カテゴリ:小説- 人と竜の結婚 (1)( 24 )

 竜王の青白い第三の目が光を増し、強力な光線となってメテオールに降り注ぎました。
白い光を避けようと目を伏せた時、突然、夜の暗闇が戻りました。
 びっくりして顔を上げると、自分の目の前に、人の姿のシュルシュ姫が立っていたのです。
 シュルシュはメテオールをかばうように腕を大きく開いていて、竜王とにらみ合っていました。
 シュルシュ姫の第3の目は大きく青く見開かれています。

「父様。私はこの方の元に嫁ぎます」

「娘よ。そなたは最後の王族ぞ。竜一族をどうするつもりじゃ。額の徴は開いておる。我が亡くなればそなたが女王じゃ」

「父様。私は王座も一族も捨てる覚悟です」

「ならん!娘よ。それはならん!」

 シュルシュの額の目がいきなり赤く輝き、まばたきを始めました。他の目は眠ったように閉じられています。
 体が小さく揺れ始めました。

「父様......。竜王よ、私の甥っ子。分かっているであろう?? 300年待ったのじゃ。
我はオーヴ。全て思い出した...。この者は私の夫になる者。邪魔をしてはならぬ。
我は種族を超え、時間を超え、ここに再生したのじゃ。今、我に逆らえるものは地上には無い」

「しかし。竜一族の再生は!」

「心配することは無い、時が解決するであろう。そなたに証を差し出そう」

 シュルシュはトランス状態のまま、メテオールが止める間もなく右手の指を額の目に差込み、血だらけの青い目玉をえぐり出し竜王にほうり投げました。

「それは予言の石となろう。そなたの額の目の替りじゃ。我は力をなくし人間と成り果てた。人と竜の結婚は成就した。」

 そう言うとシュルシュはゆっくりと倒れ、スローモーションのように空中から落下して行きました。メテオールはあわててシュルシュ姫を空中で拾い上げ竜王を見上げると、竜王は血だらけの青い目玉を持ち、黙ってウロコ島へ帰って行きました。



 二人は魔法学校に帰ってから結婚し、ほどなくかわいい赤ちゃんを授かりました。
 名前はクレア。母のシュルシュに良く似て、オレンジ色の髪の毛のとても元気でいたずらな女の子です。
 クレアちゃんの額には横型に傷のような小さな瞳が付いていました。竜王は跡取りが出来たと喜び、
メテオールとシュルシュはとても幸せに暮らしておりました。

 ......が。

 その3年後。弟のエヴァイユが生まれる時、宿命の対決が起こっていようとはその時誰一人思っていなかったのです。
     
 そのお話は、、、又、次回に。.............
    
    END.....BY-RUBY。^^
by emeraldm | 2010-08-06 14:17 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(8)

 全ての者が見守る中で、白い大竜は、ゆったりとこちらに飛行してきました。

「竜王様!」

 モーヴェはつぶやきました。

 竜王はメテオールの数メートル先の空中にとどまり、じっとこちらを見つめました。年を取ってはいましたが、竜王は誰よりも大きい体格と、額には恐ろしい竜王のしるし。第三の目を持っていました。しかし、その瞳は半眼で、眼球は白く濁り始めていたのです。

「皆のもの。この男を傷付けてはならない。
今すぐウロコ島に引き上げよ!」

 威厳のある大声で、竜王は命令を発しました。竜たちはその声を聞くと、ただちに飛び立ち、ウロコ島に帰って行きました。
 数え切れぬほどの大竜が、いっせいに飛び立つと、その翼で大風が起き、メテオールは空中で振り落とされないように、ほうきにしがみついていなければならなかったほどです。
 大風が収まると。そこに残っていたのは、メテオールと竜王。そして、モーヴェだけでした。
 日はすっかり沈み、夜空に星星が輝き始めました。

「モーヴェ。お前も島に帰りなさい」

「しかし、竜王様だけでは」

「命令だ! この者は我が預かる。どの道、お前たちに、この者は倒せん。。」

「しかし」

「良いから、行け。問答無用じゃ!」

 モーヴェは竜王の強い態度に逆らえず、小さく舌を鳴らし、一声、抗議の咆哮を上げると、ウロコ島に帰って行きました。
 メテオールと、竜王は暗い夜空に、二人きりになりました。月が昇って来ています。

「赤髪の者よ。そなたの望みはなんだ」

 単刀直入に竜王は聞きました。

「話し合いを希望いたします。シュルシュ姫と私は愛し合っています。自分たちの種族が戦いあうことを、私たちは望みません。」

「赤髪の者よ。我は全て知っておる。我は、女帝オーヴの甥であった。
あの時、我は幼かった。
我等の仲間を多く殺害した、恐ろしいソレイユという魔法使い。赤い悪魔。
我はその様子を、岩の陰でおびえながら見ていたのじゃ。
その頃、オーヴを除き、王の徴をもつ者は我一人じゃった。
オーヴと魔法使いに本当のところ何が起こったのか? 我一人だけが、知っている。
オーヴは死の瞬間に、大きな魔法をかけた。
そして、赤髪の悪魔が生まれた! オーヴの力と憎悪が、ソレイユという魔法使いを悪魔にしたのじゃ。
その生まれ変わりのそなたを、我々が止めることは出来ない。
しかし、生まれ変わりとはいえ、シュルシュは我にとってかわいい娘。
竜一族の最後の王族じゃ。みすみすそなたに渡す訳には行かない。
我の短いこの命かけてそなたと戦おう。
あの時は幼かった、今度は年を取りすぎたがな。まだ力は残っておるぞ。。。。」

 竜王の後ろにはいつの間にか、青白く大きな月が昇り、月と同じように、閉じかけた瞳が青白く光り出しました。
 最後の力を振りしぼり、メテオールを倒すつもりです。。。

.....................続く。...................
by emeraldm | 2010-08-06 12:51 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(0)


 モーヴェは、一人の魔法使いが、こちらに向かって飛んでくるのを見つけました。
 赤い髪の男.....。
 すぐに先手を打つために上空高く舞い上がり、その男めがけて急降下しました。
 すんでのところでかわされて、体勢を立て直し、再び襲い掛かり、二人はもつれるように空を舞っています。
 するどい爪で鷲づかみにしたと思うと、その男はほうきの柄をうまく操り、爪は空を切り、消して捕まえることが出来ません。
 モーヴェはその男に向かい、竜の炎を吐きました。男は真正面からそれを小さな赤い宝剣で受け止め、こちらに返してよこしました。
 自分の炎を返されて、一瞬逃げるのが遅れ、モーヴェの翼の一部が焦げ付きました。その痛みに、モーヴェは苦しげに咆哮を上げ、憎憎しげに男をにらみつけました。
 周りの竜達は、二人のあまりに激しく、素早い動きに、唖然と見守るばかりです。

「黒竜。モーヴェ殿。聞こえるか!」

 突然、男が大声を上げました。

「話があるんだ。」

 モーヴェは自分の名を知っている赤い髪の男に少し驚き、その動きを空中で停止させました。

「赤髪の者よ。お前は誰だ。姫をどうした! 今すぐに姫を帰してもらおう」

 モーヴェは恐ろしげな重低音の声で言いました。

「さもなくば、この城ごと、人間どもを焼き尽くす」

 男はほうきにまたがり、とても神妙な顔で空中に停止しています。周りの竜達も、事の成り行きをじっと見守っています。
 緊張した空気が流れました。

「私の名は、メテオール。赤髪のソレイユの子孫。姫は私が預かっている。話し合いを希望する」

モーヴェは鼻で笑いました。

「おかしなことを言う、メテオールよ。人間と話し合えと。力の無い人間どもと?
そもそも、ここは我等の土地。盗み出したのは人間の方だ。ソレイユという貴様の先祖のせいでな。
盗まれたものを取り戻して何が悪いのだ」

 メテオールは考えました。モーヴェの言うことももっともな事です。この土地は、そもそも、竜やトロールのものだったのです。そこに邪な人間の欲望が入り込み、彼らを衰退に導いた。

「赤髪のメテオール。貴様の先祖の話は知っている。
貴様は再び、我等の姫をたぶらかし、昔と同じように、我等を破滅させようとしている。
それだけは許せん!
皆のもの、集まれ。こやつは一人だ。大勢で引き裂いてくれるわ。かかれ!」

 その言葉を合図に、周辺にいた竜達が一斉にメテオールにかかって来ました。
 メテオールはそれをかわしながら、なおもいっそう激しくなる攻撃に、一瞬の油断も出来ずにいました。
 逃げて、かわして、炎を宝剣で受け止めて、しかし、彼は自分から攻撃をしませんでした。頬や腕にはかわしきれずに付いた裂き傷や、火傷の後がどんどんと付いて行きます。

「話し合いを!」

 逃げながらも、メテオールは何度も叫びました。このままでは持たない。

 ひときわ大きい咆哮がしました。
 見ると、ウロコ島の方から、今まで見てきた中で、一番大きい白い竜が、こちらに向かって飛んで来ます。
 その様子に気付いた他の竜は、攻撃の手を止め、そちらの方向を見つめました。

 日が沈みかけ、夜がそこまで来ていました。。。

.....................続く。.....................
by emeraldm | 2010-08-04 11:18 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(0)


 オーヴは幸せの絶頂にいました。恋人のソレイユが、プロポーズしてくれたからです。
 
 父王の反対を押し切り、人の世界が見て見たいと、若いオーヴは人間の世界に家出をして来たのです。
 城から持って出た宝石類は沢山あり、暮らしには困りませんが、さし当たって行くとこもないので、学校と言うものに通うことにしました。
 竜族の姫でしたので、召使のいない生活は不便でしたが、寄宿舎のある魔法学校は、願っても無い隠れ場所でした。
 人というものを知らない姫でしたが、自分の眉間にある竜族の王の印。第3の目はいつも閉じていました。人に知られてはならないと思ったからです。けれど、額にある大きな傷に見えるものは、人に恐れを抱かせるらしく、誰一人、近づいて来てくれる人がいません。やがて、姫は髪の毛でそれを隠し、帽子を常にかぶるようになりました。
 ただ、その寄宿舎には、ソレイユという明るい金髪の青年がいて、彼だけは、オーヴの額の傷を気にしませんでした。それどころか、お嬢様育ちのオーヴに生活に必要な、色々なことを教えてくれ、町に遊びに連れて行ってくれたり、魔法の勉強も見てくれたのです。
 ソレイユはとても端正な美しい顔をした青年でしたが、どこか影があり、人を信用していないようでしたが、なぜか、オーヴにだけは心を開いていったのです。二人に恋が芽生えるのに時間は掛かりませんでした。

「卒業したら、結婚してもらえますか?」

 ソレイユが尋ねると、オーヴは、恥ずかしそうに頷きました。
 町から呼んできた画家に、二人の肖像を描いてもらい。オーヴは竜王国を捨てる決心をしたのです。このまま人として、この人と生活して行こう。そう思っていました。
 ところが、それからしばらくして、父の竜王に居所がばれてしまい、無理やり竜王国に連れ戻されてしまったのです。
 オーヴは泣いて泣いて父竜王に学校に帰れるように懇願しました。
 父の竜王は言いました。

「お前は間違っている。人と竜は種族が違うのだ。一緒になれるはずが無い。
その男も、お前が竜族だとは思っていないのだろう???
異種族の結婚は必ずや悲劇を生むだろう。
しかもお前は竜族の女王になる身だ。額の力を忘れるな!」

 それから、父王の監視の下。オーヴは逃げ出せもせずに、ただすごしていました。
 ところが、しばらくして、人間が竜の王国に戦争を仕掛けてきたのです。竜王国には豊富な金銀財宝の取れる採掘場があり、欲深い人間はそれを欲しがりました。
 相手側には、とても強い魔法使いがいました。そのせいで、竜と人間達の軍団は互角に戦っていたのです。
 その戦闘で父王が傷つき、やがて死んでしまいました。
 オーヴは悲しみに我を忘れ、持てる力の全てを尽くして戦いました。オーヴは女帝となったのです。
 それでもその魔法使いは手ごわい者でした。巨大な巨人の影を出没させ、飛行中の竜を叩き落し、炎を剣の一振りで封じ込めました。
 一方オーヴも、とても賢い女帝でした。
 敵方の魔法使いが、しばしば砦に帰っている様子をうかがい。思い出したのです。彼女の恋人が教えてくれた魔法使いの秘密。強力な魔法を使う為の力を得る方法。その時、一瞬。魔法使いに隙ができる。それだからこそ、魔法使いはその方法を人に見られるのを嫌うのです。
 オーヴは額の力で彼の部屋に侵入し、小さな太陽を飲み込もうとしている彼をさらってきました。
 さらってきてみると。その魔法使いは、あろうことか、夢にまで見た恋人。ソレイユ。
 ソレイユは、力の魔法を途中で破られ、ふらふらの状態でした。
 彼は、こちらを見ると、一言。

「オーヴ...。探していたよ」
 
と言うなり、倒れこんでしまいました。
 オーヴは驚きに我を忘れ悲鳴を上げ、城の周りにいた多くの竜たちが集まってきて、魔法使いを見つけ、一斉に飛び掛りました。黒山のように覆いかぶさった竜達が退いた後。
 オーヴは彼をかばって血だらけになっていたのです。一瞬にして引き裂かれ、魔法をかけて身を守る間もなく。オーヴは、ソレイユを抱きしめて背中でかばい。最後の魔法をかけました。

「ソレイユ。又、会いましょう。私の赤い血は貴方の髪を染め、私は生まれ変わって貴方を見つける。赤髪の貴方を。それまで、貴方に私の力を預けるわ」

 オーヴの血は悲痛な顔をしているソレイユにどくどくと大量に降り注ぎ、彼の髪を染め。全身を真っ赤にぬらしました。血が最後の一滴まで流れてしまうと、その時初めて、ソレイユはオーヴの死を知ったのです。
 ものすごい悲痛な叫びが上がり、ソレイユは突然飛び起き、狂ったように戦いました。
 全ての魔法の力を使い、嵐を呼び、稲妻が走り、まるで真っ赤な死神のようでした。
 多くの竜を一人で倒し、気の違ったようになった真っ赤な魔法使い。その勢いに逃げ出したわずかな竜をのぞき、ウロコ島も竜の血で真っ赤に染まりました。

...........そして・・・又。私は、再生したのだわ。あの方を探す為に。...........

 シュルシュ姫は、目を覚ましました。その顔を見て、セルヴァンはとても喜びました。
 姫の第3の瞳も、青く美しく見開かれていたからです。。。。

................続く.......................
by emeraldm | 2010-08-03 17:44 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(6)


 地下の王宮の出入り口は、メテオールに与えられた宿の地下室にありました。
 宿屋の主人も、ドワーフの血族で、もう何代もここで人間に混じり、商売をしていました。
 ドワーフ達も、人間と混血を繰り返してきたお陰で、人と変わらぬ背丈になり、外見では、ドワーフ一族なのかどうかさえ見分けは付きません。ただ、黒い瞳は共通のようでした。
 宿屋の地下室は小さな武器庫のようで、色々な種類の剣や槍、石斧、などが所狭しと、壁や机に並べてありました。
 その中の一つを、カシュ王女は取り、メテオールに差し出しました。

「メテオール様。我等はしばらく地下の王宮に避難します。
これが、我らドワーフからの贈り物です。
この剣は、300年前。。貴方が使われたもの。
炎を封じることが出来る、火炎の剣です。こちらをお持ち下さい」

 その剣の柄から刃の先端にかけては、黒い金属で出来た炎と竜がぐるぐるとらせん状に駆け昇っています。彫刻の螺旋の中には、透き通った真っ赤な鉱物が両刃の剣となって尖っていました。
 これでは何者も、斬る事も、突く事も出来ない。まさに、魔法の法具であるのは一目両全のものでした。

「ありがとう。カシュ王女。シュルシュをお願いします」

 言い置くと、メテオールは地下室を出て、宿の庭から箒に乗り、空に昇って行きました。
 日が翳り始め、太陽が沈みかけています。
 
 上空から町の周囲を見渡すと、すでに無数の竜達が、町の城壁を取り囲んでいました。町のこちら側に来れないのは、残っていた魔法使い数人が力を会わせて、城壁に守護の魔法をかけ続けているからです。
 兵たちは、その間、矢を射掛けたり、大砲を打ったりしていましたが、一向に効き目は無いようです。
 竜達はただ、その様子を馬鹿にしたようにゆうゆうと、城壁の周りを飛行しているだけです。
 時々、雷のような雄たけびが不気味に響き渡り、聞いているものの身を震わせました。魔法使い達が疲れて、守護の魔法の効き目が切れるのを待っているのです。
 王は城の屋上から、その様子を見守っていました。
 メテオールが急いで王の傍に降り立つと。

「メテオール卿。どこに行っておったのじゃ。探しておったのじゃよ。
一刻ほど前に、やつらは大群で現れ、城壁を取り囲んだのじゃ。
残りの魔法使いに何とかこちらに入って来られぬ様に呪文を唱えさせておるが、
いつまで持つか? どうしたらよいかのう」

 王は疲れきった顔をメテオールに向けました。

「私がなんとかしてみます。
王よ。城の中に入っていてください」

「しかし、城には誰もいないのじゃ。姫もおらん。
みんなどこに行ってしまったのじゃ??
町のものも半数はいなくなったようじゃ」

 王は震えています。ドワーフの取替え子は、すでに町の半数にも達していたのです。

「王様。大丈夫です。彼らはちゃんと避難していますし、姫もそちらにいます。
ここは危ない。王様は自室に篭っていて下さい。安全になったら迎えに行きますから。」

 メテオールは城壁の周りに舞っている竜の中に、ひときわ大きい黒い竜を見つけました。
 沈み行く赤い太陽を背に、その巨体が黒々と不気味に際立っています。
 王が自室に引き返すのを見届けてから、メテオールはその黒竜に、向かっていきました。

......................続く。........................
by emeraldm | 2010-08-03 15:41 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(0)



「。。。。生まれ変わり。。。。。」

 突然ポツリとカシュ王女は言いました。

「なんですって????」

 メテオールとセルヴァンは顔を見合わせました。

「貴方達二人は、300年前。恋人どうしだった。
彼女の名は、オーヴ。貴方は、ソレイユ」

 カシュは遠い所を見ているように空を見ながら話しています。

「二人はどこか外国の学校にいる学生。そこで恋をしたの。仲の良い若い恋人同士が見えるわ。
それを怒った竜王が彼女を国許に呼び寄せ....それから人との戦争になり。
戦っている最中に、敵の魔法使いを捕らえてみたら、それが恋人である貴方だった!
一族と恋に引き裂かれるようにして彼女は亡くなったの。
300年前の貴方に対する思いが、今、貴方達を引き合わせている」

 メテオールは途方も無いその話を、落ち着いて受け入れている自分に驚きつつ、
心の中では分かっていたんだと思いました。
 魔法学校のあの古い肖像画を見たときから分かっていたんだと。


「失礼いたします」

 突然ドアをノックする音と共に、軍服を着た小さなドワーフが現れました。

「姫様。表の城が竜達に攻撃されています。
私どもはどうしたらいいのか? ご命令下さいませ。」

「なにもするな!
我等トロールの血を受け継いだ者達は、全てこの地下の王宮に避難させよ。
人と竜の争いに巻き込まれてはならぬ。」

 カシュ王女は強い調子で、そのドワーフに命令すると、メテオールを振り向き言いました。

「メテオール殿?? 貴方はどうなされるおつもりか?
人として、竜と戦い、エストラゴン王国をお救いなされるか?
シュルシュ姫が目覚めるまで、この地下王国にとどまりなさるか???
我等一族は、人にも竜にも、どちらの味方もするつもりはない。
けれど、貴方が戦いに赴くおつもりなら、ドワーフの武器を授けましょう」

 メテオールはしばらく考えながら、シュルシュ姫をじっと見つめ。そうして、こう言いました。

「しばらく、シュルシュ姫をお願いできますか?セルヴァンさんも、姫を宜しくお願いします。
もしも、私が帰らなかったら、貴方に会えて幸せだったと伝えて下さい。」

「ひどい! 旦那様。姫をこのままにしていくおつもりか???
貴方様にお会いするのに、300年も掛かったのに。
再び、姫の一族と争うおつもりなのですか???
姫は、姫はまだ貴方のお顔を一目も見ていないのですよ。かわいそうすぎます!」

 セルヴァンはボロボロと泣きながら抗議しました。セルヴァンにとって、姫は自分の主人でもあり、妹のようなものでもあるのです。
 そのセルヴァンの肩にやさしく手を置くと、メテオールは言いました。

「セルヴァンさん。貴方たちと争わなくても良い方法がないか探してきます。
300年前の悲劇を繰り返しはしませんよ。
まだ分からないけど、きっと良い解決法があるはずです。
犠牲者をなるべく出さない為にも、僕は行かなくてはなりません。
必ず、姫の所に帰ってきますから」

 そう、言うと、セルヴァンと眠っているシュルシュ姫を残して、メテオールはカシュ王女とともに青の間を出て行きました。
 後に残されたセルヴァンは姫の替わりに、いつまでも、うえんうえんと大きな声で泣いていました。。。

.................続く。.................
by emeraldm | 2010-08-03 11:03 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(2)


 地下の王宮は、眩いばかりの色とりどりの鉱石で出来ていました。輝く水晶の広間から案内されたのは、群青色のラピスラズリで出来ている青の間という客間で、壁や天井は暗いラピスラズリに金色の黄鉄鉱の石屑が、星屑の様にちりばめられ、まるで夜空の中にいるようでした。
 蝋燭の光が、透明な水晶のシャンデリアに煌めき、月光の様に微かに揺れています。広い部屋の真ん中には、大蛇が二匹絡まりあうデザインの白いオニキス石で出来ている寝台が用意されていて、水鳥の白い羽根毛が敷き詰められた、ふかふかのマットが敷かれていました。。
 そのベッドの上に、シュルシュ姫を横たえると、カシュ王女は、彼女の額の、閉じられた目に手を置き、何か呪文の様なものを唱えました。

「熱を持ってるわ。駄目みたい。この瞳は開きたがっているのに、何かがそれを邪魔している。二つの思いの葛藤...。この方は以前。耐えられない程、心に傷を負ってしまったの。しばらく寝かせて置きましょう」

「カシュ様。姫は大丈夫でしょうか?」

セルヴァンは心配で今にも泣き出しそうです。

「ええ。体に異常は無いの。ただ、心に、準備が出来ていないだけなのよ。心配する事はないわ。自然に眠りから醒めるから。それが何時かはわからないけど」

「シュルシュ姫の心の傷はいったいなんなのでしょうか?」

 思わず、メテオールは尋ねました。夢の中で泣いていた乙女。何があったのでしょうか?

「......姫は一度死んでいるのよ」

「えっ?」

 聞き間違えたのでしょうか? 水晶のシャンデリアの微かな揺らめきの様に、カシュ王女の瞳も揺らめいていました。
………続く。………
by emeraldm | 2010-08-02 21:18 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(0)


 ドワーフは地下の精霊です。
 金銀鉄銅などの鉱石や宝石などを採掘し、加工する冶金の技術を人に伝えたのも、ドワーフ一族。古くから冶金の神様として、祀られています。
 天才的な技術と高い魔法の力で、神話の神や英雄の名だたる名剣、名器を作ったのも彼ら。彼らは人と神の中間的存在で、人とドワーフは今まで共存共栄してきたのです。
 正し、ドワーフは気まぐれで、自分達の気に入った人間にしか興味がなく、それ以外の人間を助けようとはしません。返って、彼らのご機嫌をそこね、大怪我、不慮の死を迎えた者も多いのです。
 人間がドワーフの富に目が眩み、彼らの暮らしの邪魔をすると、彼らは恐ろしい、祟り神となって、
人間に復讐するのでした。
 そのドワーフ一族の王女、カシュが、今、メテオール達を助けようとしているのでした。

……続く。……
by emeraldm | 2010-08-02 13:10 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(6)


「地下の国にようこそ!」

 聞き覚えのある柔らかな声とともに現れたのは、エストラゴン王国の王女。エグランティーヌです。
 メテオールとセルヴァンは目を見張りました。
 エグランティーヌは、すっかり人が違ったように快活な表情をしています。

「あ。あなたはいったい?」

 メテオールが問いただす前に、エグランティーヌは身振りで制し。こう言いました。

「その話は道すがらお話しいたしますわ。先にシュルシュ姫を介抱して差し上げなければ。
もう少ししたら、地上では、竜の大群が襲ってくるはず。ここ地下の国にいれば安全です。さあ、ここは地表に近い。急いで奥の地下の王宮にまいりましょう。付いて来て下さい」

 エグランティーヌにせかされて、メテオールはシュルシュを抱え上げ、その後をメテオールの小さな光が宿った杖を持って、セルヴァンが続きます。
 部屋の外には手彫りと思われる細いトンネルがどこまでも続いています。
 エグランティーヌは光も持たず、馴れているように、そのトンネルをどんどんと行ってしまいます。その後を、転ばぬようにしながら、メテオールとセルヴァンはついて行きました。

「早く。なるべく早くお歩き下さい。
この王国はすでにもう弱っている。回廊は、いつ崩壊してもおかしくないの。
使われなくなってから何百年も経っているわ。
地上の城の地下に隠れている地下の王宮なら安全のはずよ」

「待って下さい。あのお城の下に王宮が隠されていたのですか??確か古い丘の上に建設されたお城だとうかがいましたが」

「そう。地下の国は古の昔から、ドワーフ族の住処だった。竜たちがここに住みだす以前からあった地下の王国よ。人間たちが古い丘と呼んでいたのは私たちの王宮の天井のことだったの」

「あなたは?」

「......私はドワーフ族の王女。カシュよ。もっと急いで!
エストラゴン王国が出来た頃、古いドワーフ一族は衰退しかけていた。
もともとこの丘は、人間に神の神殿として、古くから祭られていたところなの。
ケン.クルーワァッハが作ったと言われているわ。
ケン.クルーワァッハは戦いと大蛇の神。つまり、ドラゴンの祖先でもある。
私たち、ドワーフ族と竜一族は同じ先祖を持っているの。
きっと、古の昔に、地上で暮らすもの、地下で暮らすものとして別れていったんだと思うわ。
我等は人間と共存する道を探し、
竜たちは飛翔することで孤高を保った。
我等は人に知識を分け与え、小さな神として祭られ、魔法を教えた。
我等の力は人の祈りから生まれたの。
しかし、人は知識を蓄え、力をつけて行くにしたがって、神を恐れなくなり、
我等を忘れ去った。そうして、ドワーフ族は力を失い、衰退していった。
300年前。そこに一筋の光が差し込んだ。
竜族さえも我等の存在を忘れてはてていたのだけれど、人と竜が争い始め、
赤髪の若者が現れ勝利し。
ここに人間の城が築かれた。
ひそかに我等は自分の子供たちと人間の子供たちを取替え始めた。
取替え子よ!
取り替えた子供たちはドワーフとしてここで生活し、ドワーフと婚姻し、ドワーフの血をつなげた。
人間の子供となったものたちも人間と生活し、やがて人間と婚姻する。
ドワーフの血は弱まるけど、一族が生き残る最後の手段だったの。
このままでは繁殖力もなくなってやがて消えてしまったろうから、
私はメイユール王の娘と取り替えられた、ドワーフ王の娘よ。
メイユール王の王妃には子供が授からなくって、最後に生まれた子供が死産だった。
その子と私は取り替えられたの」
さあ。もう着いたわ。ここにいればシュルシュ姫も安心よ」


 エグランティーヌ姫。いや、カシュ王女の話を聞いているうちに、地下の王宮の入り口についたようです。
 入り口には小さな人が2人立っていて、王女に深々と挨拶をしてきました。
 金や銀。。宝石で彩られた扉には見事な黄金のドラゴンが掘り込まれ、大きな目には巨大なルビーが輝いていました。入り口の番人の一人が、中開にその扉を開けると、中には透明な水晶で光り輝くまぶしいくらいの大きなホールがありました。

「早く。入って。」

 カシュ王女が促し、3人が中に入ると、ドラゴンの扉はひとりでにパタンと閉まりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・続く。...................
by emeraldm | 2010-08-01 15:32 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(6)


 メテオールが、シュルシュたちのすぐ傍に降り立つのと、空からモーヴェがそれを見つけたのはほぼ同時だったと思われます。
 咆哮を上げ、空からものすごい勢いで向かってくる黒竜を見て、

「見つかった!」

 セルヴァンは.悲鳴を上げました。

 間に合わない! メテオールがなんとか防ごうと魔法の杖をかざそうと腕を上げたその時、大地がゆれ、黒竜と、メテオール達の間に、大地の壁が隆起したのです。
 そのまま、ずずずっ。と土の壁はメテオールたち3人の周りをとり囲むように縮み始め、土煙を上げながら飲み込んで行きました。その間数秒。
 後には何事も無かったように、地面があるだけです。
 メテオールめがけて飛び掛っていった黒竜は、空を掴み、あやうく地面に激突しそうになりながらも、何とか体制を建て直し、地上に降り立つと、しばらく、そのあたりを調べた後、あきらめて一声恐ろしい人間の声で叫び、ウロコ島に引き返して行きました。

「シュルシュ姫。逃がさんぞ!」

 メテオール達3人は、土の壁で出来た、ドーム状の狭い空間に閉じ込められていました。
 魔法の杖の先に、小さな灯が灯ると、3人の顔が浮かび上がります。
 子供のような大きさのトカゲのような目をした異形の者が、シュルシュ姫を守るように、姫に覆いかぶさり、こちらをうかがっていました。体が小刻みに震えています。
 姫は気絶をしてしまったのか、瞳を閉じたまま、ぴくりとも動きません。

「妖しいものではありません。僕は彼女を知っています。
君の名はなんと言うのですか?」

「だ。旦那様。私はセルヴァンと申します。この方はシュルシュ姫。竜族の姫でございます」

 震えながらも、セルヴァンは答えました。

「それではセルヴァンさん。姫はどうなさったのですか?? お体の具合は大丈夫ですか?」

 メテオールのとても心配そうな顔に安心したのか? セルヴァンは警戒を少し解いたようです。事の次第を簡単に説明してくれました。

「姫は、今宵。子供の頃よりの許婚。モーヴェ様との婚約の儀式をなされる予定でした。
姫はそれが嫌さに、竜の国から人間の国に逃避行されようとしていたのでございます。
あのエストック山脈を越えてしまえば、モーヴェ様も父上の竜王も追っては来られまいと。
そうして、急いで森を駆け抜けて行く途中で、額が痛いと言い出されまして、
急にばったりと倒れてしまいました。
その後すぐにあなた様が現れ、モーヴェ様に見つかりそうになり。
訳が分からないうちに、ここに。」

 セルヴァンは泣きそうな目で訴えかけました。

「あなた様は、魔法使いですか??? 姫の言っていた赤髪の者ですか?
姫を助けていただけますか???」

「安心してください。私は姫の味方です。しかし、私は魔法を使わなかった。
黒竜から守ってくれた、あの魔法は、尋常な力ではないはずです。
いったい誰が?」

 言いかけて、メテオールは、こつこつという靴音のようなものを聞きました。

「誰か来る」

 メテオールは身構え、セルヴァンは意識の無い姫を守ろうと、ぎゅっと抱きかかえました。
 土の壁の一部が変形して行き、闇の中から何者かがこちらに歩いてきました。。。
 .................続く。.................
by emeraldm | 2010-08-01 12:09 | 小説- 人と竜の結婚 (1) | Comments(4)

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