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rubyの好きなこと日記

ショートストーリー 「暗い森」



少年は暗い森の奥深くまで入って行った
帰り道は既に分からない
どうせ残して来たものに惜しいものは何も無かった
引き返そうとも思わない

少年は未来を夢見る事さえ無かった
暗い森に何かを求めてさ迷っているわけでもないが
それでも足を止める事は出来ず
ただひたすらに
何かに憑かれた様に歩いていた
獣の咆哮や気配を感じても
少年には恐れる心さえ無いかのようだ

どんどん道は険しくなり
藪の中を進み
やがて
崖道を登るしか無くなってしまった

黙って少年は崖道を登り始めた
白い砂で出来ている崖はポロポロと崩れやすい
足を踏み外せば命は無かった
それでも彼は登り続け
何故自分が崖を登っているのか
考える事もなく
だだそれが自分の責任かのごとく黙々と登り続けた

「Despair」は若い彼を捕らえる事は出来なかった
彼は何も考える事なくただ行動したからだ
本能の命じるままに

もしも
彼が危険な森に入らず家を出なかったなら
あるいはもし彼が振り向いてしまったなら
「Despair」は易々と獲物を捉えてしまった事だろう

今でも彼の足元に「Despair」と言う名の死神が貼り付いている
彼の心に少しでも隙を見つけて入り込んでしまおうと

しかし
彼は若く恐れを知らなかった
やがてなんとか崖の上に立つことが出来た
崖の上は何も無い岩山でとても狭い場所だったが
登ってしまえばとても素敵な場所の様に思われた
少年は家を出てから始めて安堵した

少年は崖の上に座り
今来た森を振り返った
そこにはすでに
「Despair」の影は無く
ただひたすらに長い道が続いているだけだった

爽やかな風も吹いている
少年は「Despair」の魔の手から逃れる事に成功したのだ

ふと気付くと
誰かが反対側の崖から登って来る気配がした
少年は駆け寄りその人に手を差しのべた

その人は少年と同じ位の年齢の少女だった
二人は微笑んで二人の出会いを祝福し
やがて二人揃って決心し
今度は違う道を選んで二人で仲良く
暗い森に通じる崖道を降りて行った

彼らを導いているのは「Hope」と言う名の風だった

   BY-RUBY^^

ショートストーリー  「暗い森」_b0162357_8332155.jpg


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by emeraldm | 2012-01-28 22:22 | -短編-

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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