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rubyの好きなこと日記

NO8。......突風......

 冷たい夜風を避けるため黒色の魔法のマントを着て、クレアちゃんとセルヴァンは古い樫の木で出来た大きな魔法のほうきに乗って、ドワーフの国に向かっていました。魔法のマントは大きめで、クレアちゃんをすっぽりと暖かく包み込んでいます。
 クレアちゃんは40cm位の、ぬいぐるみのくまをしっかりと抱っこしていて、ふわふわのぬいぐるみの背中に顔を押し付けて眠っていました。
 クレアちゃんは3歳の誕生日会を済ませたばかりです。セルヴァンはきつい顔をして、クレアちゃんがほうきから落ちないようにと、後ろから抱きしめていました。
 魔法のほうきはクレアちゃんの祖父、ルミエールの物で、ドワーフの地下王国に行くまでは自動操縦になっていました。
 セルヴァンは昨日の黒い大蛇を思い出し、ぞっとする思いでクレアちゃんを硬く抱きしめ、夜空に美しい星が輝く中一睡も出来ずに見守っていました。やがて、夜が薄く明け始め、太陽の光が地平線に現れ始めました。 ルミエールのほうきは揺れもせず、空中をすべらかに飛んで行きます。
 明け方近くになって、安心したのか?セルヴァンもうつらうつらし始めた頃。クレアちゃんの声で起こされました。
「セルヴァン! 風さんが来るよ!」
 クレアちゃんが指し示している方向から、ずずずっ。と空気の音がして、いきなり、魔法のほうきが跳ね上がり! 驚いて、クレアちゃんとほうきにしがみついてなんとか落とされないように体勢を立て直そうとするセルヴァンをあざけるように、いきなりほうきがびゅ~~~ん! とものすごい速さで飛び始めました。
 まるで台風に捕まってしまったようです。
「クレア様。大丈夫ですか?落とされないように捕まって。」
 慌てているセルヴァンに、以外に嬉しそうな笑い声が帰ってきました。
「きゃっ! きゃっ! 風さん。すごい! もっともっと。うふふ」
 風のジェットコースターを楽しんでいるようです。
「クレア様。お願い。ちゃんと捕まって......」
 セルヴァンは上がったり下がったり、ものすごい突風に巻き込まれ、どうしようもなくほうきにしがみついているというのに、クレアちゃんたら平気で手まで離して万歳してしまってます。それを落ちないように後ろから抱きかかえているセルヴァン!良く見ると、クレアちゃんの前にいるハロウィンベアも、その長い白い手で、クレアちゃんを支えていました。
「風さんがね。もっと早く連れてってくれるんだって言ってるよ。カシュおばさんが待っているんだって! ママもそこにいるんだってさ。わ~~い!もっと早く~。いけ~~~っ!」
 事情は分かりましたが、この揺れと荒っぽさに動じない3歳のちび姫は、昨晩怖い目に会ったばかりだというのにけらけら笑ってます。
 さすが、あの2人のお子様だと。セルヴァンは半ばあきれ半ば誇らしげにクレアちゃんを一生懸命支えながら思っていました。
 乱気流に巻き込まれたようなほうきの動きが止まったのは、それからしばらくたってから。ちょうど、太陽が真上に来たお昼ごろだったと思います。スムーズにゆっくりな動きがもどり、一箇所を大きく回転し始めたほうきの動きに下を見ると、そこはエストラゴン王国のお城の上。
 屋上には、シュルシュとカシュ王女がすでに迎えに来ていました。
...................続く。...................
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by emeraldm | 2010-08-18 13:08 | 小説- 赤髪のメテオール(2)

突然の乳癌ステージ4の告知から人生計画が変わってしまったRUBYのブログです。少しでも誰かの役に立てるように、闘病生活を綴ります。

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