは白い髪をメテオールの足に巻き付けました。
メテオールは足を捕られ、オプスキュリテと共に死の国へ引きずりられて行く所でした。
シュルシュは急いで床にふしメテオールに手を伸ばしました。
メテオールもシュルシュの手を握ろうとしましたが、すんでの所でお互いの手は届かず、慌てたシュルシュの懐から竜の珠が落下して行きました。
空を切ったメテオールの指が偶然、竜の珠に触れたその瞬間。今度は床下とは反対の力で吸い上げられ、オプスキュリテの髪は千切れ、メテオールの体は、そのまま竜の珠に吸い込まれて行きました。
最期に千切れた髪が床下に消えると、床の発光は消え、暗く冷たいただの床になりました。
死者の国の入口は閉じたのです。
床の上には何事も無かったように、竜の珠がクルクルと虹色に輝きながら動いていました。
「メテオール!!」
シュルシュは泣き叫びました。すると、竜の珠はひとりでにシュルシュの元に飛んできて、すぅとお腹に入って行きました。
シュルシュはお腹の中に何かドスンと重い動きを感じました。
「メテオール様は、竜の珠に閉じ込められてしまいました。」
ノワールがシュルシュに話しかけました。
「貴方は3日のうちに元気なお子を出産されるでしょう。その子は赤髪の男子で、額には第三の目をお持ちになっています。その子の第三の目が開くまで、メテオール様は現世に帰ってはこられません。その子は必ずこの世界で一番力の強い大魔術師となるでしょう。」
ノワールは言い終えると、静かに床にとぐろを巻き、そしてぐずぐずと土壁の様に崩れ去りました。
シュルシュは大蛇の予言を聞きながら、気の遠くなるのを感じていました。記憶が途切れる前にシュルシュは思い出しました。メテオールの言葉。
--僕は必ず君の元へ帰る。約束するから。--
それから急激にシュルシュの意識は闇の中に落ちて行きました。


その後。ノワールの予言通り、シュルシュは二人目の子供を生み落としました。
その子の名前は「エヴェイユ」
メテオールによく似た赤髪と竜の王族の印。第三の目がありました。
予言によれば、この子の瞳が開く時。メテオールも帰還が出来るはずです。
泣いてばかりいたシュルシュも子育てと、魔法学校の手伝いに追われ、さらに魔術の勉強も始める様になりました。
夫のいない寂しさを忙しさでなんとか誤魔化していたのです。
それから三年が立ち、シュルシュは魔術教員の免許を取り、義父ルミエールの仕事を手伝うまでになりました。
息子のエヴェイユは三歳になり、予言通りの力の片鱗と、父メテオールの消息を垣間見せるある事件が起こりました。
そのお話しは次の機会に....。まずはおしまい。


……赤髪のメテオール。完。……
by emeraldm | 2011-01-03 22:35 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(0)

宣伝??^^

赤髪のメテオール。
次は最終回でしゅ??
お楽しみに~??\(^O^)/ RUBY
by emeraldm | 2011-01-03 16:55 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(2)
……宝物……

オプスキュリテはおもむろに顔を上げ、メテオールに言いました。
「メテオールよ。悪いが予定変更だ。貴様の始末をつける前に、お前の宝を先にいただこう。そろそろオムファムも限界に来たらしい。」
オムファムの口から白く長い髪の様な物がうねうねと吐き出されました。その繊維状の物は放射線状に広がり、やがて、ゲフッ!と言う嘔吐音と共に白い産毛で覆われた丸い頭の様な胴体の様な物が吐き出されました。醜悪なその物体は、見ている間に白い髪の上に立ち上がり、数千本の足を持つ蜘蛛の化物の様にも、斬首された生首の様にも見えました。頭の様な物には目は無く、ただ大きく裂けた口から無数の鋭い牙が覗いています。
頭はドンドン高くなり、白くうねる物はますます広がりました。今では大竜のモーヴェより大きくなっています。
「キャ~!」
シュルシュが悲鳴を上げました。
いつの間にか、怪物の髪がシュルシュの下に這いより、その体を巻き取り持ち上げました。
「やめろ!」
メテオールは怪我の事も忘れ、立ち上がりました。
「シュルシュに手を出すな!」
「ほぉ。まだ立ち上がる力があるか?メテオール。魔法も封じられ、傷だらけの体で我と戦うつもりか?今のお前には何の力もないではないか?我はお前を一瞬で粉々に出来るのだぞ!」
「メテオール!!」
プレーリーが駆けつけ、メテオールを支えました。そのあとにルミエール、アルジャン、国際魔術連盟のメンバーが次々とメテオールを庇うように取り囲みました。
「ふふふ。馬鹿なやつらよ。魔法の使えぬ人間など、何人かかっても我に勝てはせぬ。魔法を奪われたお前達に何が出来ると言うのだ。」
「そうかな?」
メテオールは引き止めるプレーリーを押し留め、前に出ました。
「何も無いって?そうかな?太古の怨霊よ。貴様には何も見えず、何も聞こえないのか?」
「なんだと?」
メテオールは投げ出された時に取り落とされた杖を拾い高く掲げました。
「馬鹿げているぞ!メテオール。魔法は我が封印した。」
「聞け!貴様の犠牲となった小さき者達の嘆きを!聞こえぬのか?怨霊よ!!」
メテオールの杖に暖かい金色の光が灯りました。
その光はパチパチと瞬き、やがて沢山のぶつぶつとかわいらしい声が聞こえ始めました。
「メテオール。奴等をやっつけてよ。僕たちの敵を討って。僕たちはいっぱいいるよ。何百といるんだよ。」
「馬鹿な!魔法は使えぬはず。」
メテオールはオプスキュリテが動揺しているのが分かりました。
「これは魔法では無い!お前達の悪行の犠牲になった小さき者の魂だ!」
杖はどんどんと輝きを増し、そして、一つ、二つと小さな光の塊が蛍火の様に杖から離れ、驚いているオプスキュリテの方に飛び交いました。オプスキュリテの体に小さな光の明かりが灯り、段々と光が数を増し、オプスキュリテの体を埋め尽くして行きました。
「苦しい。重い。何だ!この光は? 」
光は振り払われても振り払われてもしつこくつきまとい、シュルシュを掴んでいた髪が緩んで、ドサッと床に落ちました。
「モーヴェ。モーヴェ!生きているか?約束だぞ、シュルシュを連れて逃げてくれ!」
モーヴェはフラフラと立ち上がり、シュルシュに有無を言わせず、優しく口にくわえて空中に舞い上がりました。オプスキュリテは光の苦しさにバタバタと暴れていて何も気付いてはいませんでした。
「嫌よ!貴方から離れないわ!」
シュルシュはモーヴェから逃れようと、身をよじって抵抗しました。
「シュルシュ。僕は必ず君の元へ帰る。今君が捕まったら世界の終りだ。僕を信じて逃げてくれ!
モーヴェ。なるべく遠くへシュルシュを連れていけ!」
モーヴェは一瞬躊躇い、それから、背中で天井を壊しながら、シュルシュを連れて高く舞い上がりました。
「メテオールー!」
シュルシュの悲痛な叫び声が遠ざかります。上からはモーヴェの壊した天井の欠片が降って来ました。メテオールが欠片を避けようとしていると、何かが弱々しく、ズボンの裾を引きます。下を見ると、哀れな姿のオムファムが這いずって、メテオールの裾を引いていました。目は潰れ、虫の息ですが何かを伝えたい様子です。
「メテオール。私の部屋へ行け。屋上にある白い部屋だ。入口にはノワールがいる。
ノワールには、ラシャと言えばいい。その床の白い光を解き放つのだ。」
「しかし、なぜ?…」メテオールは訝りました。
「私は間違いを犯した。君の母上が君を命がけで生んだのが、今やっと理解出来たのだ。最後に君の顔を触らせてくれないか?」
メテオールは言われるがままに、オムファムに顔を触らせました。オムファムはメテオールの顔をなぞると満足そうにフッと息を吐き出し、こと切れました。
「プレーリー。今すぐ皆を連れてこの城を脱出するんだ!城の外に出れば魔法が使えるはず。僕がやつを引き付けるうちに早く!」
「しかし…。」
プレーリーは眉を潜めました。メテオールを一人で残す訳には行きません。
「いいから、僕を信じるんだ!時間がない。父さん!僕が帰れそうにも無いときは、城の外からこの城を封印して下さい。魔術師全員に呼び掛けて。」
「息子よ。それでいいのじゃな?」
難しい顔で父ルミエールが言いました。
オプスキュリテが吼えました。見ると、光の半分以上がすでに消されていました。
オプスキュリテも、その白い毛の一部が食いちぎられ、短くなった毛が逆立ちのたうち回っています。
「父さん!早くこの城を離れて下さい!」
言い残すと、メテオールは大声でオプスキュリテに語りかけました。
「死の谷の化物よ。私はここにいるぞ!さあ、かかって来るがいい!」
「人間め!」
オプスキュリテは憎々しげに叫ぶと、呪いの光線をいくつも投げました。バーン!バーン!目眩滅法投げているらしく、壁に穴が空いて通路がむき出しになりました。
「ほら、私はこっちだ!」
メテオールは言うが早いか、穴の空いた壁に飛び込み、走り出しました。うまい具合に、オプスキュリテはメテオールを追いかけ始め、後ろから大きな物音と呪いの光が飛んで来るのが分かりました。生け贄の間を飛び出して、とにかく、必死で上に上がる階段を探しました。ほどなく、廊下の突き当たりに上に登る階段を見つけ、後ろを見ずに全速力で登って行きました。後ろからドン。ドン。ガシャン!と物を引き倒す物音が聞こえて来ます。階段の曲がり口ではすんでの所で呪いの光が顔を掠めてラシャの置いていた花瓶に当たり花瓶は粉々になりました。メテオールはラシャの部屋に通じる暗い階段を、一人必死で逃げ続けました。一瞬でも走るのを止めれば一貫の終わりです。踊り場には訳の分からぬ呪具が沢山置いてありましたが、オプスキュリテの封印で、今はもう只のガラクタと化していました。ドドーン!ガシャン!騒々しい物音がメテオールのすぐ下の階段で聞こえました。効力の無い呪具が、オプスキュリテによって引き倒されている音です。
敵はすぐ側まで迫っていました。

……続く。……
by emeraldm | 2011-01-03 16:51 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(2)
……対決。……

メテオールが振り向くと、祭壇のすぐ近くにモーヴェに乗ったシュルシュがいました。
「シュルシュ。無事か?」
「私は大丈夫よ。それより、その珠に触っては駄目よ。その珠は魔力のある者にはとても危険なの。触れば全ての力を吸い取られるわ。私が触るには大丈夫だと思うから待っていて。」
大竜のモーヴェはシュルシュの体を祭壇の上まで運び、シュルシュはメテオールの隣に降り立ちました。
シュルシュは珠に手を伸ばし、虹色の珠はクルクルと光ながらシュルシュの手の中に何事もなく収まりました。「何だか以前より重くなっているわ。それに、未知の力が増しているみたい。シュルシュは怪訝そうに珠を眺めて、おもむろにそれを胸の谷間に隠しました。
「サンチマンよ!敵を倒せ。聖なる炎で焼き尽くすのじゃ!」
地の底から響くような声が言いました。
広間が急に明るくなり、メテオールとシュルシュが振り向くと、広間の真ん中にある焚火の中から、大竜モーヴェにも負けないほどの大きさの炎の竜が立ち上がり燃え盛る体を引きずって此方に向かって来ました。その背中にはオムファムが、否。オムファムに憑依したオプスキュリテが乗っていました。
ヴォォォ!!
一声吼えると、モーヴェが二人を庇うように炎の竜に立ち向かって行きました。
「無謀だ!モーヴェ。」
メテオールは急いでモーヴェの背中に飛び乗りました。
ヴォォォ、ヴロロロ!!
ニ体の巨体がぶつかり合い、モーヴェの肌が焼け焦げる臭いがしました。ヴォォ!火傷を負いながらもモーヴェは相手に掴みかかり、噛み割こうとします。メテオールは炎の剣で降りかかる火の粉を交わし、オプスキュリテが打ち降ろす杖を自分の杖で受け止めました。杖は火花を散らし、持つ手は衝撃で痺れました。メテオールのマントも服もあちこち焼け焦げ、炎に焼かれた髪は元の短い赤髪に戻りました。呪いの呪文を容赦なく杖から発射しながら、オプスキュリテは感情の無い赤い目でメテオールを見据えました。
「メテオール。赤髪の若者よ!我と共に新しい世界を創造せぬか?我にそなたの力を貸せば、世界の覇権をそなたに与えよう!」
悪魔の囁きがメテオールの耳元で唸りました。メテオールは呪いの一つが掠れて白煙を上げる片腕を庇いながら、オプスキュリテを睨み付けました。
「闇の主よ。貴様のくれる世界の覇権など、何の価値もないものだ。」
オプスキュリテの動作が止まりました。
「なんだと?」
「力など何の価値も無いと言っているのだ。私はすでに世界一の宝を持っている。貴様が想像できぬ宝を。」
メテオールが言いました。
炎の竜とモーヴェが再びぶつかり合いました。オプスキュリテの杖とメテオールの杖が火花を散らしました。
「我は神ぞ!これ以上の力は望めぬのだぞ!」
「貴様は神などではない。ただの太古の怨霊だ!死の谷に帰れ!」
バーン!
ひときわ大きな音がして、メテオールはモーヴェの背中から弾き飛ばされ床に嫌と言うほど叩き付けられました。炎の竜に乗ったオプスキュリテはその様子を冷ややかに眺めて言いました。
「我を怨霊と申したか?メテオール。
そなたは太古の力を知らぬ。人は我らにとって生まれたばかりの赤子と同じ。人が創造されるよりずっと前に我らは力を持っていたのだぞ。」
オプスキュリテの瞳から赤い血が滴り落ちました。
「神を愚弄するとは良い度胸だ!メテオール。我らの力の一部をそなたに見せてくれよう。
オプスキュリテの名に置いて、全ての魔力を封印せよ!」
急に広間から闘いの音が消えました。
杖から発射される呪いの光線も、呪文も全て消え失せ、魔術師達は唖然とするばかりです。影の奴隷達は動きを止め、そのままの姿で人形の様に固まってしまいました。炎の竜、サンチマンは元の姿に戻り、縮んで手の平ほどの火トカゲに戻りました。モーヴェは火傷を負い、そのまま頭からくずおれました。オプスキュリテは縮んだ火トカゲを踏み潰し、つかつかとメテオールの側まで来ると、呻いているメテオールの腹を杖で思い切り突きました。ゴフッ。メテオールは血を吹き出しました。
「人よ。お前達人間に魔法を与えたのは我らが一族ぞ。その恩も忘れ、我を怨霊扱いするとはいい度胸だ。
どうやらお前は恐れと言うものを知らないらしい。特別に恐ろしい運命をお前に与えよう。我の奴隷となるのだ。影の奴隷となり、生きる事も死ぬ事も出来ず支配される地獄を味わうがよい。」
オプスキュリテの目からぽたぽたと血の涙が滴り落ちメテオールの胸元を濡らしました。
オプスキュリテはそれに気づき、手で頬を拭い、血で濡れた手の平を見つめました。

 ……続く。……
by emeraldm | 2011-01-02 19:19 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(0)
……闇の器。……
「闇の神よ。ラシャに取りついておったのか?」
アルジャンが言いました。
「取りついた?我はこやつと契約を交わしたのだ。こやつの精神は暗く捻れておる。我はこやつの闇を食ろうて生きてきたのだ。お陰で随分力を付ける事が出来たぞ。しかし、こやつは今の今まで我を謀っておったのじゃ。小賢しくも、こやつの中に小箱があってな。その存在ゆえに、我はこやつを全支配出来なかった。その小箱は不思議な事に、どうやっても闇の力では開ける事が出来なかったのじゃ。メテオール。そなたがこやつの魂の守りを破壊するまではな。しかし、残念な事にこの体は長くはもつまい。オプスキュリテの巨大な精神を宿すには人の体は脆すぎる。」
「闇の神よ。やつの隠していたものとは何なのだ? 」
アルジャンが言いました。
「愚かな夢。意味の無い夢。ヴィオレッタと言う夢。」
「まさか!」
ルミエールが思わず口走りました。
「とにかく、この体には時間が無いのだ。新しい体に移らねばならぬ。シュルシュと言う女を渡せ。その女なら、闇の神の器に不足はなかろう。元々竜の珠の持ち主じゃ。これ以上の器は望めまい。さあ。女を引き渡すのじゃ。さもなくば神罰をくだすぞ!」
「断る。我らが闇の力に加担することは一切ない!」
メテオールが即座に言いました。
オムファムの瞳が急に開き、その目が此方を見返しました。その眼球は血の色でした。
ルミエール、アルジャン、メテオール、プレーリーの四人は躊躇わずに杖を掲げました。四人が攻撃する前に、オムファムの姿がかき消えました。
「いでよ。ヴァンピール!闇の奴隷達!!」オプスキュリテの声が響きました。
急に空気が冷たく生臭くなりました。濃い霧がかかったように黒く濃厚な気配が迫って来ます。
メテオールの脳裡に、あの冥界での出来事が走馬灯のように過りました。
「いけない。影の奴隷達が来るぞ!」
メテオールが叫びました。周囲の爆発音も火の粉の乱舞も収まり、信者達はいずこかへと避難したようです。ただかがり火だけがパチパチと音を立てています。不気味な静けさの中。いつの間にか、かがり火を背に五人の魔法使い。影の奴隷と呼ばれる者達が、此方を向いて立っていました。ぞっとする空気が彼らを取り巻いています。
「奴等は何者なんだ?」
父。ルミエールがメテオールに訊ねました。
「闇の神に魂を売り渡した魔法使い達です。死も輪廻さえも無い。生きた屍。闇の神と契約した黒魔術師の成れの果てです。奴等は死なない、死を恐れない。しかも以前は名だたる大魔法使いだった者達です。彼らは強力な黒魔術を使う。父さん。逃げて下さい。」
「馬鹿者!逃げてどうする。息子よ。どんな時も戦わねば前に進めないと教えておいただろう?ここは私とアルジャンに任せるのじゃ。お前は竜の珠を取れ!」
「しかし…」
「大丈夫じゃよ。伊達に年は取っておらん!ルミの言う通りにするのじゃ。」
アルジャンが言いました。
その時、白色に輝く強力な呪いの光線が闇を割き、此方に向けて放たれました。
「ファレーズ!」
アルジャンが杖を一振りすると、地響きと共にそこに巨大で透明な壁が立ち塞がり、呪いは壁に砕けて爆発しました。
「さあ、行くのだメテオール!此方は我らにまかせよ。それに味方もおるからな。
オーシュランプ、ハルバラールルプパッド!オール、フェール、プラティーヌ、ロッシュ。奴等を封じよ!!」
いきなり現れた国際魔術連盟の魔術師達が、それぞれに敵を見定め向かって行きました。父ルミエールもアルジャンもプレーリーさえも魔法の壁を飛び出し戦いに赴きました。魔法の光があちこちに飛び交い、暗い広間が明るく照らし出されました。白魔術と黒魔術がぶつかり合う音を聞きながら、メテオールは壁に背を向けて、魔法の光線を避けながら、祭壇を駆け登りました。階段には殺したばかりの動物達の死骸が置いてあり、死骸の血で濡れてつるつると滑ります。
一番上に、美しく、虹色の光を回転させて、竜の珠はありました。メテオールがその珠に手をかけようとしたその時。
「待って。貴方。それに触れては駄目よ!」
何処からか、シュルシュの声が聞こえて来ました。

……続く。……
by emeraldm | 2011-01-01 13:10 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(0)
NO36……母……
先を争って、黒装束の一団は出口を探しました。ここあそこと、火花が散り、大きな竜のような鼠花火の怪物が信者達を襲います。そこかしこで叫び声が聞こえました。オムファムが正気に帰ったのは、信者達の叫び声によってでした。
「なんじゃい!ラシャ!わしを呼びつけるとは。 」
いきなり、ルミエールのハゲ頭がオムファムのすぐ側に現れました。
「待っておったぞ!ルミエール!すぐこの騒ぎを止めろ。さもなくば、この女を殺すぞ! 」
「ほぉ。強気になったものだな。ラシャ。ちびの時は泣きべそかきだったのにな!」
ルミエールのすぐ隣にアルジャンが現れました。
オムファムは一瞬ギョッとして、持っていた杖を取り落としそうになりました。
「リクドフォール!水よ!攻撃せよ!」
シュルシュが隙をついて、マーフォークの杖をオムファムに向け、オムファムは叫ぶ暇も無しに、水の力で祭壇まで吹き飛ばされました。
「シュルシュ!」
メテオールが駆けより、シュルシュを抱き寄せると、シュルシュはくすぐったそうに、くっくっと笑います。
「馬鹿だな。僕だよ!」
驚いてシュルシュの体を離すと、どんどんと背が伸びてやがて親友のプレーリーの姿になりました。
「どういう事?」
いぶかるメテオールにプレーリーは説明しました。
「僕の父さんは器用でね。これは透明帽子の姉妹品。変装帽子さ。 」
プレーリーは頭の上を指差しました。
「プレーリー。シュルシュは何処だ?」
「ああ。彼女ならモーヴェさんを救出しに行ったよ。プラティーヌさんが一緒だから心配無いよ。それより、アイツはどこだ? 」
二人が祭壇の方を見ると、すでにルミエールとアルジャンが倒れているオムファムに杖を突き付けていました。「父さん。奴を知っているの? 」
メテオールが訊ねました。
「ああ。同級生だ。それより……。」父ルミエールがためらっていると、アルジャンが替わりに言いました。
「奴の顔を見るがいい。この顔はヴィオレット。君の母上の顔じゃ…。」
「母さんの?」
メテオールは水に濡れて、化粧の取れたオムファムの顔を見ました。そこには自分によく似た、優しげな女の人の眠り顔がありました。
「ラシャのやつ。いったい何をしてくれたんだ?こやつ。まさかヴィオレットの安らかな眠りを冒涜したりはしてないだろうな?」
アルジャンが気色ばみました。ルミエールはなんとも悲しげな表情をしています。
メテオールは事の展開について行けずただ、プレーリーと顔を見交わすばかりでした。自分に似ているとは思いますが、メテオールが一目も見たことも無い母でした。メテオールの母はメテオールが生まれるとともに難産に耐えきれずに亡くなりました。母の顔と言われても、困惑するばかりです。
急に、メテオールの懐の杖がブルブルと何かに反応しました。
「ふっふっふ。こやつは馬鹿な男よ。」
気絶して目を閉じたままのオムファムの口が動きました。
「誰じゃ!」
ルミエールが詰問しました。
「我はオプスキュリテ。冥界の王。闇の主よ…」 地の底から響くような恐ろしげな声が答えました。
……続く。……
by emeraldm | 2010-12-30 17:38 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(8)
No35……闇の主。……
--シュルシュ。大丈夫か?--
メテオールは獣の霊が宿る杖を握りしめて、声を出さずに呼びかけました。
おかしいな?反応がない。
--シュルシュ。聞こえないのか?どうしたんだ?--
鎖に繋がれたままのシュルシュは下を向いたまま、オムファムの足下に座っているだけです。
オムファムは女の姿をしげしげと眺め。やがて口を開きました。
「女。名はなんと言う?」
シュルシュは下を向いたまま何も言いませんでした。
「そうか、話したく無いと言う事だな。」
オムファムは檻に入れられた猛獣のように、シュルシュの回りを思案顔でうろうろと歩き回りました。
「お前は先ほど、ヴォレと話していた…。そして、主様はお前を、竜の珠の持ち主だと言った。
しかし、お前の姿は人間そのもの。しかも魔力も無さそうだ…。
と、すると、答えは一つしかないな。
お前の名はシュルシュ。竜王の娘。赤髪の一族の末裔。ルミエールの息子、メテオールと結婚した竜族の姫じゃな? 」
オムファムは乱暴にシュルシュの顎を持ち、自分の方を向かせました。
「お前は何故、この世を支配出来るほどの力を捨て一人の男を取ったのか?竜族の姫。やがて女王になれた身分を何故捨てた?
しかも、その結果、お前のその愛しい男の命を危うくしているのだぞ。お前がここに囚われているならば、お前の夫、メテオールもすぐそばに潜んでいるに違いなかろう。お前達を誘き寄せたのは我が片割れ、黒蛇のノワールじゃからな。お前達の娘にノワールからのメッセージが届いたはずじゃ。
さあ。そろそろ姿を現したらどうだ!メテオール。そして、おそらくはルミエール!
この女の命を救いたければ今すぐ出てこい!」
言うが早いが、オムファムは杖を取り出しシュルシュの心臓に突き付けました。
「私はここにいるぞ!! 」
メテオールの声が響き渡りました。
シュルシュは驚いた顔で顔を上げました。
姿を現したメテオールは脱いだ透明帽子から長い金髪の髪をバラバラと落とし、怒りの表情でオムファムを睨み付けました。
「お、お前は。ヴィオラ! 」
オムファムの顔が驚きに硬直しました。
その時、何処からか、爆発音が響き渡りました。バーン!バーン!!あちこちで何度も火花が上がります。人々は悲鳴を上げ逃げ回り、混乱して逃げ口を探しました。広間では逃げ惑う黒装束の信者達が大パニックに陥りました。……続く。……
by emeraldm | 2010-12-30 11:29 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(4)

NO34。......闇の儀式......

 ドン! ドン! ドン! 重い太鼓の音が広間に響き渡ります。
 ドン! ドン! ドン! 脈打つ巨大な心臓の音色......。
 一つ響き渡るとともに人々は動き出し、広間の真ん中、燃え盛る焚き火の前にぞろぞろと集まり始めました。
 太鼓のリズムが速度を増すごとに、広間の真ん中にある焚火の炎がより強く燃え上がり、やがて炎の奥から薄黒い影が現れ始めました。
「不味いぞ。炎の怪物が出てくる」
メテオールは呟きました。
「ああ。あれはサラマンドラの一種じゃな!」
 アルジャンが事も無げに言いました。
「サラマンドラ? あれがですか? 夢の中のあれは人の形に似てました。小さな火トカゲとは違いましたけど? 」
「メテオール君。勉強不足じゃな! サラマンドラには色々な種類があるのじゃ。あいつは怨念の炎を食う、ブールー種のマングリオンじゃな。だいぶ成長しとる。。。これはちとやっかいじゃわい! 」
「どうしてですか? 」
 替わりにルミエールが答えました。
「息子よ。マングリオンは人の恨みを食うのさ。オンブル教は人の恨みを集め、マングリオンを育てていたのじゃ。やつらの武器の一つじゃろうて。マングリオンには炎の術は使えない。火の中に住んでいるからな。
なお悪いことに、人の心に入り込み、心の炎を掻き立てて無用な争いを産むことも出来る。
実際、最初は小さな火トカゲなんじゃよ。人の手に乗る位の、こいつが暖炉に隠れていても、家族間の小さな争い位のものしか生まないはずなんじゃ。
わしとヴィオラが夫婦喧嘩をしていて、ふと居間の暖炉を見るとこいつが隠れていて、それを発見して笑いあったものさ。私たちはマングリオンに躍らされてたってね。
しかし、あそこまで......人の形にまで成長したとなると、どんな力を持っているのか想像がつかなくなる。
ラシャが黒魔術で育てたのだろうが......」
 話の途中でアルジャンがさえぎりました。
「だめだ。始まってしもうたわい! メテオール君。
悪いが竜の珠の近くに行って我々の合図を待ってくれないか?」
「はい! 分かりました。アル叔父さん! 
マングリオンに気をつけて下さいね。炎に近づくと正体が見破られてしまいます! 
僕は一度、瞑想中に見破られましたから......」
「瞑想中に? 」
「ええ。赤い炎で出来ているようなやつでした。それでは行きます! 」
 メテオールは時間を無駄にせずすぐに行動しました。なるべく炎から遠ざかり、祭壇の下まで行って合図を待ちました。
 メテオールが祭壇の下に到着して間を置かず、祭壇の後ろから、背の高い白装束のオムファムが入って来ました。オムファムはつかつかと祭壇の前に立ち、人々を見回しました。
信者達は一斉にオムファムを見ました。

「闇の子よ! 絶望と嘆きの声を聞け! 永遠の命と富をもたらすものよ!
血と臓物の供物を奉げん! サラマンドラよ! 燃え盛れ。
レザールフラム.アレ! 」

「レザールフラム.アレ! 」
人々が一斉に叫びました。

 オムファムが何か分からぬ呪文を唱えていると、信者の一団から、焚き火の中に動物の臓物の様なものがくべられました。
しばらく、ぱちぱちとその臓物がはじけるような音がしていたと思うと、
焚き火の炎はさらに高くなり、炎の中にゆらゆらと赤い影が躍るようになりました。
やがてその赤い影が炎から手を出し、空中をまさぐり始めました。
 集団から、信者の一人がオムファムの前に進み出ました。
 オムファムはそのものの頭を杖で軽く叩き、焚き火の赤い怪物の前に連れて行きました。
「お前の望みを唱えよ......」
 オムファムは強い声で言いました。 
「はい。オムファム様。私は弟が憎くてしょうがありません。
ソートレルは父親の財産を全て隠してしまいました。ソートレルに罰をお与え下さいませ。」
「ふむ。それではオプスキュリテの御使い。サンチマンに祈ろう。
サンチマンよ。この男の願いをかなえよ! 」
 ゴゴゴゴと地鳴りのような響きが聞こえ、炎がますます高く、広間の天井を焦がすほどの高さに燃え上がりスクリーンのように何かの映像を映し出しました。
 ソートレルと言う男でしょうか?広く豪華なベットで1人眠っています。
 ソートレルは急に目を覚まし、こちらを見て恐怖の表情を浮かべ凍りついたようです。すぐに髪が燃え上がり、泣き叫び顔が焼けただれ体を折り曲げて炎から逃げようとしますが、衣服も体もどんどんと焦げて行き最後に苦悶の表情を浮かべたまま真黒な墨のようになって動かなくなりました。
「おおおおお~。」
 人々から歓声が上がりました。
「お前の願いは叶えられた! 父親の財産は全てお前の物だ! オプスキュリテの名前において取るが良い」
 オムファムは冷笑を浮かべて男を見ました。
 男は震えて喜びながら、オムファムの足に口付けをして下がりました。
「オムファム様! 私も。 私の願いもお叶え下さい! 」
「いや、わしが先じゃ! わしの話を聞いてくれ! 」
「お願いです! 緊急を要するのです! あいつが」
 信者達が口々に騒ぎ始めました。その様子を満足そうに見ていたオムファムは黙って杖を上げました。
 その場の空気は一変し、人々は口をつぐみました。
 そのままオムファムは何事も無かったようにメテオールの潜んでいる祭壇の下に歩いて行き、信者の方に再び振り向き大きな声で言いました。

「皆の者。今宵は我等が神。オプスキュリテの再生の日じゃ。
この日のために我等は歩んで来た。今宵から世界の破滅が始まる。
我等が闇の時代が続くのじゃ! さあ! 神を讃えよ!
女をここへ......。 」
 オムファムが言い終わると、暗闇から鎖につながれた女が引き立てられて来ました。
 その女はシュルシュでした。
 「シュルシュ! 脱出したはずでは...... 」 メテオールは息を呑みました。

....................続く。.............................
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by emeraldm | 2010-09-28 17:25 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(10)

NO32。.....同級生......

 
 メテオールは咎めだてされる事も無く、生贄の間に紛れ込みました。
 生贄の間は暗くて巨大な洞窟のような構造で奥まったところに行くほど暗く、天井と壁は胃袋の壁のようにつるつるとした黒い物質で出来ていました。天井からは所々に細い照明がさしていて、嵐の後に雲間から射す日の光のように床に丸い跡を残しています。
 大広間にはすでに沢山の黒装束の人々が集まっていて、それぞれに仲間内で固まって、ひそひそ話をしていました。一部の人達は大教会のミサよろしく祭壇にひざまづき、てんでんバラバラに何事か祈っています。 信者達は皆一様に黒尽くめの服装で、時々フード付きのマントを羽織って顔を隠す者がいますが、きっと地位も名誉もある人達なのでしょう。
 広間の入り口は開け放しにされていて遅れてきた信者達もぞくぞくと仲間入りして来ました。
 ざっと見て、200人は超える大集会です。
 メテオールはなるべく人に触らぬように、広間の後ろの壁際によりました。
 透明帽子を被っているので姿は見えませんが、人に触れられれば存在が分かってしまいます。
 

 夢で見たとおり、大広間の一番奥に大祭壇があります。広間のまん中には大きな囲いがあり、その中に赤い大きな炎が躍っていました。ここにいた怪物に夢の中で正体を見破られたのを思い出し、メテオールは炎に近づかないように注意しました。
 階段状の祭壇は黒い岩石を掘り出して作ったようで、荒々しいノミの後が残るような迫力のあるものでした。
 その階段には左右に一本づつ、蝋燭が灯され、上の段まで続いています。
 一段目にはまだ何も無く、2段目には山羊の死骸が置いてありました。
 3段目には犬。4段目には猫。5段目には鳥。
 そして......。最後の6段目にはオーヴの瞳......竜の珠が虹色に光り輝いていました。
 竜の珠はまるで生きているように、眩しい虹色の光りをくるくると回しています。
--さて。どうやって取り返せばいいのかな? --
 メテオールが思案しながら、ふと前を見ると、近くで妖しげな人物が目に留まりました。
 2人の人物はフードを深く被り、ひそひそと内緒話をしています。
 その行動自体はなんら怪しいことはないのですが、プ~ンと何か嫌な匂いがしました。
 この広間に立ち込める、儀式用の香でも隠せないその匂い......。
 メテオールは近くにより、しげしげとその人物二人の顔を覗き込みました。
 やはり......。
「アル叔父さん! 又お風呂入って来なかったでしょ! 」
 メテオールは小声で話しかけました。
「ひょえ! その声はメテオール君。何処にいるんじゃあ?」
 アルジャンは回りをきょろきょろと見回しました。
「メテオールいるのか? ほれ、ちゃんと染めてきたぞい! 」
 ルミエールは大胆にもフードをボコッと脱いで、禿げあがった金髪の頭を見せました!
「父さんっ! 早くフード被って! 
 アル叔父さん。僕、今、透明帽子で透明なんだよ。プレーリーに帽子を貸してもらったんだ」
「そうか。彼はなかなか見込みがあるからな! 彼は今ここに来ているぞ!
シュルシュさんと地下牢にいる人達を救出しておるはずじゃ。な~に。わしの美人部下と一緒じゃから大丈夫じゃよ」 
「え? まさか? 」
 アル叔父さんの言いっぷりにまったく緊張感がないので、にわかには信じられません。
「ホントじゃよ! 君の助けになりたいと懇願されたので連れてきた。あ、眠り薬は解除しといたよ」
「だって、まだプレーリーは......」
「息子よ! 心配するでない。アルジャンが仮免許を発行してくれたからの。
とにかく地下牢の人々を救出したら、自分たちも避難するようになっているから。
お前は安心して、敵と戦いなさい! 」
 これまたいい加減な父の言葉......。
 それにしても、ふざけた態度のこの2人......。これでも世間は大魔法使いと呼んでいるのです。
 少し離れた人たちが、1人2人。ちらりとこちらを見たのを確認したメテオールが言いました。
「父さんたち。ここで話していてはまずいよ。敵に気付かれる。」
「ほっほ~~! 青いな。メテちゃん! 叔父さん達は消声呪文を使っとるのよん。
半径2m範囲の声は他のやつには届きません」
 アルジャンは面白そうにおどけた顔をしました。
「からかわないで下さい。アル叔父さん! んじゃあ、他の人 が気付いたのはその体臭のせいです。
 ちっとは清潔にしとかないとお仕事に支障をきたしますよ! 」
 アルジャンは、ふん! と鼻をならし。ルミエールは大笑いしました。
「うひひ。そ、じゃな。アル。お前の体臭には慣れてしもうてたので、わしも気付かなかったが、ちとまずいかもな。よし。クリーニングじゃ。クリーニング! 」
 そう言うと、ルミエールは杖を懐でさわり、
「チュ~チバジュウ.アルジャン! 」と唱えました。
 アルジャンはたちまちピカピカになり、嫌な顔をしました。薄汚れた浮浪者風の大魔法使いが、たちまちピカピカの貴族風の親父です。
「アルおじさん! その方がハンサムですよ」
 メテオールとルミエールは又また大笑いです。消声呪文がかかってなかったら、広間じゅうに聞こえてしまったでしょう。
「おぼえてろ! フルミンク親子め! いつかいたずら返ししちょるからな! 」
 アルジャンは少し残念そうに言いました。時間が無いのでいたずらしあいっこはおあづけです。
「それより、あそこにある竜の珠じゃ......。どうやって盗むかが問題じゃのお! 」
 アルジャンは笑いをそらす為に祭壇を見上げ、二人の注意を引きました。
「儀式が始まってしまえば、こいつら信者はあの祭壇に注目する。その前になんとか盗んでしまいたいのだがのお? 」
「アル叔父さん! 盗むじゃあなくって、取り返すと言って下さい。もともとはシュルシュのものなのですから」
「お前。ルミの息子にしては細かいの。ま、どうでもええが、ワシらが何か騒ぎを起こすから、メテオール君はそれに乗じてあの珠を奪還してくれたまえ」
「そうじゃ。息子よ。どさくさにまぎれて取り返して来い! そんでわしらはこの城を沈ませる。おお。そうじゃった。ラシャを捕まえんとな。やつは見逃してはおけないぞ! 」
「ラシャ? それって? 」
「石盤で知らせておいたじゃろう? オムファムの本名はラシャだって」
「父さんラシャってやつのこと知ってるの? 」
「知ってるも何も。同級生じゃて......。」
 ルミエールの横でアルジャンが大きくうなずきました。
「いじめられっ子のラシャ。とんでもない弱虫の根性曲がりなちびであったよ。子供の頃から黒魔術にはまっていたし、なんちゅったけな。気味悪い黒い蛇のペットがおって......」
「ノワール! 」 ルミエールが補足しました。
「そうそ! そのノワールを何か悪いことに使っていたよなあ。
やさしいヴィオレット以外あいつを気にかけるやつはいなかったぞ! 」
「そうでもないぞ! わしはラシャが更正すると思っていたし、それに」
 メテオールが父の言葉をさえぎりました。
「ちょっと待って、父さん! ヴィオレットって母さんが? 」
「そうじゃ。メテオール。ヴィオレットは同学年じゃった。その頃からわしとデートしちょったが......」
 メテオールは耳を疑いました。父親の青春時代の話を今聞くとは思わなかったからです。
「そういえばあいつ。ラシャのやつ。俺たちの結婚式以来姿を現さなくなったな......」
 父親が怪訝な顔をしました。
「あいつは恩知らずだからな。お前とヴィオレットが学校でどんなにあいつを庇っていたか? まあ、あれだけひねくれていれば仕方もあるまいよ。何しろ卒業してたったの2年で無許可魔法違反で捕まったくらいじゃ。
しかも、女になろうとしとった......」
 アルジャンが思い切り嫌な顔をしました。
「なんで女になろうとしたんでしょう? 」 メテオールが尋ねました。
「知らんわい! わしが到着した時はすでに今の姿じゃ。しかも気味の悪い化粧をして。あいつの趣味かもしれないしな。あいつはオカマだったのかもしれん! 」
「アル叔父さん! そこにいたの? 」
「わしが逮捕した! 国際魔術連盟に就職して初めての捕り物で興奮しとったが、まさか相手が同級生でしかもオカマだったとは驚いたぞ! 」
「あいつの人生は狂ってしまったのだな。わしとヴィオレットがやつをもっと気にかけておればと思っとるよ。
何を気に入ったか? ヴィオレットはやつを弟のようにかわいがっておったからな。
しかし! わしの孫に手を出したとなると話は違う! あいつとはちゃんと話し合うべきだし、事としだいによっては決着を付けねばなるまいて」
 ルミエールは悲しそうな表情をしました。
 メテオールはこの驚くべき話を聞いていました。親父たちの青春時代。まるでそこに複雑に絡まりあった何かが存在し、現在の事件を起こしているように感じたのです。しかもそこには母さんの名前もありました。
「何故、ラシャはクレアを狙ったの? 」
 メテオールは父親にいいました。
 替わりに答えたのはアル叔父さんでした。
「やつはルミエールに嫉妬していたからのお。ラシャは貧しい家庭の出身での。学校に通うのが精一杯じゃった。一方でルミの家は学校経営をやっていてお金持ちじゃ。勉強が出来て、性格も明るく友達も多い。
自分とは正反対じゃ。自分は影のようなふと見るとそこに黙っているような子供での。小動物を殺して遊ぶのも好きじゃった。気味悪がられてよくいじめられておったよ。
誰もがストレス発散の相手以外にラシャにかかわりを持とうとせず、親でさえそんな態度だったと思う中、
ルミとヴィオラだけじゃ。あいつをまともに扱おうとしたのは......。
その好意がやつにとって余計なお世話だったのか? ただ単に眩しすぎたのか?
とにかくやつはルミを憎んでおったぞ! 
3日間も地下室の衣装箱に閉じ込められて、へろへろだったやつを発見し救出したのはルミじゃったが、助け出された時、やつはルミを睨んでおったわ。わしは今でも覚えておるぞ! 冷たい憎悪のある目をしとった。
とにかく、今度の事も根性曲がりのやつが考えそうなことよ。
わしはもう一度、やつをモンストル監獄に送らねばならん。
今回は人を沢山殺めておる。死刑は免れないじゃろう......」
 
 何処からか急にドラムの音が聞こえ始めていました。
 まるでこの部屋が鼓動している様に、どん! どん!っと低く単調に響いています。
 広間の真ん中の焚き火の炎が高さを増し、メラメラと燃え盛っています。
 大広間の両開きの扉が、ぎーっと独りでに閉まりました。

...............続く。.................. 

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by emeraldm | 2010-09-16 18:11 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(0)
 
 ヴォレの部屋を出ると、蒼白な顔をしているオムファムに、ジュダ大臣が声を掛けました。
「オムファム様? お加減はいかがですか? どこか具合が悪いのでしょうか? 」
「いや、ジュダよ。少し疲れただけじゃ。お前は先に生贄の間に行って、準備をしておれ。私は後から行こう」
「はい。オムファム様......」
 ジュダ大臣は頭を軽く下げてから、生贄の間へと歩いて行きました。
 
 オムファムは反対側の通路を通り、突き当りにある長い階段を昇って行きました。階段には窓が無く、黒一色で、灯には小人の手の骨を使った行灯に暗い灯が灯るだけです。
 何度も折れ曲がり、踊り場に来るたびにオムファムは呪文を唱えました。
 踊り場にはそれぞれ、古いランプや花瓶.金貨.鉱物.鍋.ヤカン.パイプ.その他もろもろの装飾品としては意味の分からぬ品物が置いてあり、おそらくそれらの品に掛かっている魔法が、階段を守っているのでしょう。
 本当に具合が悪いのか? 心ここにあらずだったのか? オムファムは一度だけ3回目の踊り場で呪文を忘れ、古いジョウロの先から出てきた沢山の毒虫に襲われるところでした。
 オムファムは急いで呪文を唱え、杖で虫の群れを払い、事なきを得ました。
 あの毒虫に刺されたら体が腐って死んでしまいます。
 4回目の踊り場を通り抜けると、短い階段の先に簡素な木の扉がありました。
 その入り口付近には大きな酒樽が1つ置いてあります。
 オムファムが近づくとその酒樽の上に狼男の生首が現れました。怒って鼻に皺を寄せ、歯をむき出しにしています。涎か血か分からないもので口をぬらし、ヴルルルとうなっている様はこの世の者とも思えません。
 近づいたら必ず食い殺す! と暗黙に言っているようです。
 「ノワール! 開けておくれ」
 オムファムがそういうと、その生首の怪物が、ポン! と音を立て、黒い大蛇に変わりました。
 扉はひとりでにギーッと開きました。
 「ノワール! あとで留守番のご褒美をたっぷりやろうな。おー。かわいい良い子じゃな! 」
 オムファムは部屋に入る前に大蛇のノワールの頭をなぜ、愛しそうに話しかけました。
 蛇は緑色の目を細めてされるがままでした。この蛇はオムファムの子供の頃からのペットです。
 唯一の友と言ってもいい者でした。
 部屋に入ると、そこは眩しく光あふれる透明な硝子の部屋でした。光が部屋を満たしています。
 ここは建物の最上階のようです。天井と壁は硝子のドームで夜空が見えますが、床下から白い光があふれ出し、すりガラスの床をぼおっと輝かせていました。
 部屋はオムファムの私室のようで、布張りのソファアやベット。机や小物など生活に必要なファブリック類が揃えられ、その全てが白一色に統一されていました。
 オムファムは疲れたように一人用のソファアに倒れこみ、ふーっと息を吐きました。
 この部屋では彼は完全に1人でした。
 この部屋は主にじゃまをされぬように作った完璧な魔法の空間です。
 影を支配するオプスキュリテは光を極端に嫌います。この部屋にいる時だけ、オムファムは自分でいれたのです。
 床下の光は白い魔法で作られていました。その光を手に入れるためにどんなに苦労したことか? オムファムは考え深げに床下を眺めた後、サイドテーブルにおいてあるシンプルな白い額縁の小さな写真が入れてある写真立を取りました。その写真には、2人の人が写っていました。
 水色小花柄のワンピースを着たかわいらしい15歳位の女の子。彼女の瞳は薄紫で、ふわふわとした巻き毛をふんわりと右肩にたらし軽く青いリボンで結んでいました。髪は薄い金色の甘い砂糖菓子のような女の子です。
左手に、青白い顔の、やせて小柄な男の子。2人とも幸せそうに笑っていました。
ただ、女の子の右手のすぐ傍には誰かが立っていたらしく、足の先を残し、その部分は不自然に切り取られていました。
「ヴィオレット......」
 オムファムは女の子の頬の辺りを懐かしそうに撫でました。
「ヴィオレット......。君は私といるべきだった。あの男より私が優れていると、あの時ちゃんと示しておけば、君は今頃......ああ。でも、やっと会えるよ。私が力を手に入れればね! 」
 オムファムはおもむろに立ち上がり、入ってきた扉に向かいました。
 木の扉には等身大の鏡が付いていました。
「ヴィオレット。醜いこの姿を嫌うかい? この体の一部は君のものだ。もうすぐ君を手に入れるよ。その為には、誰にも知られてはならない。たとえ主様だとしても......。
不老不死だって? 君がいなければ何の意味があろう。私の本当の目的は蘇り......。
死者の復活よ!」
 
--ラシャ! ラシャ? 泣いているの? 寂しいの? 大丈夫私がついているわ。
あの子達なんか、私がやっつけてあげるわよ! --

--ラシャ! ほら。クリスマスプレゼントよ! 貴方のためにママに買っといてもらったのよ。魔法生物の最新刊よ。あなた好きだったでしょ。 --

--ラシャ? ノワールがいないの? 心配だわ。一緒に探しましょう。 --

--ラシャ。私。卒業したら彼と結婚するのよ。結婚式には来てくれるでしょう? --

 そして、彼女を見た最後の日......。
 彼女はこの世で一番美しく、最高の笑顔の花嫁になり、私の前を通り過ぎた......。
 彼女の隣には、あのデブで小ざかしいルミエール。
 
「君は間違っていたんだよ、ヴィオレット! 隣には私がいるべきだったんだ。
私と一緒になっていれば、あるいは君は死ななかったかもしれない。
君の骨を地中から取り出したのは、君がかわいがってくれたノワールだよ。
前回の実験は大失敗だった。
蘇りどころか、君の体の一部が私に混ざり、継ぎはぎのオムファム(男女)が誕生した。
優しい君は笑ってくれるかい?それとも醜い我姿に目をそむけるかな?
とにかく、君の魂は戻ってこなかった。
まあ、実験の失敗のせいで、蘇りの法を研究していたことは隠されたが......。
地獄のようなモンストル監獄で出会った神と名乗る者にも私は嘘をついた。
オプスキュリテと名乗る神は私に憑依し、私を通じて恐怖を食らった。
けれど、私の嘘は見抜けなかった......。
私は心の奥に鍵の付いた箱を持ったのだ。この箱だけは何者も開ける事は出来ない。
たとえ神でも......。その箱の鍵は私の命で守られているからね。
闇の神が全てを知るには私を殺さなければならない。
しかし、先ほどオプスキュリテはそれに触りそうになった。隠された小箱に......。
もうすぐオプスキュリテは箱を見つけ、私を全支配するだろう。
その前に、あのヴォレに移してしまわなければね。
力を利用するのだ。太古の力を。
全ては君の為。君は今度こそ蘇り、私1人のものになるのだ。
今夜全ての駒がそろったんだよ。
君の夫。君が死をかけて産んだ君の息子。そして、竜の珠。
憎悪こそ我力だ。
見ているがいい。ヴィオレット! 」
 
 オムファムは鏡に向かい杖を振るいました。
 するとオムファムの濃い化粧が全て無くなり、薄紫の瞳の寂しそうな女の顔に変わりました。
 その顔はメテオールにとてもよく似ていました。

..................続く。........................

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by emeraldm | 2010-09-15 13:16 | 小説- 赤髪のメテオール(2) | Comments(4)