2010年 08月 04日
父と母の物語。。NO22.....最後の戦い.......
モーヴェは、一人の魔法使いが、こちらに向かって飛んでくるのを見つけました。
赤い髪の男.....。
すぐに先手を打つために上空高く舞い上がり、その男めがけて急降下しました。
すんでのところでかわされて、体勢を立て直し、再び襲い掛かり、二人はもつれるように空を舞っています。
するどい爪で鷲づかみにしたと思うと、その男はほうきの柄をうまく操り、爪は空を切り、消して捕まえることが出来ません。
モーヴェはその男に向かい、竜の炎を吐きました。男は真正面からそれを小さな赤い宝剣で受け止め、こちらに返してよこしました。
自分の炎を返されて、一瞬逃げるのが遅れ、モーヴェの翼の一部が焦げ付きました。その痛みに、モーヴェは苦しげに咆哮を上げ、憎憎しげに男をにらみつけました。
周りの竜達は、二人のあまりに激しく、素早い動きに、唖然と見守るばかりです。
「黒竜。モーヴェ殿。聞こえるか!」
突然、男が大声を上げました。
「話があるんだ。」
モーヴェは自分の名を知っている赤い髪の男に少し驚き、その動きを空中で停止させました。
「赤髪の者よ。お前は誰だ。姫をどうした! 今すぐに姫を帰してもらおう」
モーヴェは恐ろしげな重低音の声で言いました。
「さもなくば、この城ごと、人間どもを焼き尽くす」
男はほうきにまたがり、とても神妙な顔で空中に停止しています。周りの竜達も、事の成り行きをじっと見守っています。
緊張した空気が流れました。
「私の名は、メテオール。赤髪のソレイユの子孫。姫は私が預かっている。話し合いを希望する」
モーヴェは鼻で笑いました。
「おかしなことを言う、メテオールよ。人間と話し合えと。力の無い人間どもと?
そもそも、ここは我等の土地。盗み出したのは人間の方だ。ソレイユという貴様の先祖のせいでな。
盗まれたものを取り戻して何が悪いのだ」
メテオールは考えました。モーヴェの言うことももっともな事です。この土地は、そもそも、竜やトロールのものだったのです。そこに邪な人間の欲望が入り込み、彼らを衰退に導いた。
「赤髪のメテオール。貴様の先祖の話は知っている。
貴様は再び、我等の姫をたぶらかし、昔と同じように、我等を破滅させようとしている。
それだけは許せん!
皆のもの、集まれ。こやつは一人だ。大勢で引き裂いてくれるわ。かかれ!」
その言葉を合図に、周辺にいた竜達が一斉にメテオールにかかって来ました。
メテオールはそれをかわしながら、なおもいっそう激しくなる攻撃に、一瞬の油断も出来ずにいました。
逃げて、かわして、炎を宝剣で受け止めて、しかし、彼は自分から攻撃をしませんでした。頬や腕にはかわしきれずに付いた裂き傷や、火傷の後がどんどんと付いて行きます。
「話し合いを!」
逃げながらも、メテオールは何度も叫びました。このままでは持たない。
ひときわ大きい咆哮がしました。
見ると、ウロコ島の方から、今まで見てきた中で、一番大きい白い竜が、こちらに向かって飛んで来ます。
その様子に気付いた他の竜は、攻撃の手を止め、そちらの方向を見つめました。
日が沈みかけ、夜がそこまで来ていました。。。
.....................続く。.....................
by emeraldm
| 2010-08-04 11:18
| 小説- 人と竜の結婚 (1)